牧師の家庭に生まれ、結婚して牧師の妻となり、自らも牧師になったミツコさん。夫亡き後は、協力牧師をしながら、ひとりで年金生活を送っている。毎月の生活費は年金7万円がメイン。経済的に余裕のある生活ではないが、お金がないからこそ感じる喜びがあるという。そんなミツコさんの著書『74歳、ないのはお金だけ。あとは全部そろってる』から、明るいひとり老後を送るコツをご紹介します。
年金7万円が主な収入。けっこうお金持ちです
今の主な収入は年金です。国民年金と厚生年金、夫の遺族年金を合わせて2ヵ月に1回約14万円、月にすると約7万円です。厚生年金は主任牧師をしていたとき、教会が宗教法人になり、加入しました。最後の2年半だけでしたが、少しでも年金の額を増やそうと、がんばって保険料を支払いました。
夫と二人で年金だけで生活していたときは、夫の年金分5万円は生活費としては使っていませんでした。夫は糖尿病を患っていて、私よりも先に亡くなるだろうと思っていたので、自分ひとりの年金で生活できるようになろうと考えていました。
夫は、自分の年金を教会への献金と孫たちのお小遣いにしていましたが、夫の気持ちに任せていました。
牧師の家庭に生まれ育ったので、貧乏は慣れています。父は、家にお金がなくても、「うちよりもっと困っている人に分け与える」と思っていた人でした。
結婚した夫も同じようなタイプ。大学のチャプレンでのお給料も、学生さんたちを食事に連れていき、すべて使ってしまっていました。牧師にはそういう人が多いのです。
夫は主任牧師として新しく教会を立ち上げたとき、3年くらい謝儀(牧師の給料)を辞退したので、無給だったこともあります。子どももいるのにどうしようと思いましたが、クリスチャンは「必要があれば神様が与えてくださる」と考えているので、お金がなくてもどうにかなってきました。
とはいえ、神様が与えてくださるのは、最後の最後。ぎりぎりまでがんばって、「本当に困った」と途方に暮れていると、不思議と「亡くなった父がお世話になったから、このお金を」などと思いがけない方から献金があったりして、助けられることがあります。
そんな生活だったので、「もっともっと」というよりも、あるものに感謝して、その中でどうにかする習慣が身につきました。だから、そういう頃に比べると、今はひとりでこれだけのお金を使えるので、「私ってお金持ちね」と思っています。
お金がないことを嫌だなと思うのではなく、その状態を楽しんでしまいます。たとえば、花は、ごくたまに1本しか買いません。でも、だからこそ、その1本の花が買えたとき、ものすごくうれしい。
お金があれば、いつでもたくさん買えるけれど、逆に1回の感動が薄まってしまいます。時々しかできないからこそ、喜びが深い。だから、少ないものでも幸せになれるのです。今は、お金がないほうがむしろ幸せだとも思えるようになりました。
教会への献金のため、シルバー人材の仕事で不足を補って
ある中でどうにかする、7万円なら7万円の生活をするだけです。ただそうは言っても、年金7万円のみでは厳しいこともわかっていました。というのも、教会への献金があるから。
献金は神様に捧げるもので、クリスチャンにとっては、生活費よりも優先順位の高いものです。教会の運営は教会員からの献金で成り立っており、存続のために欠かせません。
聖書の教えでは収入を10に分けて、そのうちの1つは神様のもの(献金)とされていますが、金額に決まりはありません。「神様と私」の間のことです。教会員それぞれが出せる額でいいのです。
教会への献金にもいろいろ種類があるのですが、毎月一定額をおさめる月定献金、教会堂を維持していくための会堂献金、教会学校や礼拝での献金などが主なところです。他にクリスマス、イースター、誕生日、出産、入学、就職など神様に感謝することがあるとき、その都度献金します。献金は、主に牧師の謝儀(給料)、教会の光熱費、電話代、コピー機のリース代などの活動に使われます。
毎月の献金は、私の中で絶対に譲れないこと。だから、牧師を引退して年金をもらうようになっても、働く必要があるだろうと、早くから覚悟していました。
主任牧師を辞めた2015年の秋に、地元の自治体が運営するシルバー人材センターに登録しました。ここは家庭や企業、公共団体などから様々な仕事を引き受けて、登録した高齢者には仕事を提供してくれます。
私に何ができるかと考えたところ、4人の子どもたちを育てながらずっと担ってきた家事ならお手伝いできるかなと思い、登録しました。12月から1軒のお宅に、お掃除のために通い出しました。
そして、年が明けて夫が亡くなり、「もう1軒、仕事を増やしてください」とセンターに連絡したところ、すぐに仕事が見つかり、とてもありがたいことでした。金曜日の夕方から3時間、仕事で遅くなるママの代わりに夕ご飯を作っています。
その後、最初のお宅の仕事がなくなり、他の掃除の仕事が決まって、火曜日と木曜日の2時間、それぞれ1軒ずつ通っています。3軒とも子育てをしながら共働きをしているご家庭です。時給は1時間1000円で、週に3日働き、月2〜3万円になります。これで、献金しても生活できるようになりました。加えて、美容院に行ったりといった臨時出費も、問題なく出せる余裕ができました。
【月7万円の生活費の内訳。次ページに続きます】