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暮らし

趣味を楽しめ、いつでも人を呼べる家にする【人生後半を楽しむリフォーム事例03】

人生後半の年月を、住みづらい家で我慢しながら暮らすのではなく、自分たちに合った家に住み替えて、心豊かに暮らしたいと考えるシニア世代が増えている。

50歳を過ぎてからのリフォームで「人生後半を楽しむ家」を手に入れた人たちに、リフォームの内容と、リフォームによって暮らしがどう変わったのかを聞いてみた。

■寒さや動線の悪さを改善するリフォームを決意

埼玉県に住む吉井さん夫妻(夫69歳・妻63歳)は、29年前に建売で購入した一戸建ての1階を全面リフォームした。

大きな窓から光がいっぱいに差し込む、気持ちのいいリビング・ダイニング。デッキテラス越しに庭の緑を眺めながら食事ができる。子どもや孫たちはもちろん、友人たちを招いてテーブルを囲むことも多い。テーブルに並ぶのは、奥様が育てた有機野菜を使った手料理だ。

2人の子どもを育て上げ、奥様には、野菜作りや趣味、友人との交流など自分のために使える時間が増えた。ご主人は仕事のリタイアを目前に控え、地域のボランティアや新しい趣味を始めようと計画していた。これから始まる後半の人生を、夫婦二人で心豊かに過ごしたい。そのために、家をもっと快適な場所にしようと決意したのが、リフォームのきっかけだ。
リフォームで解決したかったのは、以下のような問題だ。

【問題1:寒い】

断熱性が低いため、冬の寒さに悩んでいた。キッチンに立っているとき、勝手口からの冷気で体が冷えて辛かった。

【問題2:動線が悪い】

キッチンに洗濯機があるため、洗濯ものをかかえて家の中を横断しなければならなかった。

【問題3:収納が少ない】

造りつけの収納はほとんどないため、物が収まりきれず、収納家具を買い足して収めていたが、それでもあふれていた。

以前のリビング・ダイニング。変形になっていたので使いづらく、収納がないため物があふれていた。

リフォームは、建築士の水越美枝子さんに依頼。水越さんは、二人の現在の暮らし方だけでなく、将来の暮らしについてもていねいに聞き取りをしてくれたという。

■自分たちの暮らしに合わせた家に

悩みだった「寒さ」については、天井や床に断熱材を入れ、窓を二重ガラスにして、床暖房も入れることで解決できた。

リビング・ダイニングは、ダイニングにカウンター収納を設けて、置き家具をなくした。引き分け式のカーテンをシェードに変更し、フローリングと同じ高さのデッキスペースを設けることで、さらに広々と開放感のある空間になった。

広すぎて使いにくかったキッチンは、コンパクトにリフォーム。勝手口との間にもう一枚扉を設けることで、冷気が入り込むこともなく、寒さの問題から解放された。

広すぎて使いづらかったキッチン。勝手口から冷気が入り込む。左奥には洗濯機が置いてあった。

リフォーム後のキッチン。引き出し式の収納と吊戸棚を設け、物が外に出ないスッキリしたキッチンに。

シンクの下にゴミ箱を設置。スライド式の収納が使いやすい。

キッチンの扉の奥にある収納棚。畑から戻ったらここに道具を置いてから上がれるので、キッチンが汚れることもなくなった。対面にはパントリーがある。

■動線の見直しで、毎日の洗濯がグンとラクに

動線を見直して、キッチンにある洗濯機を洗面室に移動したことも、暮らしに大きな変化をもたらした。洗濯機が浴室にも干し場にも近いので、毎日の洗濯が一気にラクに。以前は、洗面室で手洗いしたものをキッチンまで運ぶのが大変だったが、それもなくなった。また、洗面室を通り抜けられる空間にしたことで、洗面室が明るく、使いやすい空間になった。

脱ぐ場所にも干す場所にも近いので、洗濯動線がグンと短くなった。

デッキテラスにある洗濯物干し場。表からは見えないようになっている。

干し場のすぐそばにクローゼットがあるので、取り込んでそのまま片づけられる。

■和室を多目的ルームに変更

リフォームで行ったもうひとつの大きな変更は、和室を、フローリングの多目的ルームにしたこと。現在はご主人の書斎や、子どもたちが泊まるときの部屋として使っているが、いずれ夫の母親と同居することになったときには母親の寝室に。さらに将来、夫婦が歳をとって階段の昇り降りが大変になったときには、夫婦二人の寝室にする予定だ。

