政府により、少子高齢化への対応の一環として、公的年金制度の見直しが検討されている。現在60~70歳となっている年金受給開始年齢を引き延ばすことや、70歳未満となっている厚生年金加入期間の上限の引き上げなど、具体的な話も出てきた。そういった現状を踏まえ、総合旅行プラットフォームの「エアトリ」が、20代~70代の男女1211名を対象に「公的年金」に関する意識調査を行なったので、結果をみてみよう。
調査1:現在、公的年金は受給開始年齢を繰り下げたり、繰り上げたりすることができることを知っていますか?
60・70代では9割以上の人が「知っている」と回答。しかし、年代が下がるにつれ「知っている」割合は減少し、20代では約3割の人が「知らない」と答えた。若年層の中にはまだ自分の事として興味を持てていない人も多いのだろう。これからの未来を担う若者たちの理解を深めることも政府の課題となりそうだ。
調査2:受給開始年齢を受給者が自由に選べ、その年齢によって受給額が変わる制度についてどう思いますか?
「賛成」が最も多く46.8%、「反対」が11.7%となった。また「どちらとも言えない」と回答した人も41.5%おり、まだまだ議論していく必要がありそうだ。
また「反対」と回答した人は比較的若い人が多く、自分たちも本当に年金を受け取れるのか不安だという声が聞かれた。さらに、定年制度が確立していない中で受給年齢だけ引き上げられることに対しても疑問視している人も多いようだ。
●「賛成」の理由
・受給額がアップするのは嬉しいし、永く生き続けられるよう健康にも留意することになるから。(60代・男性)
・出来る限り働くことが出来る方が生きる張り合いがあり、働いている間年金受給を遅らせることが出来れば社会貢献にも自身の老後にもより良いと思うから。(40代・女性)
・自分の経済状況に応じた選択が出来る。少子高齢化で受給年齢の引き上げは仕方が無いが、定年制の引き上げも政策として推進すべきで片方のみでは駄目である。(70代・男性)
●「反対」の理由
・引き上げをした所でじゃあ働いて給料をもらえる場所はあるのか?という話です。働く事が出来ない状態で無理な引き上げをするとその人達はどうしていけばよいのでしょうか?若い人の負担が増えるばかり何も解決しません。(30代・女性)
・現在でさえ年金をもらうためのハードルがあがっているのに、自分がその世代になった時、はたして本当にもらえるのかどうか、もらえない気がするから。(40代・女性)
・一律受給にすればその分使うお金が市場に出回り景気が良くなるから。(30代・女性)
調査3:受給者が受給開始年齢を自由に決めて良い場合、何歳から公的年金を受給しますか?
最も多かったのは「65~69歳」(43.0%)となっており、「60~64歳」の31.4%と合わせると、約3/4の人が60代での受給を希望した。一方で、70代以上を選んだ人も約2割いた。
「60代」を選んだ人は自分が早く死んでしまうことを危惧している人が多く、定年と共に受給して余暇を楽しみたいという意見が多く見受けられた。一方、「70代以降」を選んだ人は年金をあてにしていない若年層か、現在も働いていて収入があるシニア層がメインとなった。
●「60代」での受給を選んだ理由
・自分の寿命がわからないので、金額よりも開始時期を重視したい。(60代・男性)
・体がつらくならない年齢でもらう。健康なうちに旅行したい。(60代・男性)
・体力的とか社会状況で就職するのが難しく働けなくなるのがこの年齢のような気がするので。(60代・女性)
●「70代以降」での受給を選んだ理由
・個人的に年金をあてにしていないから。(30代・男性)
・今は必要ない、老後の生活受給額を少しでも多くしたいと思います。(60代・男性)
調査4:(年金を受給していない人に対し)定年後にやりたいことは何ですか?
圧倒的大差で「旅行」(88.0%)が1位となった。2位の「食べ歩き」(33.4%)いずれもお金の掛かるものが上位を占める結果となった。
調査5:老後の趣味に月どのくらいのお金をかけていますか?(年金受給者)かけたいですか?(年金未受給者)
年金受給者、未受給者共に1位は「1万円以上3万円未満」(年金受給者:36.9%、年金未受給者:37.6%)、続いて「3万円以上5万円以下」(年金受給者:21.7%、年金未受給者:26.4%)となった。興味深いのが、「1万円未満」しか使っていない年金受給者が2割いるのに、年金未受給者の中で「1万円未満」と回答したのは14.1%しかいなかった点。反対に、「10万円以上」は年金受給者では6.6%だったのに対し、年金未受給者は9.9%となり、一部の年金未受給者は現実よりも夢が膨らんでしまっているようだ。
どんどん変わる年金制度に不安や戸惑いを覚える人も多いだろう。セカンドライフを安心して迎えるためにも、年金制度の見直しの行方にはしっかりとアンテナを張り、最新の情報を得るよう心がけておいた方がよさそうだ。
※旅行サイト「エアトリ」調べ
文/鳥居優美