両親は私のせいで離婚した

その後、両親は離婚することに。別居の母親と友美さん、父親と兄という組み合わせのまま、両親は夫婦ではなくなった。

「父親と兄が私と母が暮らす祖父母の家に来てくれて、そこで離婚すると伝えられました。私はその話を聞いて、ただ泣くだけしかできませんでした。絶対に私のせいだって思っていたけど、それを口にできなくて。兄は私のことを恨んでいるかもしれないと思って、兄の顔は一瞬も見ることができませんでした」

友美さんはそのまま祖父母の家で中学、高校、大学を卒業して、32歳のときに結婚。現在は女の子の母親になっている。

「母親とは結婚するまで一緒に暮らしていて、父親とは両親が離婚後も数か月に一度のペースで、高校生まで会っていました。両親が離婚したのはずっと私のせいという思いがあったのに、どちらにもその話題を出すことができませんでした。

話題にできたのは、父親の病気がきっかけです。そのときに兄から十何年ぶりに連絡があり、4人揃ったときに3人に頭を下げました」

その姿を見て、両親、兄ともに離婚の原因は友美さんじゃないと完全否定。結果的に、当時の思い出を家族で振り返る時間となったという。

「兄は『それよりだいぶ前に両親はよく夜中にケンカしていた』と言い、『あの声で眠れているお前が信じられなかった』と笑って言いました。両親も『元からすっごく仲が悪かっただけ』と。当時の答え合わせを4人で笑ってできたのが嬉しかったです」

父親は大きな手術を経て、仕事に一度復帰したが、早期退職をして今は療養生活を続けている。両親はたまに2人で食事をする関係になっているという。そして、友美さん家族と兄家族の交流も続いている。

「ずっと自分が両親の離婚の原因だと思い込んでいたのは、私が何も聞かなかったから。勝手に想像して、そうだと決めつけていた。あのまま家族が終わらなくて本当によかったです」

家族でも、言わなくては伝わらないことがほとんど。「わからなくて当然」というぐらいの心構えのほうがコミュニケーションはうまくいくはずだ。

取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。

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