ふるさと納税を行うことで様々な返礼品がもらえます。そのため毎年の楽しみの一つとして、とらえている方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。ふるさと納税は返礼品をもらえるイメージが強いですが、所得税や住民税が控除される、いわゆる税額控除というメリットについてもご確認をしていただきたいと思います。
そこで今回は、日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)の税理士 中川義敬が、長年にわたる税務申告のサポートを通じて得た幅広い知識や経験に基づき、ふるさと納税で住民税の控除がされているのかを確認する方法についてご紹介したいと思います。
目次
ふるさと納税で、住民税の控除が受けられる?
ふるさと納税で、住民税の控除を受けるためには?
ふるさと納税の住民税の控除額の計算方法は?
ふるさと納税が、住民税から控除されているのかを確認する方法は?
まとめ
ふるさと納税で、住民税の控除が受けられる?
ふるさと納税をすると各自治体からその地域の特産品として、お肉・魚介類・果物等の食品やジュースやお酒等の飲料、工芸品など、さまざまな返礼品を返送してくれます。そのため返礼品の選択を楽しみにしている方も多いでしょう。ふるさと納税のもう一つの重要なポイントは、寄附することで所得控除の1項目である寄附金控除の適用が受けられるという点です。
寄附金控除とは、寄附金の一部が納税することになる所得税及び住民税から控除されることです。原則として寄附額から自己負担額の2,000円を除いた全額が控除の対象となります。つまり、ふるさと納税で寄附した分だけ、納めるべき税金が少なくなる効果があるのです。
ふるさと納税で、住民税の控除を受けるためには?
ふるさと納税は、全国の自治体に寄附を行うことで寄附額が所得税と住民税から控除される制度です。「ふるさと納税ワンストップ特例制度」もしくは「確定申告」の手続きを行うことで利用することができます。いずれの方法でも、12月末までに自治体にお金を寄附し、定められた期限までに申告を行うことで住民税の控除を受けることが可能です。
ワンストップ特例制度
ワンストップ特例制度は、確定申告が不要な給与所得者などの方が、以下の要件をクリアすることで、ふるさと納税で寄附する際に住民税から税金の控除が受けられる制度です。ワンストップ特例制度を活用すると、確定申告をする必要はありません。
・もともと確定申告を行う必要がない給与所得者などであること
・寄附の際に「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を自治体に送付していること
・年間(1月~12月)でのふるさと納税の寄附先が5自治体以内であること
ワンストップ特例制度を申請するためには、寄附金税額控除に係る申告特例申請書や本人確認書類などの一定の書類が必要になります。
確定申告
確定申告とは、毎年1月1日からの1年間の所得について、翌年の2月16日から3月15日までに手続きを行うことで、所得税・住民税などの納税額を確定させる手続きです。ふるさと納税による「寄附金控除」は、確定申告をすることで所得税と住民税を軽減することができます。確定申告は、ご自身の住所地の所轄税務署の窓口で手続きを行うか、もしくはe-TAXで提出することが可能です。
もともと確定申告が必要な方であれば、通常どおり確定申告により寄付金控除を受けることができます。しかし、うっかり6自治体以上に寄付を行ってしまった方やワンストップ特例制度の期限に間に合わなかった方も、確定申告を行うことで寄付金控除を受けることが可能です。
ふるさと納税の住民税の控除額の計算方法は?
ふるさと納税における住民税の控除額は、以下(1)から(3)の合計額で計算し、それぞれに異なる限度額が設けられています。ふるさと納税額の限度額は、(3)の限度額を超えなければ、(1)と(2)の限度額を超えることはありません。そのため、ふるさと納税の限度額を計算するうえでは、(3)の限度額のみ考えればよいことになります。
(1)所得税の控除
(2)住民税基本分からの控除(以下「基本分」)
(3)住民税特例分(以下「特例分」)
なお、特例分の控除額は所得割額の20%を限度額と定めているため、以下の計算式となります。
(ふるさと納税額 - 2,000円)×(100% - 基本分の税率 - 所得税率)※1≦住民税所得割額 × 20%※2
※1 特例分からの控除額
※2 特例分の限度額
ふるさと納税が、住民税から控除されているのかを確認する方法は?
住民税は、毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じたすべての所得について、翌年の6月以降に、「普通徴収」もしくは「特別徴収」という方法で納税を行います。
「普通徴収」は、各市町村が納めるべき税額などを記載した納税通知書を納税義務者に送り、これに基づいて税金を徴収する方法をいいます。「特別徴収」は、お勤め先の会社などが、本人に支払われる給与から税額を徴収して、それを本人の代わりに納める方法です。
ワンストップ特例制度により申請した場合は、ふるさと納税が住民税から控除されているかどうか確認するためには、この納税通知書の「税額」の項目の中にある市町村の「税額控除額」と、道府県の「税額控除額」の欄から確認することができます。
自治体によっては、「寄付金税額控除 市民税○○円 県民税○○円」などと記載されることもありますが、寄付金額から2,000円を差し引いた金額が、ふるさと納税した金額と一致するかを確認できます。また、確定申告で手続きをした場合には、所得税の「寄附金控除額」× 所得税率と、市町村の「税額控除額」・道府県の「税額控除額」の合計が寄付金額から2,000円を差し引いた金額と一致するか確認することが可能です。
まとめ
ふるさと納税によって、寄附金控除と返戻品の受け取りにより、利用者の方にとってお得な制度であることは言うまでもありません。ふるさと納税で寄附した分だけ、納めるべき税金が少なくなるため、地方自治体から受け取れる返礼品が2,000円以上の価値があれば、寄付をする価値はあります。ただし、寄附したふるさと納税が際限なく税金から控除されるわけではない点に注意してください。
ふるさと納税で損をしないためには、限度額を超えない金額で寄附することがポイントです。実際に寄付をした金額が適正に控除されているのか、確認する必要があります。
●取材協力/中川 義敬(なかがわ よしたか)
日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業継承コンサルティング、経理アウトソーシング、決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業継承」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。
日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)
●構成・編集/松田慶子(京都メディアライン ・https://kyotomedialine.com)