2023年12月5日、海外ファンドによる、日本の富裕層向けの運用商品の提供拡大が報道された。2024年、カナダ系の不動産関連会社・ブルックフィールドは海外の不動産やインフラを対象とする公募投資信託を国内で販売予定だ。アメリカの投資運用会社・ブラックストーンや、KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)などに続き、資金の調達先を分散して運用を安定させる狙いがあるのだという。
日本が貧しくなったというニュースをよく見るが、富裕層は増えていると感じる。調査会社・野村総研の2023年の発表によると、純金融資産保有額が1億円以上5億円未満の「富裕層」、および同5億円以上の「超富裕層」を合わせると148.5万世帯で、この推計を開始した2005年以降最多だという。
友紀夫さん(65歳)は、3月末まで大手企業の取締役をしていた。金融資産、不動産資産は数億円に及び、一生かかっても使い切れないという。
「ウチなんか、まだまだだけど、一応富裕層だから老後は安泰。何の心配も問題もないけど、とにかくヒマなんだよ」という。友紀夫さんが65歳まで自己中心的な生活を続けてきたことを前編で紹介した。長年、家庭内別居を続けていた妻とは、半年前に離婚。子供はおらず、財産分与分として2億円払ったと言っていた。
【これまでの経緯は前編で】
1日誰とも会話をしないから、コンビニに行く
友紀夫さんは、自分が持っているものを、自慢する傾向がある。時計はロレックス、バッグと靴はエルメス、ダウンジャケットはモンクレールだという。
「昔はアルマーニばかり着ていたけれど、今はもうリタイアしている貧乏人だから、シャツとズボンはファストファッション。今はどんな服もよくできているから、上手に買い物しないとね」
友紀夫さんの1日の生活を聞くと、現役時代と変わらないようにしているという。朝6時起床、家の周りをウォーキングして、長めのお風呂に浸かって、8時から読書をしたりドライブに行ったりする。不動産や金融商品の確認、アドバイザーとして雇われている会社に顔を出すこともあるという。
「食事会は、一回りしてもうやっていない。だってあらゆる東京の店に行っちゃったんだもん。今思うと、一斉スタートの寿司とか、ワインのペアリングとか、よくもまあ、あそこまで金を使ったと思う。まあカードで決済していたからマイルはハワイに3往復できるくらいは貯まったけどね」
そして、グルメ会に来る人物たちの質が下がったと続けた。成金、マナーを知らない、男や女を漁りに来ている、ロクな会話ができない食べものオタクなどと言っていた。
「とにかく、みんな薄情だよね。俺が予約してやったから、珍しいモノだって食べられたのに、誰も御礼を言いに来ないし、誘いにさえ来ない。まあ、僕レベルになると、ちょっとやそっとの店じゃ満足できないから、みんな身の程を知っているのだと思う」
友紀夫さんは自分のことが絶対に正しく、圧倒的に頭がいいと思っている。容姿もととのっており、65歳にしては若く引き締まっており、背も高い。大学も有名私立大学に中学校から上がっており、挫折を知らない。
「みんながやらない努力を重ねてきたんだよ。英語はのどから血が出るほど努力をしたし、管理職試験や研修は誰よりもいい点数を叩き出した。父親から“人間は怠惰で思考停止する生き物だ”と教えられているから、部下の管理は怠らなかった。今、金があるのだって、金融商品や法律を徹底的に勉強したからだ。仕組みがわかれば資産は残る。この世のルールを知る努力をせずに、文句ばかり言っているバカが多いんだよ」
残念ながら、世の中は友紀夫さんが言う「バカ」のほうが圧倒的に多い。計画性がなく、どんくさく、優しく、勉強嫌いな人は、友紀夫さんと話すと見下されていると感じる。
「リタイアして変わったのは、しゃべる回数と時間。全くしゃべらないと声が出なくなるから、1日1回コンビニに行ってる。“袋はいいです”とか“カードで払います”と言うだけでトレーニングになるからね。お手伝いさんがうちはすぐに変わっちゃうし、今のお手伝いさんは話そうとしないんだよね。ちょっとこれは悲しい(笑)」
【85歳でなくなるとして、あと20年間どうするのか……次のページに続きます】