取材・文/ふじのあやこ
近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。
「私が理容師になることに不安がなかったのは、両親の仕事を見てきたからだと思います」と語るのは、栞さん(仮名・21歳)。彼女は現在、都内にある美容と理容を併設するお店で理容師として働いています。明るい茶色のショートヘアに、きめ細かい白い肌、パッチリとした瞳やゆったりとした話し方などから、可愛らしい雰囲気を感じます。
両親、祖父母ともに理容師。週末も働く両親に代わって、祖父母が面倒を見てくれていた
栞さんは千葉県出身で、両親と2つ下に弟のいる4人家族。両親はともに理容師、さらには父方の祖父母も理容師をしており、千葉には祖父母と両親のお店があったと言います。
「うちの両親は理容師の専門学校の同級生で、若い頃はよく知らないんですが、私がたしか2歳ぐらいの時には今のお店を開いていました。お店は自宅の1階にあって、2、3階が自宅といった感じです。今のお店の前にも、家から遠い場所に2人で経営していたお店があったので、今は2店舗目ですね。そして、実家から車ですぐの距離には祖父母のお店もあります。祖父母のお店も自宅兼お店で、2人ともまだ現役なので営業を続けています」
両親はともに接客業。土日はもちろん仕事で忙しくしており、小さい頃は寂しい思いをしたそう。小学校までは週末の度に祖父母の家に預けられていたと栞さんは語ります。
「最初は週末の度に、学校の友達の家に電話をかけて遊びに誘っていました。でも、ほとんどの子は親と出かけていて電話にさえ出ない。この子は親と遊んでもらっているんだなって、羨ましくて寂しかった記憶が残っています。
いつからか弟と一緒に祖父母の家に週末預けられるようになりました。祖父母も当時から仕事をしていたんですが、両親のように毎日仕事ではなく、自分たちのペースでお店をやっていたので私たちの面倒をよく見てくれていました。祖父母の家に行って、寂しい思いをしたことは一度もありませんでした」
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