「日本六古窯」のひとつに数えられる備前焼。釉薬を使わずに、赤松の炎で長時間かけて焼き締める技法で作られる器は、「投げても割れぬ」といわれる堅牢さと、炎の跡が生み出す味わい深い模様が魅力の焼き物だ。
窯元のひとつ「五郎辺衛窯」は、醤油や酢の醸造元がルーツ。醸造元として醤油を知り尽くしているからこそできあがったのが、この醤油差しだ。
「先代からの教えで“使って頼りになるモノづくり”をモットーに、使いやすさを第一に考えた末に生まれたのが本品です」と当代の武用 務氏。
一番のこだわりは液ダレのしにくさにある。醤油の表面張力を利用して内側へ引っ張り込む力(サイフォンの原理)が働くように設計されているのだ。また、蓋は傾けても落ちにくく工夫され、本体と蓋の窪みに指がすっぽりと収まるようデザインされている。
醤油の味に関しても、焼き締める際にできた気孔によって塩角が取れ、味がまろやかになる効果がある。
「使い込むほどに表面がなめらかになって色艶が増し、肌触りが変化します。そうした“器を育てる”楽しみも味わっていただきたいです」(武用氏)
【今日の逸品】
備前焼 五郎辺衛さんのしょうゆ差し
五郎辺衛窯
5,720円(消費税込み)