取材・文/渡辺陽(わたなべ・よう)

写真はイメージです。

カレーライスは日本の国民食と言ってもいいくらい馴染みのある食事ですが、そのカレーライスでうつ病や高血圧などを予防できるかも知れないという論文が発表されました。研究したのは韓国の国立順天大学校薬学部のHai Duc Nguyen氏ら。この内容を精神科医のHANA先生に聞きました。

――どのような研究だったのでしょうか。

「18歳以上の1万7,625人を対象に、カレーライスの消費量と心血管疾患やうつ病との関連について調査したそうです。その結果、カレーライスの消費量が多い人は、少ない人と比べると、うつ病だけでなく高血圧や2型糖尿病のリスクも軽減できたと発表しています。ただ、これらの疾患に対するカレーライスの役割を明らかにするためには、継続的な調査が必要であるとしています」

――カレーライスに何か秘訣が?

「カレーにはウコンが使われていますが、ウコンにはクルクミンという成分が含まれています。これはまだ動物実験レベルの話ですが、クルクミンは幸せホルモンと呼ばれるセロトニンを増やすことが分かっています。そのため、カレーライスをよく食べる人はうつになりにくいのかも知れません」

――他のスパイスも入っていますよね。

「相乗効果について医学的機序はまだ解明されていませんが、コリアンダーやカルダモンは、消化を促す働きがあると考えられています。また、辛い食べ物は血流を良くするので、クルクミンや他の栄養素の吸収を高められる可能性があります」

――クルクミンには、抗炎症作用もあると言われています。

「クルクミンには、強力な抗炎症特性および抗酸化特性があると考えられています。うつ病や統合失調症などの精神疾患も一部では脳内炎症が関与する炎症性疾患の可能性があると言われていて、体の中で炎症が起きると病気になるという仮説があります。もちろん、炎症だけが全ての病気の原因というわけではないと考えますが、例えばミノサイクリンという抗菌薬に炎症を抑える作用があり、その薬が精神疾患に効いたという報告があり、炎症と精神疾患との関連性が示唆されています」

――いろんな種類のカレーライスがありますが、うつ病予防にフォーカスするなら、どんなカレーライスがいいと思われますか?

「トリプトファンというアミノ酸がセロトニン合成の原料となり神経の調整に関わると言われているので、牛肉や豚肉の赤身肉を使うといいでしょう。鉄分もセロトニンの生成に関わる重要な物質、補酵素です。うつ状態の改善に役立つ可能性が高いので、鉄分を豊富に含むほうれん草などをカレーに入れるといいかも知れません」

* * *

厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』は、「人に対するウコンとその成分の作用は複雑で十分に解明されていないため、健康上の問題に対してウコンが有益であるかについては明確な結論は出ていません」としています。しかしながら、「ウコンはサプリメントとして関節炎、消化器障害、呼吸器感染症、アレルギー、肝疾患、うつ病などさまざまな症状・疾患に良いとされている」という背景もあり、今後の研究が注目されます。

精神科医HANA先生
精神科スーパー救急病棟のある病院の最前線で勤務。精神科医療従事者のためのコミュニティClub Psychiatryを立ち上げ、2024年4月現在、約90名の医師・薬剤師が所属している。資格、精神保健指定医、精神科専門医・指導医、精神薬理専門医をはじめ公認心理師、認知症サポート医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、産業医など。

取材・文/渡辺陽(わたなべ・よう)社会と医療の接点にある問題について取材・執筆。X(旧ツイッター):@world115115

 

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