相続とは人が死亡した際に、その方の財産及び債務を全て承継することをいいます。承継するといっても、実際にはそんなに簡単な手続きではありません。戸籍を収集して相続人を特定し、どのような財産及び債務があるのかを整理し、財産及び債務の分割方法が確定したら遺産分割協議書を作成し、預金や不動産等の名義変更をしていきます。

これに加えて、財産が一定以上ある方は相続税の申告書を税務署へ提出する必要があり、その申告期限は10か月と定められています。相続人同士が仲良く、スムーズに話し合いができれば問題ありませんが、「争族」と表されるくらい遺産の分割で揉めるということは少なくありません。そのため事前に遺言書を作成しておくということが非常に重要になってきます。

そこで今回は、日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士・中川義敬が、長年にわたる税理士業務を通じて得た幅広い知識や経験に基づき、遺言書の種類や作成する上でのメリットやデメリットついてご説明いたします。

目次
遺言・遺言書とは?
遺言書には種類がある
遺言書に記載する内容とは?
遺言書を作成する効力やメリットは?
まとめ

遺言・遺言書とは?

遺言とは、亡くなった方が自分の財産及び債務を、誰に何を渡すのかという意思表示をいいます。それを書面にしたものを遺言書といい、読み方は「いごんしょ」「ゆいごんしょ」どちらの読み方でも使われますが、一般的には「ゆいごんしょ」という方が多いでしょう。

通常、相続が発生した場合は、相続人しか財産及び債務を相続することができません。しかし、遺言書を作成すると、法律で定められている相続人以外に、財産及び債務を渡すことが可能になるのです。また、遺言書により、財産及び債務を渡すことを「遺贈」といい、遺贈を受ける方を「受遺者」といいます。受遺者には、特定受遺者と包括受遺者の2つの種類があります。

特定受遺者

財産及び債務を指定して遺贈することが可能です。例えば、この財産のみを遺贈させるということができます。

包括受遺者

財産及び債務を特定せずに、一定の割合分を指定して遺贈することをいいます。つまり、特定受遺者のように財産のみということはできません。その割合に応じて債務も取得することになります。

遺言書には種類がある

遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類あります。それぞれの種類ごとに、メリットとデメリットを見ていきましょう。

自筆証書遺言

遺言者が遺言書本文を自ら書くことで作成が可能です。

【メリット】

筆記用具や紙に条件はないため、今すぐにでも作成することができます。財産目録を添付する必要がありますが、この目録については自書する必要はなく、パソコン等で作成した財産目録を添付しても問題ありません。

一番のメリットは、他の遺言書は費用が掛かりますが、自筆証書遺言の場合は費用が発生しないということです。また、紛失してしまう可能性がある方は、法務局にて遺言書保管制度という制度もあるため(手数料は発生する)、あわせて利用することができます。

【デメリット】

自筆証書遺言は、その形式が法律によって厳格に定められており、それに反した場合は無効となる可能性があります。後述する公正証書遺言と違い、第三者のチェックがありません。そのため、認知症などで判断能力がない状態で作成すると、遺言の有効性を巡って相続人同士の争いの原因になることもあります。

また、法務局にて遺言書保管制度を利用しない場合は、家庭裁判所にて検認が必要です。

公正証書遺言

事前に公証人と打ち合わせをして作成してもらう遺言書のことをいいます。

【メリット】

作成後は、公証役場で原本を保管してくれるので紛失等のリスクはなく、遺言書検索サービスも利用できるため、発見されやすいというのもメリットの一つです。そして、最大のメリットは公証人が関与するため無効になりにくいという点ではないでしょうか。ちなみに家庭裁判所の検認は必要ありません。

【デメリット】

財産金額に応じた費用を払う必要があります。また、公証人と打ち合わせをして作成していくため、手間が掛かるのに加えて、証人を2人用意する必要があります。

秘密証書遺言

内容を秘密にしたまま存在を公証役場で認証してもらえる遺言書をいいます。

【メリット】

誰にも遺言の内容を知られたくない、という方にお勧めです。署名と押印だけ自身で行えれば問題なく、他の内容はパソコン等で作成が可能となります。

【デメリット】

これも自筆証書遺言同様に、無効になる可能性が高くなります。また、自筆証書遺言とは違い費用がかかり、家庭裁判所の検認が必要なうえ、証人を2名用意する必要があるため、実務上利用されている方が一番少ない遺言書の方法です。

遺言書に記載する内容とは?

遺言書を記載することで効力が発生する事項は、遺言事項として民法で定められています。記載内容はさまざまですが、今回は下記をご紹介します。

財産及び債務の指定

誰に何を渡すのかを指定できます。この際に、相続人以外のお世話になった人などに財産を渡すことも可能です。

権利の剥奪

亡くなった方に対する虐待や重大な侮辱がある場合、あるいは推定相続人にその他の著しい非行がある場合には相続権を剥奪することが可能です。

認知

婚姻関係にない男女の間に生まれた子供について、誰が父親であるかが明らかでも、法律上の父親を確定するには認知の手続きが必要になります。この認知の手続きを生前にすることもできますが、生前に出来ない場合において、遺言書により認知することも可能です。

遺言執行者の指定

作成した遺言書を執行する人を指定することができます。指定しておくと相続手続きを速やかに行なうことが可能になります。

保険金受取人の変更

保険金受取人を遺言書により変更することが可能です。

その他

付言事項として、家族や友人への感謝の気持ち等を記載することも可能です。遺言書の内容で相続人同士揉めないように一言記載するのをお勧めします。

遺言書を作成する効力やメリットは?

遺言書を作成する最大のメリットは、指定する一定の財産を渡したい人に渡せるという点です。遺言書がない場合、通常は相続人同士が遺産分割協議をして、それを書面にした遺産分割協議書に署名捺印をします。この場合、相続人には民法で定められている相続分があり、それを超えて財産を取得することは原則できません。

ですが、遺言書を作成すると自身の財産を自由に誰に渡すかを決めることが可能です。

まとめ

遺言書は誰に何を渡すかというのを自由に決めることができるため、非常に良い制度だといえるでしょう。ただし、相続人には遺留分という権利があります。遺留分とは,一定の相続人のために,相続に際して法律上取得することが保障されている遺産の一定の割合のことです。

遺留分を考慮せずに遺言書を作成すると、後日相続人から遺留分侵害請求をされる可能性があるため、遺言書を作成する際は専門家にご相談することをお勧めします。

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com

 

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