公正証書

ご家族のために遺言書を残そうと思いついたとき、どのような書式で作成すればいいでしょうか。遺言書は大きく「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」に分かれていて、これ以外の形式で作成をしても、法的に有効になりません。ご自身の思いを確実に実現するためには、公正証書遺言をおすすめします。

今回は遺言書の中でも、より安心確実な「公正証書遺言」についてお話ししたいと思います。

目次
公正証書遺言とは
公正証書遺言のメリット・デメリット
公正証書遺言の必要書類
公正証書遺言の作成
公正証書にかかる費用
公正証書遺言が無効になるケースは?
まとめ

公正証書遺言とは

公正証書遺言とは、遺言者が口頭で公証人にご自身の遺言の内容を伝え、その内容を基に公証人が筆記して作成を行う遺言のことです。作成に関して公証人のほか、2人以上の証人の立ち会いが必要となります。公証人とは、「公証役場」「公証センター」などの名称の場所で執務をする、法務大臣によって任命される公務員のこと。公正証書遺言は全国どこの公正役場でも作成することが可能です。

また、未成年者や推定相続人、受遺者とその配偶者、直系血族などは証人になることが出来ません。外部に依頼する場合には弁護士や税理士、司法書士など、遺言書作成に詳しい専門家になってもらうのがおすすめです。

公正証書遺言のメリット・デメリット

公正証書遺言は、公証人を通じて遺言者の意思を公的な立場で保証してもらえるメリットがあり、費用はかかりますが、遺言の方式としては、最も安全で確実といえます。メリットとデメリットについてはそれぞれ以下の通りです。

メリット

遺言書が公証役場で保管されるため、紛失や偽造のリスクがありません。また、遺言書の筆記は公証人が行うため、遺言者が遺言書の書き方をまったく知らなくても作成可能で、形式的な不備によって無効となるリスクもありません。

さらに、遺言者の遺言能力が問題となるようなケースでも、公正証書遺言の場合、他の方式の遺言に比べて争いとなる可能性は低いといえます(ただし、公正証書遺言であれば遺言能力が必ず認められるというわけではありません)。

その他、以下のようなメリットがあります。

1.作成時に正本をもらえるので、裁判所に検認、あるいは法務局に遺言書の請求に行く必要がない
2.公証人が作成に関与する為、遺言能力は高い確率で担保されている
3.遺言者が病気などの理由で出歩けないとしても、公証人が自宅などに訪問してくれるので作成が容易である
4.交渉役場にて遺言書自体の作成を行うため、遺言者が様式等に頭を悩ませる必要がない

デメリット

公正証書による遺言書の作成には、手間と書類作成の費用がかかります。公証人や専門家にご自身の財産状況を理解してもらうために、資料の準備や面談などに時間を要するため、作成をお考えの方は、余裕をもって取り掛かるのがよろしいかと思います。また、作成に公証人と証人が関わることによって、遺言書の内容が完全に秘密になるわけではありません。

公正証書遺言の必要書類

公正証書遺言を作成するためには、下記の書類を準備する必要があります。

・印鑑証明書と運転免許書などの身分証明書
・遺言者と相続人との関係がわかる戸籍謄本
・受遺者(遺言者の財産の遺贈を受ける者)の住民票
・銀行名(証券会社名)や口座番号がわかる資料
・不動産の登記簿謄本、固定資産税納税通知書又は固定資産評価証明書
・証人の確認資料(住所、職業、氏名、生年月日)
・遺言執行者の特定資料

公正証書遺言の作成

まずは、遺産のリスト、不動産の地番や家屋番号などを用意して、最寄りの公正役場に依頼します。 証人は署名する日に公証役場に行くだけですが、前もって上述した通り身分証明の書類を持参しておくと、その後の手続きがスムーズです。なお、本人が公正証書遺言で使用する印鑑は、実印でなければなりません。

ご自身で作成方法を調べる時間が取れなければ、相続の専門家に依頼し、遺言書作成をサポートしてもらうが賢明です。

事前準備

遺言書は公証人が作成をしてくれますが、そのためには以下の内容を事前に準備をする必要があります。

・ご自身の財産をリスト化して財産目録を作成する
・相続人の情報を整理する
・誰にどの財産を渡すのか決めておく
・預貯金、有価証券、不動産の情報が分かる資料を集める

公証人との打ち合わせを通じて、遺言書は作成されますので、誰にどんな財産を相続させるのかがわかる資料を準備しなければいけません。

公正証書の費用

公正証書にかかる費用

デメリットでご説明したとおり、公正証書遺言を作成するためには費用がかかります。必要となる費用は公証人手数料と専門家への手数料です。公証人手数料は、遺産を受け取る相続人や受遺者の人数によって変わってきます。

遺産額が100万以下ですと手数料も5,000円と安価ですが、1億円を超えてくると4万円超になり、財産の総額が増えれば、それに応じて手数料も増額されます。そして、自宅から出ることが難しい場合には、公証人に出張してもらうので出張日当が別途かかります。

また、銀行や弁護士、税理士、司法書士などに証人になってもらうためにも手数料がかかります。財産額にもよりますが、数十万円から数百万円になることもあるので、依頼する前にしっかりと金額を確認する必要があります。

公正証書遺言が無効になるケースは?

公正証書遺言は、公証人が作成しているため、書式の不備によりその効果が無効となることはありません。しかし、認知症などにより、ご本人の意思表示能力が欠けている場合、遺言書は無効となってしまいます。

その他、以下のような場合でも、その遺言書は無効となるので注意が必要です。

・15歳未満の者が作成した遺言書
・欠格者など、法的に証人になれない人が立会い作成した遺言書
・公証人が2人以上いない状態で作成した遺言書
・公証人が作成した書類を、遺言者及び公証人に読み聞かせ、又は、閲覧させずに作成した遺言書

まとめ

遺言書の作成は、相続人同士の遺産争いを防止するために非常に有効な対策です。しかし、その内容に不備があると、その遺言書の効力について争いが生じる可能性があるため、作成する時は遺言書のルールや注意点に十分注意する必要があります。

特に遺言書の書き方にはルールが多く、形式的な不備はかなり厳密に判定されます。不備があると、ご家族のために遺言書を残しても無駄になってしまいます。多少の手数料はかかりますが、確実にご自身の思いを残したいとお考えの方は、公正証書遺言により遺言書を作成することがおすすめです。

構成・編集/京都メディアライン 内藤知夏(http://kyotomedialine.com

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

 

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