妻子の門限は19時、飲み会と旅行は禁止

洋一さんの結婚生活を聞くと、かなり規律正しいものだった。妻と娘に対して、19時の門限を設定し、家族以外との旅行を禁止していた。娘はそのために修学旅行も欠席し、門限があるために、学校行事や部活も「ほどほどの参加」しかできなかった。

それには、洋一さんを捨てた母の存在があった。

「私の母は、6歳の時に父と離婚し、出ていきました。後で知ったのですが、男がいたんです。父は資産家で、母はいわゆる大部屋女優と呼ばれていた売れない俳優で、何本かの映画やドラマに出ています。父とはコンパで知り合って、周囲の反対を押し切って結婚。すぐに僕が生まれましたが、母は家庭に収まる人ではなかったんです」

父は最初、母にお金を渡さずに行動を制限しようとしていた。すると、母は父の財布や金庫からお金を抜き、父が出張している隙に外泊を繰り返すようになる。

「父は働かなくてもいいのですが、外資系の石油会社の社員として勤務していたんです。国内外の出張も多く、帰宅が遅くなることもありました。そういう隙を突いて、母は出て行ってしまう。売れない俳優でしたが、心はトップ女優で“生活の垢がつく”と家事もあまりしなかった。私はお手伝いさんに育てられたんです」

主が家を空けると、家の規律が乱れることを感じながら育った。両親の夫婦ゲンカ、母親の愛情を受けられなかった経験がある。だからこそ、ある程度の年齢になると、基本的に出張がなく、早く帰ることができる公務員の道を選んだのだ。

「とはいえ、仕事は多忙でしたので、家を空けることはありました。だから妻のようにおとなしくて堅実な女性を選んだんです。私は女性から粉をかけられることがよくあり、それなりに遊んでいたので、女性を見る目はある。遊びの相手と結婚の相手は別だと考えていたので、妻は見合いで知り合いました。彼女は銀行に勤務しており、男遊びをせず、貯金があり、短大卒でキャリア志向がない。家庭に入ってもらうことが条件でした」

妻を信頼した洋一さんは、給料をすべて妻に預け、やりくりをしてもらった。妻が欲しいものは何でも買い、一人娘も本人の望み通りに中学校から大学まで私立に入れ、小遣いを与えた。

【妻は家にいて、家庭を守るのが仕事……その2に続きます】

取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)、『沼にはまる人々』(ポプラ社)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)などにも寄稿している。

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