親友の息子は20歳になり、その関係に変化が…
父不在の家庭で育った西田さんは、父を亡くした親友の息子が自分の境遇と重なった。
「それに私には息子がいないから、我が子のようにも思ってしまった。お互い、家が都内だったので、半年に1回くらい、線香を上げに行っては、小遣いを渡したり、進路や友達のことなど、様々な相談に乗っていたよ」
しかし、今年のお盆に線香を上げに行ったら、彼の息子から「西田のおじちゃん、もう俺は20歳になったよ。もう大丈夫」と言われた。
「まだ大学生なのにしっかりしていてね。親はなくても子は育つって、こういうことかと。彼の奥さんも『いつまでも来ていただくのは申し訳なくて』とほほ笑んでいる。そのときに、『ああ、この人達とは家族じゃないんだ』って思った。なんだか悲しかったよね」
42歳で未亡人になった親友の妻は、52歳になっていた。
「妻と真逆で物静かで、控えめな人。外資系企業で事務の仕事をずっとしていて、あいさつと世間話程度しかしていなかったんだけれど、彼の息子の成人祝いということで、初めて3人で食事をすることにしたんだ」
予約したのは親友の未亡人。都心のホテルにある鉄板焼きの店だった。2人は約束の時間より前に到着するも、彼の息子は姿を見せなかった。
「なんでも、沖縄に友達と遊びに行っており、台風で飛行機が飛ばなくなってしまったんだとか。息子がいないと会話も弾まないから帰ろうとすると、キャンセル料が発生すると言う。仕方がないから彼女と2人でご飯を食べたよ。この10年間で20回は会っているのに、相手のことを何も知らないんだ。最初はどうなるかと思ったけれど、彼女はユーモアがあり饒舌な人だった。だからお酒も進むと話も弾む。その後、どちらからともなく、そういう関係になってしまった」
どちらかというと、彼女の方が積極的だった。「親友に対するうしろめたさはあったけれど、本当に自然にそうなっていたんだ」と振り返る。
「細かいことは置いといて(笑)、まあ何とかなるもんだね。彼女は10歳年下で、それこそ彼氏はちらほらいたみたいだけど、ぎこちないところもかわいいよ。まだ50代だもん。若いよね。60代とは全然違う。彼女と踏み込んだ関係になったのは、この年になると、ゼロから知り合った人と恋愛をするのは難しい。気心知れていないと、丸腰になれないよ」
関係が始まってから3か月、月に1回程度の逢瀬を楽しんでいる。
「彼女も自然が好きで、親友とはハイキングで出会ったのだという。山がつないだ関係だよね。だから、クリスマスに別荘に誘ったんだ。すると、目を輝かせてくれて『行きたい』って。嬉しいよ。私が植えたもみの木を見せたい。ウチの妻は友達とドイツに旅行に行くというから、その間、彼女と山ごもりしようかと思っている。薪ストーブもあるし、オーブンもあるし、それなりに人を招けるようにはなっている。ケーキとプレゼントを用意して……今からワクワクしているんだ」