猫だって嫌いな相手とは一緒にいたくない!
複数の猫を飼育するのも、猫が社会性のある動物であることを如実に表している例といえます。
最近、複数飼育が破綻を来たし、一度に何十匹もの猫が行き場を失うというニュースをよく耳にします。いわゆる「多頭飼育崩壊」ですが、これは決して目新しいことではなく、きっと以前からあったことだと思うのです。でも、ニュースとして取り上げられるようになったというのは、それだけペットに対する意識が私たち日本人の間でも変化してきたといえるかもしれません。
複数飼育はその場所にあった適切な頭数をきちんと人間が管理できるのであれば、全面的にいけないということでは決してありません。ただ、猫と猫との間にも相性というものがあります。人間の子供だって、学校でどうしても気の合わない子がいるという生徒もいるし、コミュニケーションをとるのが下手で他の子とうまく話せないという生徒もいるでしょう。頑固者もいれば、おちゃらけたお調子者の生徒もいるでしょう。馬が合わないと、学校に行きたくないなと思うことだってあります。猫も同じなのです。馬が合わない相手と一緒にいて、しかもその環境から逃げられないとなると、ストレスになります。
赤ちゃん猫であれば比較的問題なく、いろいろな相手に受け入れられますが、人間と同じで年齢を重ねれば重ねるほど、嫌いな相手と無理に一緒にいさせられるのは、まっぴら御免なんです。ですから、複数飼育をする場合には、時間的、経済的、精神的、体力的、空間的に余裕があって、猫に住みよい環境を与える自信があり、なおかつ猫同士の相性が良いことが前提となります。
仮に相性が悪い猫たちであっても、別々に暮らせるだけのスペースや寝床があれば、うまく飼育できますし、喧嘩が絶えなくてやむを得ない場合は部屋を完全に分けるなど工夫したらよいでしょう。
■縄張りとコアエリアの違い
よく「縄張り」という言葉を聞きますが、縄張りというのは、(見えない)縄を張り巡らせて、その中には誰も入れないという自分だけのスペースのことをいいます。もし他の個体が自分の縄張りに入り込んだら、それは侵入者なので許せなくて殺してしまうほどの勢いで戦う、というのが本来の縄張りのあり方です。そう考えると、猫には生物学的な「縄張り」行動は見られません。
縄張りほど厳格なものではないけれど、「コアエリア」といって、1日のうち多くの時間を過ごす場所があります。
猫に限ったことではなく、私たち人間だって、それぞれ「コアエリア」があります。自分の家はもちろん、よく行くお店や好きな街なども、コアエリアといえます。あなたがよくいくお店に他の誰かが入ってきても、その人を追い出すなんてことはないですよね。でも、自分のパーソナルスペースである部屋に入れる相手は限られてくるはず。コアエリアというのはそんな感じで、他の生き物と重なることもあるし、あまり他の生き物を入れたくなくて、できるだけ守りたいと思うエリアもあるわけです。
猫も、それは同じです。お気に入りの場所でいつも昼寝をしている、なんて光景はよく見かけますが、そこに飼い主のあなたが近づいても、別に怒る風でもなく寝続けているのではないでしょうか。でも、飼い主ではない知らない誰かが近づいていったら、怒るとか、立ち去ってしまう可能性はあります。お昼寝している野良猫も、顔なじみのご近所さんが通っても平気だけれど、知らない人が通りかかったらすっと隠れてしまうでしょうし、仲の悪い猫がやってきたら、シャーとかフーとかいって威嚇したりしますよね。時にはバシッと猫パンチ!なんてこともあるかもしれません。