退職金は老後を豊かに楽しく過ごすための大事な資金になります。会社から退職金を受け取る時にかかる税金はおよそいくらぐらいになるのでしょうか。気になる計算方法について学んでおきましょう。
100歳社会を笑顔で過ごすためのライフプラン、ライフブック(R)(https://www.smilelife-project.com/)を提唱する、ファイナンシャルプランナー・藤原未来が解説します。
目次
退職金にかかる税金の計算方法
退職所得控除額と確定申告
退職金の受け取り方で税制が変わる?
まとめ
退職金にかかる税金の計算方法
退職金は長年の会社への功労に対する報酬の意味合いがあるため、他の所得にかかる税金より優遇されています。所得税の計算上は「退職所得」に該当し、他の所得とは切り離して計算する「分離課税」として扱われます。退職時に受け取る退職一時金には、「所得税」と「住民税」がかかります。
「所得税」の計算
退職一時金にかかる「所得税額」は次のようにして計算します。
所得税額=退職所得金額 × 所定の所得税率
「退職所得金額」に所定の所得税率を乗じ、控除額を差し引いて算出された金額が所得税です。ここで用いる所得税率および控除額は、以下の<図表1>ように退職所得金額ごとに定められています。
<図表1>退職所得の源泉徴収税額の速算表
「退職所得金額」は、原則として次のように計算します。
退職所得金額=(収入金額 - 退職所得控除額)× 1/2
ここで、「収入金額」とは受け取った退職一時金の金額になります。また、「退職所得控除額」は、「勤続年数」によって計算方法が異なりますが、原則として勤続年数が長ければ長いほど控除額が大きくなるような計算となっています。
「住民税」の計算
「住民税」の計算は、「退職所得金額」に住民税率を乗じて計算します。住民税率は、退職所得金額に関わらず、一律10%(都道府県民税4%、市区町村税6%)で計算式は以下のとおりです。
住民税=退職所得金額 × 住民税率10%
ちなみに、「退職所得金額」は所得税の場合と同じです。所得税の計算のところで算出した金額を用いることができます。
退職所得控除額と確定申告
退職金の所得税は「退職所得金額」に所定の税率を掛けて計算しますが、「退職所得金額」は、前述のとおり原則として次のように計算します。
退職所得金額=(収入金額 - 退職所得控除額)× 1/2
「収入金額」から差し引くことができる「退職所得控除額」は、退職金の税金計算のために特別に用意されたもので、次のように計算します。
- ア) 勤続年数が20年以下の場合
40万円 × 勤続年数 (80万円に満たない場合には、80万円)
- イ) 勤続年数が20年超の場合
800万円 + 70万円 × (勤続年数-20年)
収入金額=受け取った退職一時金が「退職所得控除額」と同額、もしくは小さい場合には「退職所得金額」がゼロまたはマイナスになります。例えば、次の参考ケースのような場合には退職所得金額はゼロになり、退職金には所得税も住民税もかかりません。
【参考ケース1】勤続年数が10年4か月の人の場合
勤続年数は11年になります。(端数の4か月は1年に切上げ)
「退職所得控除額」=40万円 ×(勤続年数)=40万円 × 11年=440万円
となりますので、退職金が440万円以下であれば所得税、住民税ともにかかりません。
【参考ケース2】勤続年数が24年7か月の人の場合
勤続年数は25年になります。(端数の7か月は1年に切上げ)
「退職所得控除額」=800万円+70万円×(勤続年数-20年)
=800万円+350万円=1,150万円
となりますので、退職金が1,150万円以下であれば所得税、住民税ともにかかりません。ところで、退職金の所得税は自分で確定申告をする必要があるのでしょうか? 答えは、あらかじめ「退職所得の受給に関する申告」をしていれば「不要」です。退職金を受給する際に、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出すれば、勤務先が所得税額及び復興特別所得税額を計算し、退職金から源泉徴収されることになります。
したがって、原則として確定申告は必要ありません。納税をスムーズに終わらせるために、退職時には「退職所得の受給に関する申告書」を勤務先に忘れずに提出しましょう。
退職金の受け取り方で税制が変わる?
さて、退職金ですが、受け取り方法には「一時金」として全額受け取る方法と、「年金」として毎年一定額を受け取る方法と、大きく二つの方法があるのはご存じでしょうか?
従業員は退職をするときに希望の受取り方法を選ぶことができる会社もあり、さらには一部を「一時金」として受取り、残りを「年金」で受け取るというような組み合わせができる会社もあります。退職金を「一時金」で受け取った場合の税金の計算方法は先ほど確認しましたが、「年金」で受け取った場合の税金の計算方法は「一時金」とは異なる方法になりますので、その計算方法について見ていきましょう。
【年金で受け取る場合の税金の計算方法】
退職金を年金として分割で受け取る場合は、所得税の計算上、「退職所得」ではなく「雑所得」という所得として扱われます。計算方法は以下の通りです。
雑所得=年金収入 - 公的年金等控除額
退職金の年金払いのほかに厚生年金など公的年金の受給があれば合算し、年齢及び年金の収入金額に応じて、公的年金等控除が適用されます。
<図表2>公的年金等に係る雑所得の速算表
雑所得の計算方法は、他の所得と合計して税額を計算する「総合課税」です。給与所得など他の所得があれば合算し、基礎控除や社会保険料控除などの対象となる各種所得控除額を差し引いて、課税所得を計算します。退職金を「年金」で受け取ることによって最終的に毎年の所得が増えると、国民健康保険料や介護保険料などの社会保険料も増額となる場合がありますので、注意する必要があります。
退職金の受け取り方法については会社によってさまざまな選択があるため、一時金受け取りが可能か一時金受け取りと年金受け取りの組み合わせ割合が選択できるか、また、受け取り時期や期間の選択肢はあるかなどをあらかじめ自分で確認しておくことをお勧めします。
まとめ
退職金には「一時金」のほかに「年金」による受け取り方法があり、それぞれの税金の計算方法の違いについて確認しました。自分自身の退職金の予定額を把握したうえで、「一時金」で受け取るか、「年金」で受け取るか、どちらを選択すると有利なのか検討してみましょう。商品販売をしない中立的なファイナンシャルプランナーは相談者の立場に立って最適なリタイアメントプラン作りをお手伝いします。
●取材協力/藤原未来(ふじわらみき)
株式会社SMILELIFE project 代表取締役、1級ファイナンシャルプランニング技能士。2017年9月株式会社SMILELIFE projectを設立。100歳社会の到来を前提とした個人向けトータルライフプランニングサービス「LIFEBOOK®サービス」をスタート。米国モデルをベースとした最先端のFPノウハウとアドバイザートレーニングプログラムを用い、金融・保険商品を販売しないコンサルティングフィーに特化した独立フランチャイズアドバイザー制度を確立することにより、「日本人の新しい働き方、新しい生き方」をプロデュースすることを事業の目的とする。
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