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動物と人がよりよく暮らせる、新しい文化を提案|ペットの保護シェルターと譲渡のための施設「SPA」

取材・文/柿川鮎子 写真/木村圭司

動物と人がよりよく暮らせる、新しい文化を提案

この夏、東京都大田区山王に、ペットの保護シェルターと譲渡のための施設SPA(Society for the Protect to Animals)が開所しました。「ペットと暮らす幸せな生活の提供」を目的とした、これまでになかった新しいタイプの譲渡と保護のプラットフォームです。

NPO法人SPA代表理事の事齋藤鷹一さんは「今までの保護シェルターにはない、こだわった作りにしました。世界基準レベルを目標にしていて、ハード面とソフト面の両方ともに、徹底的に動物に配慮したものにしています」と施設を紹介してくれました。

日本では飼育できなくなったペットの引き取りは自治体が行っているほか、各地の保護団体が独自の保護施設をもち、飼育管理しています。今回新しくオープンしたSPAはこうした従来型の施設とは大きく異なります。代表の齋藤さんに詳しく解説していただきました。

海外の譲渡団体とも契約を結んで、将来的には海を渡って幸せになる子が出てくるかも

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■ペットと暮らす幸せな生活の提供

齋藤さんは団体立ち上げの動機について、「動物と人がよりよく暮らせる新しい文化を提案したかった」と言います。「従来の保護犬・猫のイメージは捨てられて『ちょっとかわいそう』な印象が強く、テレビや雑誌で紹介されてきた日本のシェルターは、悲しく切ない気持ちにさせられる場所でもありました。そうした従来のイメージを一新させたかったのです」

日本では年間4万頭を超える動物が殺処分されている

日本では年間4万頭を超える動物が殺処分されている

「もちろん、明るく希望のある施設も、日本にはたくさんあります。私は海外のシェルターと連携するために、ロサンゼルスやシンガポール、ハワイなどの施設を見学してきましたが、暗さは感じませんでした。学校帰りの子供が犬や猫と遊びにくる場所です。子供とたっぷり遊んで人に慣れた犬や猫が、譲渡先で幸せに暮らすのです。

日本の保護施設のイメージを変え、ペットをお迎えしたいと考える人が、ショップの他にもSPAという選択肢があるということを知って欲しいと願って、SPAをオープンさせました。そのため、外観から内装まで、アパレルショップのようなデザインです」という通り、外観も内装も凝ったつくりになっています。

一見するとサロンのようなインテリア。フードやグッズなども物販も準備中

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■ペット選びの新しい選択肢に

齋藤さんは、一人でも多くの人にペットと暮らすすばらしさを体験して欲しいと言います。
「すでに飼っている人には当たり前のことですが、ペットと暮らす幸せは何事にも代えられません。命のすばらしさとか、人間同士では得られない、とてつもない体験をさせてくれます。一人でも多くの人に飼育体験をしてもらいたいのですが、現在、日本では保護施設から譲渡してもらうためには厳しい条件があり、一人暮らしや高齢の方は飼育できません。ショップやブリーダーから買うしかなかった、という人が多いのです」

排気口はひとつの部屋ごとに設置され、消臭対策を徹底

排気口はひとつの部屋ごとに設置され、消臭対策を徹底

確かに日本では譲渡団体から譲り受ける場合、かなり厳しい条件がある場合が多く、高齢者や一人暮らしのビジネスマンなどは譲渡できないケースがほとんどです。譲渡後のトラブルを予防するためで、私はそれが当たり前だと思っていました。でも、やり方を変えたら「当たり前」を変えることができる。SPAの活動にはそんな新しい道筋が示されているようです。

「私達SPAは立ち上げる時に、法律の専門家も交えて、徹底的に検討し、ペットの幸せを第一に考えた契約を作成しました。特に譲渡した後のケアを重視していて、例えば高齢の一人暮らしの方がホームに入ることになり、どうしても手放さなければならなくなった時は、ペット信託という形で、財産の一部をペットのために残していただきます。そして、SPAが責任をもってペットが生涯幸せに暮らせるサポートをします。高齢の猫で再び譲渡するのは難しい場合は、きちんとした老猫ホームで、快適に暮らせる道筋をつくりました。

一人暮らしの人が出張や旅行で、ペットの面倒を見られない時は、SPA経由できちんとしたホテルを紹介します。SPAには訓練士さんや提携している獣医さん、栄養士さんもいて、普段の生活で『ペットの困った』を解決できる仕組みを、徹底的に作り込みました。もちろん、こうしたサービスは一般の飼主さんでも利用できます。

ボランティアスタッフの石野清美さんと菅野真実さん。菅野さんは5頭の猫を飼育中

ボランティアスタッフの石野清美さんと菅野真実さん。菅野さんは5頭の猫を飼育中

現在は東京中心ですが、地方でもSPAの総合的なペットサービスの緩やかな提携を考えていて、全国で保護と譲渡の新しいプラットホームをつくっています。その拠点がここ、大田区山王にできた新しい施設です」と齋藤さん。これまでと違って、SPAは譲渡した後のサポートを厚くすることで、多くの人にペットと暮らせるような、新しい提案をしていました。

チーフの立崎真紀さんは「ペットと暮らす幸せのお手伝いができて嬉しい」

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■新しいペット文化の提案

齋藤さんはオープン前にSPAを紹介した時、ある人から「これだけ綺麗にしちゃって大丈夫?可哀想な子を飼ってあげたいと思ってもらえなくなるんじゃないの?」と言われたそうです。

「可哀想だから救ってあげる、という今までの考え方から、新しい時代の譲渡活動へと転換していきたい。新しい文化の提案です。とはいっても、これまで殺処分ゼロの活動など、多くの方が保護活動に取り組んでこられて、今があると、感謝しています。

でも、そろそろ次の時代、新しいIoT時代の譲渡と保護のプラットフォームを提案する時期が来ていると思います。情に訴える『可哀想』からの譲渡ではなく、新たな幸せを創るための活動です。これからペットを飼おうと思った人が、ひとつの選択肢として、SPAを利用してもらえるようになれば良いですね」と齋藤さん。

笑顔のスタッフは、トリミングなどそれぞれの分野で高いスキルを持っています

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施設ではデジタルサイネージが設置され、LINEでシフトを組み、専用アプリ「SPAなび」を使いこなすスタッフたち。現在、ボランティア登録では30名以上が待機しているということで、真っ先に飛びついたのは動物好きの若者たちでした。これまでになかった、動物愛護活動の新しい息吹を感じさせるSPA。今後は海外の動物愛護団体視察ツアーなども予定していて、新しい時代の譲渡活動が、今、広がろうとしています。

SPA代表 齋藤鷹一
1989年生まれ、東京都出身。動物と人との共生を目指し2015年「友愛の会」設立。一般社団法人日本高齢動物医療福祉協会顧問。

SPA
住所:東京都大田区山王3-28-2
https://s-p-a.jp/

文/柿川鮎子
明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。

写真/木村圭司

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