取材・文/池田充枝
戦前の三大コレクションとして著名な「松方コレクション」「斎藤コレクション」「三原コレクション」のうち、斎藤・三原コレクションを日本に留めるべく実業家・平木信二氏が所有し、その後の蒐集などにより形成された浮世絵版画の一大コレクションが「平木コレクション」です。
浮世絵の創始と称される菱川師宣から橋口五葉や伊東深水らの近代版画に至るまで、歴史を辿ることができるように蒐集されているのが特徴です。約8,000点の所蔵作品には、重要文化財11点、重要美術品238点が含まれ、その質の高さは広く内外に知られています。
そんな平木コレクション選りすぐりの浮世絵の名品が一堂に会する展覧会「競演!江戸の人気浮世絵師たち」展が佐野美術館にて開かれています(~2017年7月2日)。
本展では、平木コレクションの8,000点にのぼる所蔵品から厳選した重要美術品を含む90点を展示します。六大浮世絵師と呼ばれる、鈴木春信・鳥居清長・喜多川歌麿・東洲斎写楽・葛飾北斎・歌川広重の作品を中心に、4つのテーマ「美人画」「役者絵」「風景画」「花鳥画」で紹介します。
本展の見どころを、佐野美術館・広報グループの深沢香奈さんにうかがいました。
「“美人画”は、例えれば遊里の女性や評判の町娘のグラビア。美人画家として名高い、喜多川歌麿の《芸者亀吉》は大首絵(上半身を大きく配した構図の作)にすることにより、女性の表情をより豊かに見せています。下がり眉に愛嬌があり人物の内面まで見えてくるようです。
歌川国政は、歌舞伎ファンが高じて紺屋(染物屋)職人から転職した異色の絵師。その真骨頂が発揮されたのが《市川鰕蔵の暫》です。こちらも大首絵ですが、人物の横顔がアップで描かれた作品は珍しく、役者の彫りの深い顔が際立ち、見得を切る一瞬をみごとに切り取った傑作です。
6月17日には、実演「北斎の神奈川沖浪裏を摺る」を開催します。講師に江戸木版画摺師の三田村努氏を招き、伝統を今に伝える熟練の技を間近でご覧いただける貴重な機会です」
教科書で観た作品から、希少な逸品まで名品揃いの展覧会です。ぜひ足をお運びください。
【競演! 江戸の人気浮世絵師たち―平木コレクション名品展】
■会期:5月20日(土)~7月2日(日)会期中展示替えあり
■会場:佐野美術館
■住所:静岡県三島市中田町1-43
■電話番号:055-975-7278
■展覧会サイト:http://www.sanobi.or.jp/exhibition/ukiyo-e_hirakicollection_2017/
■開館時間:10時から17時まで(入館の受付は16時30分まで)
■休館日:木曜
■アクセス:JR三島駅南口より伊豆箱根登山鉄道線で「三島田町」駅下車徒歩約3分
取材・文/池田充枝