釉薬を使わずに長期間にわたって赤松の炎で焼き締める備前焼。その窯元のひとつである五郎辺衛窯は、明治元年に創業し醤油や酢の醸造を生業としていた「武用五郎辺衛商店」をルーツに持つ。そんな醤油の醸造元と、備前焼の窯元というふたつの伝統をあわせもつ同社から生まれたのがこの「五郎辺衛さんのしょうゆ差し」である。
当代である武用務氏の父、4代目・光一氏が取り組んだのは「醤油屋による醤油差し作り」。持ちやすく、どんな量の醤油が入っていても液ダレしないものを作るべく、幾多の試行錯誤の末にたどり着いたのが本品だ。
備前焼は「投げても割れぬ」と言われるほど堅牢で、内部には微細な気孔を持ち、「水がくさらぬ」と一千年もの間使われ続けてきた。醤油の場合も“塩角”が取れて味わいに丸みが出るという。さらには醤油を注ぐときに持ちやすい凹みや、蓋が落ちにくい工夫など、随所に気配りが行き渡る。
「備前焼は、台所や食卓で毎日使うほどに落ち着いた色艶が増していき、器を育てる楽しみが味わえます」と武用務氏。30年の愛用者もいるという、窯元ご自慢の定番の逸品である。
【今日の逸品】
備前焼 五郎辺衛さんのしょうゆ差し
五郎辺衛窯
5,616円(消費税8%込み)