絣(かすり)とは、あらかじめ糸に柄を染め分けておき、経緯の糸の織り合わせで文様を出していく技法。工程途中の糸を見ただけでは想像もつかないが、厳密な計算によって染め分けた糸(線)を織り重ねていくと、図案どおりの柄(面)が浮かび上がる。
繊細な柄物に定評がある久留米絣の場合、30にも及ぶ工程のほとんどは、糸を染め分け、織機に正確に配置する調整に費やされるという。
なかでも手間がかかるのが、糸の束を太い撚り糸できつく縛り、染める場所と白く残す場所を決める「括り」という作業だ。括った後で染めると、糸一本一本の芯まで色が染み込み、洗うほどに色の対比が強まり、柄が垢抜けていく。
括りに使った巻き糸も、一定の規則性を持つ染め分け模様になるが、強い巻き癖がつくことや、不規則な結び目があるため、従来は巻き取って回収されることもなく捨てられていた。
坂田織物の『TUGU』シリーズは、この巻き癖のついた捨て糸をひと手間かけて生地に利用、縮(ちぢみ)織りに似た凹凸感を実現した。洗うほど肌になじむ絣の生地に、縮風の優しさが加味されたシャツ。袖を通せば心地よさがわかる。