文/鈴木拓也
米国で、内科・感染症専門医や南フロリダ大学医学部の助教として活躍する安川康介さん。
安川さんは、高校・大学はトップクラスの成績で卒業。米国の医師国家試験も上位1%以内という高得点で合格した。
そう聞くと、生来ずば抜けて優れた頭脳の持ち主かと思われるかもしれない。しかし、ご本人いわく、「僕の頭は特別良い訳ではありません。元々の記憶力も高いわけではなく、むしろ低いのではないか」と不安になるくらいだという。
なのに、難関を次々と突破してこられたのは、「科学的にも効果の高い勉強法だったから」だと、著書『科学的根拠に基づく最高の勉強法』(KADOKAWA https://www.kadokawa.co.jp/product/322310000993/ )で述懐。そうした勉強法の数々を紹介している。
学習内容を思い出すだけの驚きの効果
安川さんが本書で説く勉強法は、いずれも効果が立証されていて、かつ誰でも実践できるもの。
その中でも、「決定的に重要」と挙げるのが「アクティブリコール」だ。直訳すると「能動的な思い出し」。一度学んだことを、頑張って記憶の隅から引き出すのが、実は記憶の定着に有効なのだという。
安川さんは、論拠の1つとして2006年に行われた心理学の実験を取り上げる。これは120人の大学生に、教科書に載っている2つの文章を読んでもらい、5分後、2日後、1週間後に、覚えている内容を書き出してもらうというもの。
1つの文章は、制限時間内に繰り返し読む学習を行わせ、もう1つの文章は、制限時間の最初の半分の時間は読ませ、残り半分の時間は、思い出せるだけ書き出させるアクティブリコールをさせた。
結果、学習が終わってから5分後の書き出しでは、アクティブリコールをしたほうが点数は若干低かったものの、2日後、1週間後については明らかに点数が高かったという。
こうした実験は、過去数多く行われており、安川さんはアクティブリコールをおおいにすすめている。
人に教えるつもりで声に出して書き出す
安川さんが、膨大な医学知識を覚えるためにしていた独自の勉強法も、本書には登場する。
その名は、「ブツブツ呟いて教えるフリをしながら書き出す白紙勉強法」。
具体的には、教科書などのごく一部をいったん読み込んだ後、ノーヒントで白紙に書き出していくというもの。この際、特に覚えにくいあるいは難しい内容は、声に出しながら書いたそうだ。また、あたかも誰かに教えているかのように書くこともあったという。
医学生の頃は認識していなかったが、この勉強法は、科学的に理にかなった方法であることを、安川さんは後になって知る。黙読より声に出した方が記憶に残るのはプロダクション効果、そして誰かに教える意識だと理解が深まるのはプロテジェ効果と呼ぶ。そして、思い出しつつ紙に書きだす作業は、アクティブリコール。安川さんは、そうとは知らずに効果的な勉強法を採用していたのである。
安川さんは、今でもこのやり方で最新の医学知識を学んでいる。やった直後は効果が感じにくいかもしれないが、やがて多くの情報が、頭の中にしっかりとどまっていることに気づくはずだ。
【睡眠不足は学習にはマイナスしかない。次ページに続きます】