2024年5月9日、調査会社・帝国データバンクは、スポーツ業界の景況感のレポートを発表。「景気が良い」と回答した企業が2割にとどまったことがわかった。コロナ禍で中止となっていたスポーツイベントが再開し、夏にはフランスの首都パリでオリンピックも開催される。それなのに、「景気がいいとはいえない」と考えている企業が多いのだ。その背景には、円安での原材料や輸入品の価格高騰などがあるが、流行の推移の早さもあるのではないだろうか。

雅彦さん(65歳)は定年後から約5年間、念願のゴルフバーを営業していたが、今年の春に店を閉めたばかりだという。「赤字がこれ以上かさまないうちに、畳みたかった」と語る。

大手企業でサボり癖を徹底矯正された

雅彦さんは名門国立大学の経済学部を卒業後、大手飲料メーカーに60歳まで勤務していた。

「同級生はメガバンクや商社、官僚などエリート街道を進んでいるけれど、1浪で1留だから、うちの会社に拾ってもらって御の字だったんです。最初に配属されたのは営業。都内の飲食店、酒屋を回って、うちの製品を置いてもらうために頭を下げ続けていました。見るからに低学歴の店長や仕入担当者から、鼻であしらわれてね。僕も傲慢だったから、それなりの大学を出て何をしているんだと落ち込んだこともありました」

数か月前まで学生だった若者が、営業に配属されて、頭を下げる。仕事と勉強の大きな差は、努力してもうまく行かない方が多い。

「どうにもならないので、担当エリアにある店に日参し、頭を下げ続けました。対面しているうちに、半年もすれば、可愛がってくれるお店も増える。するとなんとなく成績が上がると同時に、サボり方もわかってくるんですよね。もし、上司が甘ければ、私も手を抜いていたと思います」

雅彦さんの上司は高卒からの叩き上げで、とにかく厳しくて怖かった。部下のノルマを常にチェックし、未達だと理由を詰められる。その上司が納得するまで、質問は続いたという。

「私は幼い頃から“頭がいい子”と言われ、チヤホヤされるのに慣れていた。要領もいいからサボるのがうまい。浪人や留年をしたのは、このサボり癖のせいなんです。目の前にすべきことがあっても、酒、麻雀、デートなどを優先。適当に帳尻を合わせられることを知っているから、私の心の根っこには、“サボり病”が巣食っていました」

それを、上司は見抜いて徹底的に矯正した。雅彦さんは「今だったらパワハラと言われるけれど、それがありがたかった。彼がいたから僕は社会人になれたんです。大手企業は適材適所を知っている」と振り返る。

「自社商品を置いてくれる店がなんとなく増え、相手と堂々と渡り合えるようになりました。この“自信”があると、仕事が楽しくなる。誰だって人に何かを頼むのは嫌だし、新規の人に会うのは面倒。それを続けると、それなりに結果がついてくるんです。でも、サボったり失敗したりすると、自信は崩れて、再び積みなおさねばならない。賽の河原の話みたいですよね。石を積んでいると鬼が崩しにくる。自信の石を崩す鬼は自分自身のサボり心。それを若いうちに気付けてよかったです」

【仕事に夢中になり、結婚10年目に離婚……次のページに続きます】

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