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取材・文/わたなべあや

「人生最良の友」とも言われ、西郷隆盛など多くの歴史的人物の相棒でもあった犬ですが、太古の昔から人と犬は共生し、共に歴史を歩んできました。いわば切っても切れない仲なのです。。

ところで犬は人と強い絆で結ばれると、ある行動を取ることがわかっています。その行動とは、いったいどんな行動なのでしょう? 犬と人との信頼関係の築き方について、麻布大学獣医学部の菊水健史先生にお話を伺いました。

■犬との信頼関係を築くには

犬の飼い方の本や雑誌には、「犬と人の間に信頼関係を築こう」とか「人間がリーダーシップを取ろう」といったことがよく書かれています。しかし、言葉が通じない犬との間に信頼関係を築いたり、リーダーシップを取ったりするには何をすればよいのか、戸惑うこともありますよね。しばしば間違った行動で、人間がリーダーであることを誇示しようとする人もいます。

では、犬はどんな人に信頼を寄せ、をリーダーだと認め、親愛の情を示してくれるのでしょうか。日頃からよく犬とよく遊び、十分な食事と散歩、安心して休める場所を提供してくれる人。そういう人が、犬にとっての最良の信頼のある飼い主なのです。

逆に、十分な散歩にも行かず、あまり遊んでくれない人は、どんなに偉そうに振る舞っても、犬は信頼を寄せません。怖いなとか、嫌な人だなと思うだけなのです。

そして、犬と信頼関係を結ぶことができ、強い絆が生まれたかどうかは、犬がある行動に出るかどうかでわかります。

■アイコンタクトで絆の深さがわかる

「ボールビーの愛情理論」というのをご存知でしょうか。この理論によれば、生後6ヶ月~2歳くらいまでの幼児は、親やそれに相当する養育者に対して、「アタッチメント行動」と呼ばれる行動を取ります。それはアイコンタクトであったり、笑顔であったりするのですが、とくに多少ストレスや不安を感じる、つまり保護者を必要とする状況下にあるとそうした行動を起こしやすいことが確認されています。

私は、人と犬とでこの愛情理論に基づく実験を行いました。30人の飼い主とペットの犬を同じ室内に一定時間滞在させ、犬が人に対してどのような行動を取るのか観察したのです。すると、犬が飼い主にアイコンタクトを取るグループと、取らないグループに、はっきり分かれました。

つまり犬は、信頼関係にあって強い絆で結ばれた人にはアイコンタクトしたのです。まるでヒトの幼児のようにです。このアイコンタクトこそが、犬が人に対して愛情を示す「アタッチメント行動」なのです。

逆に、信頼関係が十分に育まれていないと、犬は人に対して自らアイコンタクトを取ろうとしませんでした。

■愛が愛をはぐくむ理想的なサイクル

親愛の情を示すアイコンタクトは、必ず「犬から人に」向けられるものであり、人から犬にアイコンタクトを取るのではありません。人は散歩中に犬の様子を確認するために、たびたび犬を見ますが、それとは違うものです。

また、犬は見知らぬ人、つまり絆が形成されていない人にはアイコンタクトを取ろうとしません。それどころか、絆が育まれていないのにアイコンタクトを取ろうとしても、威嚇と思われてしまうことすらあるのです。

犬から人に向かってアイコンタクトを取ると、その視線を感じた人の脳内には、絆形成に関わる「オキシトシン」というホルモンが分泌されます。すると、それが犬にも伝わって、犬もオキシトシンを分泌します。そうして犬から人へのアイコンタクトがますます増えて、さらに絆が深まるという理想的なサイクルが循環するようになるのです。犬から人へ、人から犬へ、愛が愛を育むと言ってもいいでしょう。

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