文・写真/福成海央(海外書き人クラブ/オランダ在住ライター)
夏至、6月21日。オランダ、アムステルダムの日の出は5時17分、日没は10時6分でした。日本と比べてとても日が長いオランダの夏。一年を通して曇りが多い気候の中で貴重な日光を存分に浴びようと、人々も屋外で過ごす時間が長くなります。前回は春のガーデニングセンターの様子をご紹介しましたが、今回は初夏の外時間を豊かに過ごす様々なアイテムをお届けしたいと思います。
種類も豊富な屋外用の家具
オランダの夏は気温が30度近くなる日もありますが、日本と比べて湿度が低く、比較的過ごしやすいのが特徴。庭仕事はもちろんのこと、屋外で食事をしたり、家族だんらんを過ごしたりと、庭やベランダが「第二のリビング」として大活躍する季節です。ガーデニングセンターには屋外用の家具が、かなり広い売り場面積で数多く揃えられています。ダイニングテーブルや応接セットなど、外で使うとは思えないような立派な家具が並んでいます。
また日が長い分、子どもたちも外で遊ぶ時間が増えます。庭に置く大きなトランポリンや乗用玩具も人気。夕食後の明るい夜、寝る直前まで外で遊ぶのはこの季節だけの特別なお楽しみです。
蓋つきが主流のバーベキューグッズ
天気の良い週末となると、近所のあちらこちらから炭火の燻る香りや、肉を焼く香ばしい匂いがただよってきます。つまりバーベキューの出番。特別な集まりだけでなく、普段から自宅で手軽にバーベキューを楽しむ人が多くおり、特に夏場は庭にバーベキューコンロが常に出ている家も珍しくありません。といっても、バーベキュー料理にこだわりがあるというよりは、みんなで楽しく外で食事をしようという感じです。
虫対策グッズ
さて夏の屋外といえば、気になるのが虫問題。オランダでも気候変動の影響か、気温が高くなる日数が以前より増えており、それに伴い蚊やハエ、ハチなども増え、虫除けグッズの種類も多くなっているように思います。
以前からあるものは、シトロネラというイネ科の植物の成分が含まれたキャンドルです。シトロネラはレモングラスの近縁種で柑橘系の香りがするのですが、蚊がこの香りを嫌うため、キャンドルを灯すことで虫除けになるというもの。
また庭で食事をしていて困るのが、ウェスプと呼ばれる小型のスズメバチ。果物やジュースなど甘いものがあるとすぐに寄ってきます。そこでレストランのテラス席でもよく使われているのがこういった罠。きれいなビンに見えますが、底に穴が開いていて中に甘いシロップなどを入れて吊るしておくと、匂いにつられてハチが入ります。一度入ると中からは出られません。虫除け・駆除用品については、最近は薬品を使った殺虫剤や電気式のものも増えていますが、今でもこういったグッズの人気は高いようです。
涼を呼ぶアクアリウムコーナー
奥へ進むと涼しげな水音が聞こえてきました。ガーデンセンターではペット用品も取り扱われていることが多く、この店では魚の生体販売があります。とても大きな水槽に鯉がたくさん泳いでいます。実はオランダでは錦鯉の人気が高く、2020年の統計では日本からの錦鯉輸出先として、香港、アメリカについで第3位となるほど。「Koi」という名称でサイズ別に販売されていました。実はこの日、私が買い物をした際に、レジで前に並んでいた老夫婦も15cmほどのサイズの鯉を数尾購入していました。お庭に池があるのでしょうか。それとも大きな水槽で飼うのでしょうか。気になるところです。
食卓を彩る野菜やハーブ類も種類豊富に
さてメインの植物コーナーも行ってみましょう。前回春のガーデニングセンターでは野菜の苗はまだ少なめでしたが、今回は夏野菜の苗がたくさん。特にトマトやパプリカなど、子どもたちが日常的におやつ代わりにしている人気の野菜たちです。果樹はベリー類やブドウの苗木が多くありました。我が家の庭にはラズベリーがありますが、もう少し増やしたいなと思い、1つ購入することに。ラベルをよく見ると品種の違いがあったので刺が少ないものを選びました。
またハーブの苗も前回よりも種類が豊富になっており、良い香りが広がります。こちらの植木鉢はずらして重ねることができるようで、鉢ごとに異なるハーブが植えられています。まるでハーブのマンションのようです。
花は青色が涼しげなカンパネラのハンギングや、色鮮やかなガーベラ、ミニひまわりなどが並んでいました。春には専用売り場もあったゼラニウムはすっかり少なくなり、今は街中を色鮮やかに彩っています。
さて日本で初夏の花といえば、紫陽花を思い浮かべる方も多いと思いますが、ここオランダでも紫陽花はとても人気があります。家や道端の生垣にもよく使われ、我が家も隣家との境目は紫陽花で区切られており、今年も鮮やかなピンク色に染まりつつあるところです。オランダでは土の酸性度の違いにより、そのほとんどが赤系、もしくは白の紫陽花。ガーデニングセンターには土を改良して青い紫陽花に仕立てた鉢植えもありますが、今回は売り切れていました。ちなみに紫陽花は、江戸時代に長崎の出島で医師を務めていたシーボルトが日本からオランダに持ち帰り、ヨーロッパに広めたとか。以前ライデン市にあるシーボルトハウスを訪れたのですが、当時シーボルトが作成した紫陽花の植物標本が展示されていました。ツバキもシーボルトが「冬のバラ」と名付けて紹介し、ヨーロッパで大人気となったそうですよ。
商品入れ替え時期の嬉しいおまけ
ラズベリーの苗を購入してレジを出ると、こんなワゴンがありました。
春に販売していた球根や根株類です。商品入れ替えのため、残った在庫を配布していました。何かを購入した人は2つまで無料ということで、赤と白のダリアをもらって帰りました。空いた球根コーナーには、秋に植え付けるチューリップの球根がこれからたくさん入荷されることでしょう。移り行く季節を思いながら、短い夏を存分に楽しみたいと思う、初夏のガーデニングセンターでした。
文・写真/福成海央(オランダ在住ライター)
2016年よりオランダ在住。元・科学館勤務のミュージアム好きで、オランダ国内を中心にヨーロッパで訪れたミュージアム、体験施設は100ヵ所以上。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員。