取材・文/ふじのあやこ
近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。
「大人になって見放されたときに、やっぱり父親は私のことがずっと嫌いだったんだって思いました。その思いは小さい頃からあったもの。言葉にされたわけでもなかったのに……」と語るのは、真子さん(仮名・38歳)。27歳のときに結婚、そして28歳に離婚を経験、現在は両親と子どもとの4人暮らしをしています。
子どもに高圧的に歩み寄ってくる父親は怖かった
真子さんは広島県生まれで両親と2歳下に妹のいる4人家族。亭主関白な父親に専業主婦の母親といった家庭で育ち、父親のことは昔から怖くて苦手だったと言います。
「父親がとにかく怖かったんです。いつも高圧的な態度で私たち子どもだけでなく母親に対しても怒鳴るような人。怖い父親って寡黙なイメージが強いかもですけど、私の父親はよくしゃべりますし、話しかけてもきます。
うちの家は父親が帰って来てから一緒に晩ご飯を食べることが決まりであり、そこで学校の話を毎日しないといけませんでした。その時間が苦痛でしたね(苦笑)。学校で何があった?と優しく話しかけてくれるんじゃなくて、『学校であったことを報告しなさい』でしたからね。父親の顔色を見ながら、私は内心ビクビクしながらも笑顔で接していました」
小さい頃からさまざまな習い事をしており、両親ともに続けることの大切さを何度も真子さんに説いていました。親の言うことに歯向かってはいけないとずっと思っていたとか。
「母親は優しかったんですけど、父の言うことに従っていて、私たちの監視役みたいな立場でした。私が興味あるものは何でも習い事をさせてくれたんですが、一度始めたら簡単にやめることができなかった。小学校で始めたピアノを中学のときにやめたいと思ったことを母親に伝えるとそれが父親に伝わり、なぜやめたいのかを説明させられました。『お前は続けることさえできないのか』と言われ、続けるというと『自分の意見がない!』と怒られる。歯向かってはダメというのは自然にインプットされていました。愛されているという自信がなかったから私のほうから親に必死でしがみついていたのかもしれません」
【大学生になってもアルバイト禁止に門限があった。次ページに続きます】