贈与税は、個人から贈与を受けた財産の価格に課税される税金です。贈与税の課税対象となる財産は、現金や不動産や動産、有価証券などさまざまですが、それぞれに定められた評価方法にしたがって算定した価格を申告額とします。

そこで今回は、日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたる税理士業務を通じて得た幅広い知識や経験に基づき、贈与税の基本的な考え方についてご説明いたします。

目次
贈与税とは?
贈与税とはどんな時に、誰にかかる税金?
贈与税の課税方法とは?
贈与税がかかるもの・かからないものとは?
まとめ

贈与税とは?

贈与税とは、個人(贈与者)から無償で受け取った財産を対象とする税金で、納税者は財産を受け取った個人(受贈者)になります。

贈与税の課税方法は、大きく分けると以下の2つの方法です。特に手続きをしなければ、暦年課税という方法で贈与税の計算を行うことになります。

・暦年課税
・相続時精算課税

暦年課税とは、1月1日から12月31日までの間に、個人が受け取った贈与財産の合計額から基礎控除額(110万)を差し引いた金額に対して課税する方法です。そのことから、1月1日から12月31日までの間に、受け取った贈与財産の合計額が毎年110万円以下であれば、贈与税はかかりません。

相続時精算課税とは、一定の要件をみたす贈与について、2,500万円まで贈与税が非課税となる制度です。2,500万円を超えた部分については20%の贈与税率となっています。イメージとしては、相続財産を相続の前に贈与でもらっておいて、税金の支払いは相続時まで保留しておくという感じです。

贈与税とはどんな時に、誰にかかる税金?

贈与を行なう人を「贈与者」、贈与によって財産を受け取った人を「受贈者」といい、贈与税の申告や納税義務があるのは、受贈者側です。受贈者は、自身が贈与を受けた財産のうち、贈与税の課税対象となる価格を計算して申告期限内に申告をし、その申告額から計算した贈与税額を納めなければなりません。贈与税の対象になる財産には、「贈与を受けた財産」と「贈与を受けたとみなされる財産」があります。

贈与を受けた財産

贈与は、贈与者と受贈者の契約によって成立し、「この財産をあげます」「もらいます」というお互いの認識があることが前提です。贈与税の対象となる財産には、現金や預貯金、不動産、事業用の財産、有価証券、貴金属、宝石、書画・骨とうなど、さまざまな財産があります。

贈与を受けたとみなされる財産

贈与を受けたとみなされる財産とは、法令で定義されているもので、経済的な便益など目に見えないものをいいます。具体的には以下の通りです。

・生命保険金
・信託受益権
・低額譲渡
・債務免除等

贈与税の課税方法とは?

贈与税の課税方法に関して、上述した暦年課税と相続時精算課税制度について見ていきましょう。

暦年課税による贈与税の申告額の計算方法

暦年課税の計算方法は、1月1日から12月31日までの間を課税期間とし、この間に贈与を受けた財産の合計額に対して、贈与税を課税する方法です。

暦年課税による計算の特徴は、贈与を受けた財産の価格を、親や祖父母など直系尊属から贈与を受けた「特例贈与財産」と、特例贈与財産以外の「一般贈与財産」に分けて計算をします。その上で、それぞれの合計額を申告しなければなりません。

「特例贈与財産」と「一般贈与財産」を分けて申告しなければならない理由は、適用される贈与税率に違いがあるためです。なお、暦年課税では、すべての受贈者に、年間110万円を上限とする基礎控除額があります。

相続時精算課税による贈与税の申告額の計算方法

相続時精算課税とは、以下の要件を満たす必要があります。

・受贈者が18歳以上の子供や孫で、贈与者は60歳以上の親や祖父母から贈与を受けること
・受贈者は、贈与を受けた翌年の確定申告の期間中に、税務署に「相続時精算課税選択届出書」を提出すること

なお、相続時精算課税制度を選択した贈与者からの贈与については、その後、暦年課税に戻すことはできませんので注意する必要があります。課税方法としては、特別控除額以下(累計2,500万円以下)の贈与には贈与税を課税せず、相続時(贈与者の死亡時)に、その財産を相続税の対象として精算するという方法です。

特別控除額を超える贈与が行われた場合は、その超過分に対して一律20%の贈与税が発生します。

※2024年1月の贈与からは、法改正により新たに110万円の基礎控除額が創設されます。年間110万円までの贈与であれば、毎年無税で贈与が可能です。しかし、それを超えた分に対して20%課税の対象となります。

贈与税がかかるもの・かからないものとは?

次に贈与税が課税される財産についてご紹介いたします。

贈与税がかかるもの

前述した現金や預貯金、不動産、事業用の財産、有価証券、貴金属、宝石、書画・骨とうなどの財産や、贈与を受けたとみなされる財産。すなわち、生命保険金、信託受益権、低額譲渡、債務免除等があります。

贈与税がかからないもの

贈与を受けた財産であっても、その性質から贈与税の対象にならない非課税の財産があります。

具体的には以下のものが当てはまります。

・法人からの贈与によって取得した財産(所得税の対象となる)
・扶養義務者から生活費や教育費として、必要なたびに受け取る財産
・香典、花綸代、年末年始の贈答、お祝い金、お見舞いなどの金品のうち、社会通念上相当と認められるもの
・贈与税の特例を使用して贈与された金銭

贈与税の特例とは、本来であれば課税対象となる贈与であるにもかかわらず、一定の要件を満たすことで、非課税の贈与とすることができる税法上の特例措置です。住宅取得資金等贈与の特例が、これに該当します。

まとめ

贈与は、基礎控除額や特例を活用することによって非課税で行うことも可能です。相続税対策としても活用されますが、基礎控除額の活用を誤ると、贈与ではないとみなされて相続税の課税対象にされてしまったり、連年贈与として思わぬ高額な贈与税を支払ったりすることになりかねません。

また、贈与税の非課税特例は、高額な金銭を一度に贈与できる反面、その1つ1つに適用要件が細かく決められています。そのため、必ず贈与を行う前に適用できるかどうかを確認することが大切です。

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com

 

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