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忙しくても毎日の食事はきちんと取りたい。そんな思いから、作り置きをしている人も多いと思いますが、何品もまとめて作るのは実は手間がかかるもの。

「塩」と「砂糖」と「水」を一定の割合で混ぜた液に、肉や魚を漬けてから調理することでおいしくふっくらジューシーに仕上げることができる画期的な調理法「塩糖水漬けレシピ」が話題となった人気料理研究家、上田淳子さんが提案するのは、レシピ不要でササっと料理が作れるようになる、ムダをそぎ落としたフランス流のミニマルレシピ。これらは、上田さんがフランスで料理修業をしていたときに出会ったマダムたちがもてなしてくれた料理がヒントになったそう。

美食大国フランスの日常ごはんは、時間も手間もかけず、シンプルな調理法で、たんぱく質と季節の野菜の一皿があればOKというシンプルで合理的なもの。無理なアレンジをせずに、素材をおいしく食べる術を知ることが、大人の洗練された食の愉しみであることを教えてくれます。

作り置きも献⽴も不要、道具はひとつあれば⼗分、味付けは“塩”だけ。驚くほどミニマルでお手軽なメソッドなのに、おいしくて見栄えもする「フランス的ごはん」が完成するのだから、こんなにうれしいことはありません。

今回は、発売後すぐに重版になるほど話題の上田さんの最新著書『フランスの台所から学ぶ 大人のミニマルレシピ』(世界文化社)から、ミニマルレシピの考え方をご紹介します。

文/上田淳子

10~15分ですべて完成します。
だから作り置きは必要ありません。

毎日家族のための食事を作っていた方は、週末などにまとめておかずを作る「作り置き」をしていませんか。作り置きをしなくては……というプレッシャーはあるものの、帰宅後に作り置き副菜が一品あるだけで本当に助かります。

しかしフランス人は作り置きをしません。煮込みなどをたっぷり作って翌日グラタンにリメイクしたり、ピクルスやマリネを多めに作って前菜やソースに活用したりということはありますが、別の日のためのおかずを作ることはありません。それは献立という考え方がなく品数が不要で、作り方がシンプルだから。ふだんはあくまでも食事の時間をゆっくり愉しむために、さっと焼いたり、軽く煮たり短時間でできるようなものを作ります。フライパンに蓋をして待っている間に、道具を洗えますし(といっても包丁とまな板くらいしかありませんが)、出来立てをすぐ食べるためにカトラリーやグラスをテーブルに並べる余裕もあります。

道具は1つ、調理法は2つだけで、
すべてのメニューが作れます。

フランスの台所に学ぶというと、手持ちの道具では作れないのでは? と思われるかもしれませんが、なんとフライパン1つあれば大丈夫。もちろんフランスの一般的な家庭には煮込み用の鍋などその他の道具もありますが、今回はあくまでもミニマル料理。時間も手間もかけずにパパッと作れる家庭のフレンチをお手本にしたところ、メイン料理は肉も魚も「焼く」か「軽く煮る」かの2通りで、どちらも22~24cmのフライパン1つあればいいという結論にたどり着きました(実は20cmでもギリギリ大丈夫)。ちなみにフライパンは蓋つきのフッ素樹脂加工のものを使います。

決して無理になんでもフライパンで作ろうと提案しているわけではありません。1人分の食事作りにおいて、このくらいなら食べる愉しみのためにできるかなという料理を考えたところ、こうなりました。フライパン1つ、調理法2つだけで、心豊かになれる食事が数多く作れるなんて、ちょっと愉しみになってきませんか。

味つけは塩だけ。
調味料の配合は不要です。

どうしてミニマルに料理することをフランスに学ぶのか、最大の理由は塩にあります。味噌や醤油を使う和食と違って、フレンチは塩のみ。塩加減さえきちんとすれば味はおのずと完成します。ほかの調味料との比率も不要です。これって料理をするうえで思った以上に気がラクなんです。おいしい塩の分量はほぼ決まって、最初に肉や魚に塩をすり込むので、途中で調味料を加えることがほとんどありません。最後に味をみて足りなければ塩を足せばいいだけ。なんなら食べ始めてからでもかまいません。

ざらざらがなくなるまですり込めば、味が入ります。

調理中の塩は粗塩(伯方の塩や赤穂の天塩など)を使います。さらさらの精製塩に比べて旨みがあり、1人分を作る場合にわずかな差で塩味が大きく変わることもありません。この本のひとつまみ(三本指でしっかりつまむ)は0.5g。思った以上にしっかりつまんだ状態です。自分のひとつまみが何gか量ってみることをおすすめします。

約120gの肉に粗塩ふたつまみ(1g)が目安。

* * *


『フランスの台所から学ぶ 大人のミニマルレシピ』(上田淳子 著)
世界文化社

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上田淳子(うえだ・じゅんこ)
料理研究家。神戸市生まれ。辻学園調理技術専門学校卒業後、同校の西洋料理研究職員を経て渡欧。スイスのホテルやパン店、フランスではミシュランの星付きレストランやシャルキュトリーなどで約3年間の研鑽を積む。帰国後、シェフパティシエを経て料理研究家として独立。自宅で料理教室を主宰するかたわら、雑誌やTV、広告などでも活躍。ワインに合う日本食の提案イベントや、双子の母としての経験を生かした食育についての活動も行う。確かな技術や知識、経験に基づいたレシピ集は、わかりやすさと作りやすさに定評がある。近著に『上田家ごはん』(文化出版局)、『今さら、再びの夫婦二人暮らし』(オレンジページ)など多数。

 

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