会社にお勤めの方であれば、年末もしくは年明けの給与で、年末調整の還付金が入る方が多いでしょう。しかし、事業をしている方、副業をお持ちの方は、1年間分の収入をまとめて確定申告をする必要があります。確定申告は限られた時期に提出が求められるため、前もって準備をすることをおすすめいたします。

そこで今回は、日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたる税理士業務を通じて得た幅広い知識や経験に基づき、確定申告の種類や提出が必要となる方についてご紹介いたします。

目次
確定申告とは?
確定申告が必要な人とは?
確定申告した方がいい人とは?
まとめ

確定申告とは?

確定申告とは、毎年1月1日から12月31日までの所得から税金を計算し、翌年の2月16日から3月15日までに最寄りの税務署で手続きを行うことです。なお、消費税を納税する必要がある方は、3月31日までに手続きが必要になります。

確定申告は以下3つの方法により提出が可能です。

・e-Taxで申告
・住所地の所轄税務署に直接提出
・郵送または信書便により住所地等の所轄税務署へ送付

特にインターネットの環境があれば、e-Taxを利用することで、パソコンやスマートフォンから申告データを送信することができるため、税務署に行かずに申告することができ、非常に便利です。

e-Taxを利用する場合には、マイナンバーカードの取得や、ICカードリーダライタの購入などの事前準備が必要となりますが、国税庁のホームページでも詳しく紹介がされているため、どなたでも対応が可能といえます。

確定申告の種類

確定申告をするうえで重要なポイントは、まず収入を10種類に区分すること。その区分に応じて、申告書の書式のAとBを使用しなければいけません。10種類の区分のうち、代表的なものが下記の通りで、その区分ごとに申告書のAとBに区分します。

ただし、申告書Aを用いる場合とは、その収入のみ発生しているときであり、例えば給与所得と事業所得の2種類の所得が発生したときは、申告書Bを使用することになります。

■申告書A

種類概要
給与所得給料、賃金、賞与
配当所得法人から受ける配当金、公募株式等証券投資信託の収益の分配など
雑所得国民年金、厚生年金、確定給付企業年金、確定拠出企業年金など
原稿料や講演料、生命保険の年金、FX取引など

■申告書B

種類概要
事業所得商・工業や漁業、農業、自由職業などの自営業から生ずる所得
不動産所得土地や建物、船舶や航空機などの貸付けから生ずる所得
配当所得上場株式等に係る配当等、公募株式等証券投資信託の収益の分配などで
申告分離課税を選択したものの所得
譲渡所得ゴルフ会員権や金地金、機械などを譲渡したことによる所得
土地や建物、借地権、株式等を譲渡したことによる所得
退職所得退職金、確定給付企業年金法及び確定拠出年金法による一時払の老齢給付金などの所得

年末調整との違いとは?

確定申告はあくまでご自身で計算をして税務署に提出するもので、年末調整のように会社など他人が計算をしてくれるものとは異なります。そして、年末調整は給与所得のみが対象となっていますが、不動産や株式の取引、事業をしている場合には、年末調整という概念はありません。そのため上述した所得がある場合には、全て確定申告により税金の計算をする必要があります。

また、医療費控除、ふるさと納税の寄付金控除、ローン控除の初年度の手続きなど、税額が軽減されるものは、年末調整では手続きができないため、確定申告をしなければいけません。

確定申告が必要な人とは?

原則として、各種の所得の合計額から所得控除を差し引いて、課税される所得金額が発生する方は、確定申告が必要です。よって、フリーランスや自営業などの個人事業主、不動産収入がある方、株の取引が発生する方で、収入から経費を差し引いた所得が発生する場合には、確定申告をすることになります。

給与しかもらっていない方でも、1年間の給与収入金額が2,000万円を超える方や、2か所以上から給与の支払を受けている方で、主たる勤務先で年末調整をしている方も確定申告が必要です。期日までに確定申告書の提出と納税を行わなかった場合には、無申告加算税や延滞税などのペナルティが発生しますので、期日までに必ず手続きを行いましょう。

確定申告した方がいい人とは?

一定の所得が発生していた場合には、必ず確定申告をしなければいけませんが、確定申告をすることで得をする方もいます。

確定申告した方が得な人とは?

上述した通り、ふるさと納税や医療費控除の適用を受ける方、住宅取得控除(ローン控除)の適用初年度の方は、確定申告をすることで税金が還付されます。

また、代表的な優遇規定で、下記の条件に合致する方も、確定申告をすることで税額が軽減されますので、必ず確定申告をすることをおすすめします。

・損益通算

各種所得金額の計算上生じた損失のうち一定のものについて、総所得金額等を計算する際に他の各種所得の金額から控除することが可能です。

・上場株式等の譲渡損失

上場株式等に係る譲渡所得等の赤字の金額は、他の上場株式等に係る譲渡所得等の黒字の金額から控除することができます。また、一般株式等に係る譲渡所得等の赤字の金額は、他の一般株式等に係る譲渡所得等の黒字の金額から控除することができます。ただし、控除しきれない赤字の金額は、給与所得など他の各種所得の金額から差し引くことはできないため注意が必要です。

上場株式等に係る譲渡損失の金額については、一定の要件を満たす場合、その譲渡損失の金額が生じた年の翌年以後3年間にわたって、上場株式等に係る譲渡所得等の金額および上場株式等に係る配当所得等の金額から繰越控除ができます。

・居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例

マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除することが可能です。

パート・アルバイトでも確定申告は必要?

パート・アルバイトなどの非正規雇用であっても、一定の所得が発生していれば確定申告をしなければいけません。1か所だけにお勤めの方は、基本的にはその会社で年末調整をしているため、確定申告は不要ですが、その他にも掛け持ちで働いている方であれば、確定申告が必要になります。

ただし、副業がアルバイトなどの給与収入で、年間収入金額が20万円以下の場合には、確定申告は不要です。

まとめ

確定申告は年末調整と違って、ご自身で必要な資料を集めて、確定申告書を作成のうえ、税務署に提出をしなければいけません。自分で手続きをしないとならないため、手間だと感じるかもしれませんが、一度作成をしてみるとそれほど苦労することなく作成できるでしょう。

また、確定申告することで税金が安くなる特例もあるため、疑問に思うことがあれば専門家にもご相談のうえ、手続きすることをおすすめいたします。

●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)

日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。

日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com

構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com

 

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