また、押し入れをつぶして、壁一面にクローゼットを設けたため、大量の洋服がすべて収まり、大きな洋服ダンスを処分することができた。

リフォーム前の和室。大きな家具が並んでいて圧迫感があった。小さいテーブルを置いてパソコン作業などをしていた。

大きな家具がなく広々とした多目的ルーム。床暖房があるので冬も快適に過ごせる。現在は、ご主人がパソコン作業や読書をするのに使うことが多い。

多目的ルームとリビングとの間にはルーバーを設置。ゆるく仕切ることで、別の部屋にいてもお互いの気配を感じることができ、安心感がある。

「リフォームしたことで暮らしが変わったことといえば、人を呼ぶのが楽しくなったことです」とご主人。「大きいテーブルが置けるようになったので、子どもや孫たちが来たときもみんなで囲めるし、家の中が片づいているので、いつでも人を呼べる。私の友人や、妻の友人たちを招くことも多くなりました」

手打ちそばをお客様にふるまうのが楽しみ。かさばるそば打ち道具を収納するスペースもできた。

「以前は出かけるたびに、夫に不便な思いをさせるのが申し訳ないと思っていたんです。でも今は、物がどこにあるか夫にもわかりやすくなったし、家事もラクになったので、心配なく出かけられます。最近では夫がキッチンに立ったり、洗濯物を片づけておいてくれることもあるんですよ」と奥様。

奥様は言う。「不便だと思っていたことがリフォームですべて解決して、ストレスがなくなりました。今しみじみ感じるのは、日常の大切さです。旅行に行ったりするのももちろん楽しいけれど、それよりも普段の生活が快適であることが何よりも幸せなんだなって気づきました」

設計を担当した水越美枝子さんは言う。

「リフォームというと、寒さの改善や収納を増やすことだけが重要で、これからの暮らしをどうしたいかや、自分の趣味などはプランに関係ないと思っている人が多いのです。今まで〝家に合わせた暮らし″をしてきた人はとくに、ワガママを言わない傾向があります。吉井さんも、最初はそうでした。でも、家にいる時間が長くなる年代の方の場合はとくに、暮らしや趣味などを楽しむためのプランを考えることをおすすめします。

建築士との打ち合わせでは、自分がどんなことが好きで、暮らしをしたいのか、ささいなことでもまずは話してみてください」

毎朝、友人とのウォーキングで一日が始まるという奥様。パートをしながら、畑での野菜作り、趣味の教室に通うなど、ますますアクティブになった。ご主人は地域の役員を務めながら、そば打ちの腕をさらに磨き、充実した日々を送っている。リフォームによって得た「快適で美しい家」が、二人の活力になっていることは間違いない。

【このリフォーム事例についてのお問い合わせ】
一級建築士事務所アトリエサラ
電話:03-5933-2734
http://www.a-sala.com/

取材・文/臼井美伸
編集・ライター。ペンギン企画室代表。カタログハウスにて『通販生活』のライター、ベネッセコーポレーションにて生活情報誌『サンキュ!』の副編集長などを経て、独立。水越美枝子さんをはじめ、小室淑恵さん(ワークライフバランス代表)、カリスマブロガー中山あいこさんの著書など、インテリアや女性の生き方、子育てなどのライフスタイルに関わる本の編集・執筆やプロデュースを手掛ける。

取材協力・監修/水越美枝子
一級建築士。キッチンスペシャリスト。日本女子大学住居学科卒業後、 清水建設に入社。
商業施設、マンション等の設計に携わる。1998年一級建築士事務所アトリエサラを共同主宰。新築・リフォームの住宅設計からインテリアコーディネイト・収納計画まで、トータルでの住まい作りを提案している。手がけた物件は200件以上。日本女子大学非常勤講師、NHK文化センター講師。著書に『40代からの住まいリセット術―人生が変わる家、3つの法則』(NHK新書)『いつまでも美しく暮らす住まいのルール 動線・インテリア・収納』(エクスナレッジ)がある。

撮影/永野佳世、川しまゆうこ(人物)

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