日本は島国であるとともに、国土の大半が山地であり山国でもある。山地に降った雨は、川となり海へと流れる。一部の水は地下にしみ込み、やがて伏流水として各地で湧き出している。湧き出た水は、人々の生活を潤し、その地域の文化を育んできた。恵をもたらした湧水は、逸話と共に名水として語り継がれている。そんな名水を求め各地を、ふらりと訪れたいと思っております。

古都の名水散策 第1回目は、岐阜県郡上市八幡町本町にある湧水、宗祇水(そうぎすい)を訪ねることにしました。この宗祇水(またの名を白雲水)、1985年(昭和60年)名水百選の第1号に指定されていることもあり、「古都の名水散策」第1回目にふさわしい地であると思い訪れました。郡上八幡は、お盆に四夜続けて朝まで踊る徹夜踊りが行われる街としても有名です。

■日本初の名水、宗祇水を訪ねる

「水とおどりの城下町」と知られる郡上八幡(岐阜県郡上市八幡町)には、「宗祇水」という名水が湧き出ております。「宗祇水」は小駄良川(こだらがわ)と吉田川(よしだがわ)の合流地付近にある湧水で、昭和49年に岐阜県の史跡に指定されています。また、昭和60年3月には環境庁(現環境省)により名水百選第一号に選定されました。

同年8月には、名水百選第1号に選定されたこともあり、第1回全国水環境保全市町村シンポジウム(通称「全国名水シンポジウム」)が郡上八幡で開催されています。こうしたことが契機となり「水のまち郡上八幡」として広く知られるようになりました。

郡上八幡に湧き出している「宗祇水」には、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウムなど天然のミネラル成分が豊富に含まれていることが分かっています。口に含んだ時の風味は、キリリとした清涼感のある味わいが特徴です。

郡上八幡の周囲には、美濃帯堆積岩類の石灰岩が帯状に分布しており、そのカルスト地形特有の鍾乳洞が数多く点在しています。こうした地形からなる天然濾過フィルターによって、ミネラル成分が豊富な「宗祇水」は保たれているわけです。

「宗祇水」の水場は、湧口から水源、飲料水、食糧米等洗場(スイカ冷やしにも利用)、野菜等洗場、さらし場(桶等をつけておく)と仕切りで分かれていて、現在でも地元の人達がとても大切に利用しています。

■連歌の宗匠が、こよなく愛した美濃の湧き水

文明3年(1471)連歌の宗匠・飯尾宗祇が、郡上の領主である東常縁(とう・つねより)から古今伝授を受けて京都へ戻る際に、当時の2大歌人であった二人が、この湧水のほとりで歌を詠み交わしたと伝えられています。2大歌人が詠み交わした歌をご紹介しましょう。

「もみじ葉の 流るるたつた白雲の 花のみよし野思ひ忘るな 」(東常縁)

「三年ごし 心をつくす思ひ川 春立つ沢に湧き出づるかな 」(飯尾宗祇)

飯尾宗祇は、郡上八幡に逗留している間、この湧水のほとりに草庵を結び、この名水をこよなく愛していたそうです。そうした史実により、後になって、この湧水は「宗祇水」と名付けられ大切に守られてきたとのこと。

江戸時代に入っても、郡上藩主となった金森頼錦や遠藤常友等らによって湧水は大切に保存され現在のような、立派な石の水場が整備されました。

■名水にまつわる行事

毎年8月20日には宗祇水神祭が行われています。当日は、踊りや水中花火、お茶会等々のイベントが開催されているとのことです。そのため、特にこの時期は多くの観光客が採水地付近に訪れています。

*2020年の開催情報については、郡上八幡観光協会HP等をご確認ください。

■アクセス情報

住所:岐阜県郡上市八幡町本町

取材・動画・撮影/貝阿彌俊彦(京都メディアライン)
京都メディアライン:https://kyotomedialine.com 
Facebook:https://www.facebook.com/kyotomedialine/

 

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