文/鈴木拓也

家庭料理にならざるを得ない時代へ

夫婦で家事を分担する、「家事シェア」という言葉が定着して久しい。
しかし、料理については、「妻に任せっきり」という家庭は少なくなさそうだ。それは、料理に苦手意識のある男性が多いせいもあるが、「男子厨房に入らず」という昔からの価値観が影響しているせいでもあるだろう。

そんな旧来の価値観を脱し、「男性も料理をすべき」と説くのは、フードプロデューサーで一般社団法人日本オーガニックレストラン協会代表理事の南清貴さんだ。

南さんは、その名も『男子厨房に入るべし』(ワニブックス)という著書の中で、日本の経済力の低下、生活習慣病の増加、心もとない食料自給率といった要因を論じながら、次のように力説してしている。

私は、これからは家庭料理の時代にならざるを得ないと考えています。そして家庭料理の時代は、男性が厨房に入り、料理をすることが必須になるのはもはや既定路線だと思うのです。(本書39P より)

これが10年前の発言であれば、あまり真面目に受け取らない人は多かったに違いない。しかし、昨今の国内外の情勢をみるにつけ、当たり前だと思っていた「日本人の食」のあり方に、不安な思いを抱いている人の方が多いだろう。だから「男子厨房に入るべし」と南さんは言うが、具体的に何から始めればよいのだろうか?

妻を台所の「先輩」とリスペクトする

「今日から僕も料理作りに励みます」と宣言した夫を、やさしく歓迎してくれる妻は、実は少ないらしい。

南さんは、その理由をいくつか挙げている。いわく、「やたらお金をかける」「時間がかかる」「片付けない」「偉そうにする」、そして「勝手なことをする」。過去に、「男の手料理」を振舞った経験のある男性なら、心当たりの1つや2つあるのでは?

ここは妻を、台所の「先輩」とリスペクトしながら臨むのが正解だ。その心構えの1つに南さんが挙げるのは、「すでにあるキッチンのルールには従う」というもの。これについて南さんは、次のように釘を刺す。

もしかすると合理的ではないかもしれないけれど、どの家庭にも必ずルールとセオリーがあります。それを無視して新たなやり方を強行することは、宣戦布告に等しいと思ってください。まずは、自分が参入する前までに完成していたキッチンのルールは、不合理だと思っても従うべきです。(本書129Pより)

変えたいルールがあったとしても、それはキッチンになじんでから。軽く提案して、相手の了承を得る「ソフトランディング」にしよう。

また、調理器具の片付けも注意したい。こちらにも苦手意識を持つ男性は多いが、手際のよい片付けを会得するコツはある。南さんによれば、それはプロの厨房から学べるという。つまり、客席から調理場が見える飲食店に入ったら、そこで仕事をする料理人の片付けを見て学ぶようにする。特にラストオーダーになってからの厨房の動きに、学ぶべき点は多いそうだ。

家庭料理のシステム化を目指す

南さんが、台所仕事で夫に目指してほしいのは、「半日かけてスパイスやハーブをたくさん入れた本格的なポモドーロ」といった、手間暇かけた趣味的なものではない。

それは、あくまでも「家庭料理」でなければいけないと説く。

南さんの考える家庭料理とは、次のようなものだ。

・食品添加物や農薬などによる汚染の心配がない安全な食べ物であること
・特別な道具や調味料、食材を必要としないこと
・出身地の郷土料理や自分たちの親世代が作っていた伝統的な日本の料理をベースにすること

さらに、一定のレベルを保ちつつ、毎日作り続けられることにも留意しなくてはいけない。そのために必要なのは家庭料理のシステム化。食材の買い出しから後片付けまでスムーズにできるようにするには、このシステム化がとても大事だと南さんは述べる。

その一例が、冷蔵庫の中身の把握。「キャベツ」「卵」「鶏ひき肉」などと、各食材を色分けしたふせんに書いておき、冷蔵庫のドアに貼っておく。消費して冷蔵庫からなくなったら、ふせんを剥がして別の所に貼っておく。そして、買い物に行くときにスマホで撮影する。これが、そのまま今日の買い物リストになると同時に、同じものを余計に買ってしまったり、買い忘れを防ぐことができる。

こうしたシステム化を進めていくことで、無駄な買い物だけでなく、電気などのエネルギーやゴミの削減にも繋がる。

「華麗な」料理を作る必要はなし

本章の中で南さんは、レストランやグルメ番組に出てくるような「華麗な」料理を作る必要はないと繰り返し強調している。また難しいテクニックを追求する必要もないとも。

では、どのようなレベルの家庭料理を作ればいいのか、その基準的なレシピをいくつか載せている。一例として、定番となる味噌汁だと以下のような具合だ。

【材料】
・タマネギ、ジャガイモ、ニンジン、ゴボウ、レンコンなどの野菜類:合わせて1kg程度
・昆布2cm×2cmにカットしたもの:25枚程度
・味噌:一人分につき大さじ1

【作り方】
1. 野菜類は、食べやすい大きさ(小さめの一口大)にカットしておく。ショウガは、千切りにする。
2.すべての材料を鍋に入れ、ひたひたになるくらいに水を加えて中火にかける。
3. 沸騰したら弱火にして、10分煮る。
4.3の野菜と煮汁を、その日に使う分を残し、あとは粗熱をとる。
5.4の粗熱をとった野菜と煮汁を保存容器に移し、冷蔵庫に保存する。
6.4で、残したその日に使う分の野菜と煮汁に適量の水を加え、再度加熱し、沸騰したら味噌を加えて火を止め、2~3分おいたら出来上がり。

保存容器に移した野菜と煮汁は、以降に作る味噌汁やうどんなど汁物を作るのに活用する。

このほか、漬物、スープ、サラダなどのレシピが載っているが、「気合を入れて頑張るぞぉ」という姿勢は不要。材料の分量も、厳密にこだわる必要はない。

やってみれば、「料理って面白い」と気持ちが変わるかもしれない。そして、その小さな一歩は、ゆくゆくは人生を変える可能性もある。気負わず、今日から厨房に入ってみてはいかがだろう。

【今日の教養を高める1冊】
『男子厨房に入るべし』

南清貴著
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文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube(Mystical Places in Japan)に掲載している。

 

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