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飛騨高山の町家の格子組みの秘密を探求する講座【立命館大学公開講座より】

毎年春と秋の2回開催される高山祭で名高い、岐阜県の飛騨高山。高山祭の際は、豪壮な祭屋台をひと目見ようとする人々で賑わうが、この地を訪れる観光客のもうひとつのお目当ては、情緒あふれる古い町家建築だ。

だが、その高山の町家には、知って驚きのヒミツがある。去る2017年2月25日に行われた立命館土曜講座「歴史文化都市の防災と建築史学」にて、講師の青柳憲昌先生(同大理工学部講師)が明らかにした、高山町家の秘密とは?

高山市大新町の町並み(日下部家住宅・吉島家住宅、明治期)

■単に「すごい」でなく「どこがすごいか」を突き詰める

高山といえば、飛騨材を贅沢に使った重厚感ある家屋が特徴的だ。風雪に耐える雪国の家、という感じで、いわゆる民芸作りの趣が日本的でかっこいい。

講義で青柳先生から、高山の町家を表す言葉として紹介されたのが、民家研究の第一人者・伊藤ていじさんの「(高山の町家は)組織化された格子が奏でる空間の凱歌である」という言葉。

空間の凱歌! 何て、かっこいい言い回しなんだろう。

青柳先生はかつて、高山の町家28棟を調査し、その梁組の構造がどうやって生まれたのかを調べた。単に「梁組すごい!」で済ませるのではなく、どうすごいのか、どこがすごいのか、その文化的価値を明らかにする視点で調査したのだという。

その結果、面白いことがわかった。いわゆる「高山的」だと思われている「純粋な立体格子状の梁組」、つまり「太い梁をジャングルジムのように密に組んだ圧倒的な迫力の梁組」は、明治期以降にのみ見られる特徴だったのだ。

たとえば下の写真に見られる「吉島家住宅」(重要文化財)の梁組がそうだ。玄関を入ると広大な空間があり、梁と柱が立体的に組まれている。

吉島家住宅(明治40年)の梁組

つまり、高山の町家の特徴として捉えられていたこのような「立体格子」の梁組は、実は明治期の豪商の町家に特徴的なものであり、明治の豪商たちの美意識の賜であったのだ。

江戸時代には豪華な材の使用が禁止され、高さ規制もされていた。それが明治の世になり規制が解除されると、財をなした豪商が人々に「見せつける」ための豪奢な町家を建築した、ということだ。

■町家と町家の「蔵」が担った役割とは

なるほど。高山には何度か訪れているけれど、それこそ「町家、すごーい」だけで、じつは高山の町家というものをちゃんと見ていなかったと思う。各町家で建築年代が違い、年代ごとの特徴があるなど、言われてみればそのとおりだが、この講座を受けなければ気づきもしなかった。

さらに高山では、通り側に町家を建て、その奥に土蔵を建てた。つまり町家と町家の間には、ずらりと土蔵が建ち並ぶのである。青柳先生によれば、高山のこの町家と土蔵の関係が、防災的にも大きな役割を果たしてきたという。日本の建築の最大の弱点は木造で燃えやすいこと。しかし、この土蔵が一種の防火帯になり、延焼を防ぐ構造となっているというのだ。

青柳先生の研究テーマは、いかに古い建造物の文化的価値を守りながら、現代における防災という価値観を共存させていくか、ということ。逆に、古くからの建造物を調査するなかで、現代に生かせる防災的視点を発見することも多いという。

青柳先生によれば、この高山の町家も「構造補強」という見地から見直すことができるのではないか、今に残るその構造・梁組はどのような点が防災上にも優れていたのか────引き続き調査を続けていきたいとのことだった。

※この記事は小学館が運営している大学公開講座の情報検索サイト「まなナビ」http://mananavi.com/からの転載記事です。(文/植月ひろみ 写真/青柳憲昌、2017年2月25日取材)

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