定年退職や中途で会社を辞めた場合に受け取る退職金には、所得税や住民税などの税金がかかります。退職金を支給する際には会社が源泉徴収を行いますので、退職者は源泉徴収後の退職金を受け取ることになりますので、基本的には自分で確定申告をして納付する必要はありません。
ただし、ケースによっては退職金を受け取った後に確定申告をすることにより、還付金を受けることができる場合もありますので注意が必要です。それでは、どのような場合に確定申告をしたほうがよいのでしょうか?
100歳社会を笑顔で過ごすためのライフプラン、ライフブック(R)(https://www.smilelife-project.com/)を提唱する、ファイナンシャルプランナー・藤原未来が分かりやすく解説します。
目次
退職金と源泉徴収について
退職金の源泉徴収の提出先は?
退職金と確定申告について
まとめ
退職金と源泉徴収について
会社が役員や従業員に対して退職金を支払うときには、所得税及び復興特別所得税を源泉徴収して、原則として翌月の10日までに納めなければなりません(死亡退職により、支払う退職手当等で相続税の課税の対象となるものは、所得税の課税の対象とならないため、所得税及び復興特別所得税の源泉徴収は不要)。
退職手当等に対する源泉徴収税額の計算方法は、退職者から「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けている場合と受けていない場合とで異なります。
「退職所得の受給に関する申告書」とは、会社を退職して退職金を受け取る人が、その退職金の内容や勤続年数などについて記載する申告書のことで、法律上必ず提出しなければならないというものではありません。しかしながら、この申告書を提出した場合と提出しなかった場合とでは、所得税の計算方法が大きく異なります。
退職金は、長年の貢献に感謝するという意味合いがあることから、税額が低く抑えられるような「退職所得控除」という特別な配慮がなされています。ただし、この申告書を提出していないと「退職所得控除」が適用されず、その退職手当等の金額に一律20.42%の税率による金額が源泉徴収されるので、税金を払い過ぎてしまう結果となるのです。
つまり、「退職所得の受給に関する申告書」は、退職金の税金を安くするための軽減制度の適用を受けるために必要な申告書ということになります。
退職金の源泉徴収の提出先は?
「退職所得の源泉徴収票」は、受給者交付用と税務署提出用に加え、市区町村に提出するための「特別徴収票」を兼ねていることから、帳票の名称は「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」となっています(以下「退職所得の源泉徴収票等」)。
「退職所得の源泉徴収票等」は、退職後1か月以内に退職手当等を支払った全ての人について作成し、交付しなければなりません。また、「退職所得の源泉徴収票等」を税務署と市区町村へ提出しなければならないのは、受給者が法人の役員である場合に限られています。なお、この場合の役員には相談役、顧問その他これらに類する方が含まれます。
退職金と確定申告について
退職する前に、「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出していれば、「退職所得控除」を適用した退職所得の計算が行われるため、税額が大きく軽減されたうえで源泉徴収されます。
一方で、「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった場合には、一律20.42%の税率で源泉徴収されてしまいます。そのような場合には、「確定申告」をすれば払い過ぎた税金を取り戻すことができるので、忘れずに申告するようにしましょう。
また、上記のほかにも退職所得の「確定申告」をしたほうが良いケースがあります。 それは、退職所得以外に不動産所得や事業所得の赤字があるケースです。退職者がアパートなどの不動産経営をしていて退職した年の不動産所得が赤字になった場合や、退職後に何らかの事業を始めその事業所得が赤字になった場合などは、確定申告をすることで退職所得と損益通算できるのです。
ただし、退職所得と損益通算する前に、まず事業所得や不動産所得の赤字を給与所得、配当所得、雑所得とで損益通算しておく必要があります。そのうえで、まだ損益通算しきれない赤字がある場合に退職所得と損益通算でき、還付金を受け取ることができます。
退職所得を含めた確定申告は、源泉徴収された税額の還付を受けられる可能性があると同時に、確定申告した所得は次年度の住民税や社会保険料の算定基準になるので、翌年の税金軽減のためにも大切です。退職した人は、とりあえず退職所得の試算をしてみてはいかがでしょうか。疑問点があるときには、所轄の税務署に相談に行くことをお勧めします。
まとめ
以上、退職金の「源泉徴収」と「確定申告」についておさらいしました。源泉徴収票を見ても、退職所得控除が適用されているかわからない場合や、退職所得の受給に関する申告書・確定申告書の作成方法について不明点などがある場合には、税理士に相談しましょう。
また、退職時にまつわる税金について把握したうえでその後のリタイアメント生活をプランニングしてみましょう。 長生きの人生を豊かに楽しく暮らすため、早めにライフプランを作ることをお勧めします。 保険や金融商品などを販売しない中立的なファイナンシャルプランナーは相談者の立場に立って最適なリタイアメントプラン作りをお手伝いします。
●取材協力/藤原未来(ふじわらみき)
株式会社SMILELIFE project 代表取締役、1級ファイナンシャルプランニング技能士。2017年9月株式会社SMILELIFE projectを設立。100歳社会の到来を前提とした個人向けトータルライフプランニングサービス「LIFEBOOK®サービス」をスタート。米国モデルをベースとした最先端のFPノウハウとアドバイザートレーニングプログラムを用い、金融・保険商品を販売しないコンサルティングフィーに特化した独立フランチャイズアドバイザー制度を確立することにより、「日本人の新しい働き方、新しい生き方」をプロデュースすることを事業の目的とする。
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