昨今、デジタル化が進んでおり、AIの発達や、ChatGPT等の便利なアプリが、いくつも出てきています。その中でも遺言アプリというのがあり、専門家に遺言作成を依頼すれば数万円以上かかりますが、このアプリを使えば無料で遺言の内容が完成するというものです。もちろんメリット・デメリットがあり、事前に注意しておかなければいけない事項もあります。

そこで今回は、日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士・中川義敬が、長年にわたる税理士業務を通じて得た幅広い知識や経験に基づき、遺言アプリを使用する場合のメリット、デメリットについてご説明いたします。

目次
遺言書はケータイのアプリで作成できる⁉︎
アプリで作成した遺言書は法的な効力はある?
アプリで遺言書を作成するメリット・デメリット
遺言書を作成するタイミングはいつが良い?
まとめ

遺言書はケータイのアプリで作成できる!?

遺言とは亡くなった方が生前に自分の死後、どの相続財産を誰に、どのような形で、どれだけ渡すかという意思表示をするものです。この遺言を文章にしたのが遺言書になります。遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。

自筆証書遺言

遺言者が、遺言書本文を自ら書くことをいい、筆記用具や紙に条件はないため、今すぐにでも作成することができます。なお、財産目録を添付する必要がありますが、この目録については自書する必要はなく、パソコン等で作成した財産目録を添付しても問題ありません。

公正証書遺言

公証人と事前に打ち合わせをして、作成してもらう遺言書をいいます。作成後は公証役場で原本を保管してくれるので紛失等のリスクはなく、遺言書検索サービスも利用できるため発見されやすいというのも利点です。

秘密証書遺言

内容を秘密にしたまま、存在を公証役場で認証してもらえる遺言書のため、誰にも遺言の内容を知られたくないという人にはお勧めです。署名と押印だけを自身で行なえれば問題ありません。その他の内容はパソコン等で作成ができます。

今回、このスマートフォン等の遺言アプリで作成できるのは、自筆証書遺言になりますので、自筆証書遺言のご説明をさせて頂きます。

アプリで作成した遺言書は法的な効力はある?

一つ勘違いしてはいけないのが、遺言アプリで作成した遺言書が、そのまま有効になるのではありません。遺言アプリで作成した内容を、紙に書き写し署名・捺印をすることで有効な遺言書となります。あくまでも遺言アプリとは、遺言書の作成をサポートをするアプリです。全てではありませんが、遺言アプリは、概ね質問に答えていくことで遺言が完成するという流れになります。

アプリで遺言書を作成するメリット・デメリット

アプリで遺言書を作成する場合のメリット・デメリットについてご紹介いたします。

メリット

最大のメリットは無料で作成できるところでしょう。通常、遺言書を作成しようとすると専門家にお願いをする形になり、数10万円以上費用が必要です。しかし、アプリ等を使用すると無料で作成することができます。

さらにスマートフォンさえあれば、いつでも作成や修正ができます。空いた時間に編集することができ、アプリをダウンロードすれば、すぐに始めることが可能です。不要と感じれば、アプリを削除すればいいので、気軽に遺言書の作成ができることもメリットの一つではないでしょうか?

デメリット

遺言アプリで作成した遺言内容が有効になるのではなく、あくまでも手書きが必要となり、また、専門家が内容を確認してくれるわけではありません。そのため、書き漏れや、ミス等があった際は、無効になるケースもあります。

さらに、自筆証書遺言は、家庭裁判所にて検認を行なう必要があるため、その点もデメリットであるといえるでしょう。最も怖いのは、アプリのサービスが終了した場合です。

毎日コツコツ遺言アプリを使用していても、サービスが終了するとデータが消去されることもあるため、アプリの内容で保存している分を、紙で保存する等をしておく必要があるでしょう。

遺言書を作成するタイミングはいつが良い?

遺言書を作成する際は、誰に何の財産を渡すのか、というのを記載する必要があります。それを決めていなければ、遺言書を書くことはできません。そのため、今すぐ遺言書を作成することが、できない方もいらっしゃるでしょう。しかし、遺言書の作成タイミングは、早ければ早いほど良いといわれています。

万が一、遺言書を作成する際に、認知症等で意思決定能力がなければ、その遺言書は無効になります。特に若い方ですと、自分は大丈夫だと考えている方が多いでしょう。しかし、相続は突然起こるものです。交通事故や災害等で突然亡くなった場合に、遺言書がないと相続人同士で遺産分割協議をして、遺産分割協議書を作成する必要があります。

互いに想いを尊重しあって、円満で終われば良いですが、「争族」というぐらい揉めて、裁判に発展するケースも少なくありません。相続を将来のことだと考えず、若いうちから早めに遺言書を作成しておくことが大切です。また、遺言書の書き換えも可能で、遺言の日付が最新のものが優先されます。

まとめ

最近、書店にいくとタイトルに「エンディングノート」という、言葉が入った本を見たことがある方もいるかと思います。エンディングノートとは「終活」の際に活用するもので、「終活」とは、より良い最後を迎えるための準備を行なう活動です。

エンディングノート自体は色んな物がありますが、自身がどのような財産を持っているのかというのを書く箇所があり、これを書いておくだけでも相続される方は、非常に助かります。もし、遺言書を作成したいけれど、誰に遺したいか決まっていないという方は、一度エンディングノートの作成からスタートしていただくのがお勧めです。

相続人の方に「もし私が亡くなった際はここに全部書いてあるから」と伝えて頂くだけでも、相続される方はスムーズに相続を迎えることができるかと思いますので、一度ご検討してみてはいかがでしょうか。

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com

 

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