人生にはどうしようもできない部分が多々あります。親や性別は選べませんし、性格や素質も人によって違います。そんなどうしようもない部分について、「結局、人生は運に結果をゆだねるしかないゲーム」と言い切るのは、元少年院の教官という異色の経歴をもつVTuber、犯罪学教室のかなえ先生。
失敗の原因を「努力が足りなかった」「才能がなかった」から仕方ないと諦めている人は多いでしょう。ですが、犯罪学教室のかなえ先生は「努力も生まれながらの才能だとするならば、結局はこれも運の話」、勝者と敗者を分けるものは「運が良かった」「運が悪かった」という話に帰結すると結論づけます。
犯罪学教室のかなえ先生の著書『人生がクソゲーだと思ったら読む本』では、その理論にのっとって、寄せられた相談に忖度なくズバッと答えています。今回は人間関係に疲れてしまうという相談者への回答をご紹介します。
いったいどこからどこまでが自分のせいで、どこからが他人のせいなのか? それを理解することで、心の重りを少し軽くしてみませんか。
文/犯罪学教室のかなえ先生
人間関係に疲れやすいのは私だけ? もしかして経験不足?
【お悩み内容】
人間関係に疲れやすい主婦です。元々人付き合いが苦手なのですが、子どもの幼稚園のママ友だったり、義理の両親、パート先の同僚、さらにはご近所さんなどの関わる人が増えてきて徐々にしんどくなっています。別に相手から何かされたわけじゃないものの、ひとりになりたい衝動にかられて、ときどき家出をしたくなります。これは私に原因があるのでしょうか? この人間関係を続けていいのか、不安です。
【回答】
疲れた自分を抱きしめて。アナタの抱える悩みは全くおかしいものではない!
これ、意外と深刻な悩みです。まず伝えたいのは、世の中には人間関係に疲れやすい人がアナタ以外にも多くいるということです。これは「疲れている人もいるのだから我慢しろ」というニュアンスではなく「人間関係に疲れやすいアナタは変ではないよ」という意味で受け取ってください。
そもそも人間関係は誰かと繋がれているという安心感や新たな価値観の発見などの効果が得られる一方で、誤解や過度な気遣いなどによる精神的な疲労も生んでしまいます。特にストレスの多い人間関係を続けていると、ゆっくりと心の健康が蝕(むしば)まれていき、メンタルの不調に繋がることもあります。
相手は自分とは違う他人ですから、距離感や価値観も異なります。そのため、ある程度同質性の高い集団に属していたとしても、細かい違和感や差異などに敏感な人にとっては人間関係を維持するだけでも大きな負担になるでしょう。
今回の相談者の場合、元々人付き合いが苦手とのことです。
人付き合いが苦手な人の特徴としては、相手の話に合わせてばかりで自分の思ったことをなかなか言えない性格だったり、過度に他人からの評価が気になってしまう性格だったりなど、自分から何か相手に発信することがそもそも苦手な人が多い印象です。
わかりやすく説明すると、双方向的コミュニケーション場面において受信過多な人ほど人付き合いが苦手なことが多いというものです。このような人は、発信したいことがあっても、どう発信して良いかわからない、もしくは発信を我慢してしまうことによるストレスを抱えてしまっているように思います。
発信したいことがあるのに、自分ばかり受け身でいなきゃいけないコミュニケーションってストレスになりますよね。しかも、自分のコミュニケーション能力に自信がなければ、尚更(なおさら)です。人付き合いのストレスが相手に伝わった気がして、さらにそれがストレスになり、受け入れてもらえていないような気がしてしまい、またストレスが相手に伝わっている気がしてしまう……という負のループ。
どこかで断ち切らないと、本当に心を病んでしまいそうですよね。
さて、ここで少しアナタを深掘りしていこうと思います。
今回のしんどくなる相手方として、幼稚園の保護者(いわゆるパパ友、ママ友ですね)、義理の両親、パート先の同僚などなど、主に家族ではない相手ということですよね。では、自分の子どもや旦那様に対してはいかがでしょうか?
今回は横に置いておきますが、何かされたわけではないものの苦痛を感じているということであれば、興味のない相手と義務的に付き合わざるを得ない状況下で、自然と周りに気を遣って自発的な言動を我慢していることが多いのではないかと思います。
これは元少年院の先生をやっていた私の経験則になりますが、幼少期から自分の発言が許されなかったり、両親から自身の意思決定に関して否定的な言葉を投げかけられて育ったり、受け身のコミュニケーションがメインだった人は、大人になって自分の考えや意見を持つようになっても幼少からのコミュニケーションが癖づいて、相手に思ったことが言えなかったり、自然と物事に妥協してストレスを抱えてしまう傾向がありました。
そのような人におすすめしていたのが、ひとりで過ごす時間を意図的に設定するということです。生活をする中で無意識に人と付き合わなければいけないと思いがちですが、別にそんなことはありません。私もひとりになりたいときは、家にテントを張って引き籠もったり、車の中にマットや布団などを敷いて車中泊をしたりします。
また、用もないのにトイレに籠もって小説を読むことや音楽を聴きながら半身浴など、お金をかけずに自分がひとりになって落ち着くための時間を作るのもアリです。
職場でもできるだけ人と関わる時間を減らしてみましょう。
許される範囲で始業時間ギリギリに出勤することは、私もよくやりました。またママ友との付き合いも毎回を2回に1回くらいに減らしてみるなど方法はあると思います。
嫌われてしまうかもしれないと不安になるかもしれません。しかし、生活スタイルが変わってしまうことは誰にでもありますし、煩わしい人間関係からゆっくりとフェードアウトしていく能力も大切です。いきなりやるのは大変ですから、誰かの助けや協力を受けてぜひ実践してほしいと思います。
どんな人にとってもガス抜きは必要なことです。家出してしまいたい気持ちも理解できますが、ご家族などが心配してしまうので一旦信頼できる人の協力を仰いでひとりになって落ち着く時間を持つようにしましょう。
また、これは素人見解ですので、本当に心が疲れていると感じている場合には専門医などのカウンセリングなどを受けてみてください。アナタの状態を把握した上で、適切なアドバイスなどをもらえるでしょう。
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『人生がクソゲーだと思ったら読む本』(犯罪学教室のかなえ先生 著)小学館
犯罪学教室のかなえ先生
元・法務教官(いわゆる少年院の先生)、日本初の元国家公務員の男性VTuber。主に発達障害やコミュニケーションに困難を抱える少年を担当し、社会復帰に尽力した。
現在は「事件解説を通じて社会の解像度を上げる」をモットーに、2020年9月よりスタートしたYouTubeチャンネル『犯罪学教室のかなえ先生 V Criminologist』を運営している。同配信には視聴者からの悩みが多く寄せられ、それらに対する“愛のある辛口コメント”も定評がある。
経済産業省「未来の教室」プロジェクトのSTEAMライブラリーに学術系VTuberユニット「まなぶい」のメンバーとして教育コンテンツを提供するなど、活躍の場を広げている。