皆さんは退職金を受け取ったらどうしますか?  預金においておく? 住宅ローンの繰り上げ返済をする? それとも資産運用をする? リタイアしたあとの生活は人それぞれですね。せっかくできた時間と退職金で楽しく豊かなリタイアメント生活を組み立てるためには、退職金をどのように活用すれば良いのでしょうか。

100歳社会を笑顔で過ごすためのライフプラン、ライフブック(R)(https://www.smilelife-project.com/)を提唱する、ファイナンシャルプランナー・藤原未来が解説します。

目次
退職金は老後資金のために、運用する? しない?
退職金の運用方法は?
退職金運用プラン
まとめ

退職金は老後資金のために、運用する? しない?

定年退職後の生活を送っている方の相談を受けている中でよく耳にするのは、「預金通帳の残高が毎月だんだん減っていくことほど怖いことはない」という話です。国からの年金だけでは足りずに、少しずつ預金を取り崩しながら生活するケースは一般的だと思います。

受け取った退職金をそのまま預金においておくのは、安全性の観点からは良いと思いますが、収益性はまったく期待できず、時の経過とともに残高が減っていく不安から逃れられない状況となります。リタイアメント生活において、退職金を資産運用するかしないかによって資金の減り方が劇的に違ってくるケースもありますので、自分の状況に合わせて検討する必要があります。

ここに退職金2000万円を受け取った65歳のAさんがいます。毎月10万円ずつ取り崩し続けたとしたら、15年後の80歳の時には2000万円から1800万円減って200万円の残高になってしまいます。一方で、同じく65歳のBさんがいて、退職金2000万円を年5%の利回りで運用しながら毎月10万円ずつを取り崩し続けたとしたら、15年後の80歳の時はいくら残っていると思いますか?

答えは1527万円です。さきほどのAさんが200万円に減ってしまったことと比べると、大きく差が開くことが分かります。<図表1>のように、「マネー寿命」(資金がゼロになる年齢)も、Aさんは81歳に対して、Bさんは101歳まで伸びます。

<図表1>

出典:株式会社SMILELIFE projectのセミナー資料より抜粋

このように、資産運用をするとしないとでは資金の減り具合が違ってきますが、かといってただ闇雲に投資して、失敗して大事な退職金を元本割れさせてしまっては本末転倒です。失敗しないための正しい資産運用方法を学んだうえで始めるべきでしょう。

とくに早期退職金の制度を利用して、定年を待たずに退職した場合には、通常の定年退職による退職金に上乗せされて支給されるのは有り難いですが、一足先に退職するので資金を取り崩す期間も長くなります。その分お金に働いてもらって、取り崩しのペースを遅らせる必要性が高まると言えます。

退職金の運用方法は?

それでは退職金はどのように運用すれば良いのでしょうか。それは次の3つのステップで考えていくと良いでしょう。

ステップ1:自分の投資可能額を知る
ステップ2:分散ポートフォリオを作る
ステップ3:道具(金融商品)を選ぶ

例として、退職金が2000万円の場合の運用方法を3ステップで考えてみましょう。

【ステップ1】投資可能額を知る

このステップが一番重要だと言っても過言ではありません。まずは投資に回せる限度額を知るために、向こう10年間の支出予定額を把握します。例えば、年金では不足して取り崩す金額が毎年120万円であればその10年分は1200万円であり、この金額は投資に回さずに「元本保証」のもの、つまり普通預金や定期預金などに預けて毎月10万円ずつそこから取り崩して支払っていきます。

この1200万円をよけた後に残る800万円については、最低10年間は手を付けずに使う予定のない資金であり、これが「投資可能額」になります。800万円の一部または全部を長期投資に回して運用していくことにより、マネー寿命を伸ばすことができるのです。

【ステップ2】分散ポートフォリオを作る

次に、投資可能額800万円を投資する場合のポートフォリオを作成します。このときに重要なのが「分散投資」です。<図表2>のように「株式」を持つなら「債券」も持つ。「日本」のものを持つなら「海外」のものも持つようにして、リスクを分散します。

<図表2>

出典:株式会社SMILELIFE projectのセミナー資料より抜粋

このように日本の株式と債券、海外の株式と債券に4等分したポートフォリオをもとに資産運用した場合の過去20年間の結果は以下のとおりです。

<図表3>

出典:株式会社SMILELIFE projectのセミナー資料より抜粋

平均リターン(利回り)が5.3%で計算すると、800万円は10年後には1340万円になります。その間、毎年の値動きが9.7%の幅で上振れしたり、下振れしたりする「リスク」があるということです。分散ポートフォリオの資産配分は、<図表3>のように必ずしも4等分にする必要はありません。各配分のパーセンテージを変えたり、株式や債券以外の資産、例えば、不動産などをまぜたりすることによってさらに分散効果を高めることもできます。

【ステップ3】道具(金融商品)を選ぶ

最後のステップは、【ステップ2】で作った分散ポートフォリオに当てはめる金融商品を選ぶことになります。「道具」としては、国内外の株式や債券のそれぞれに投資する「投資信託」が便利です。「投資信託」はネット証券であれば100円から購入でき、少額で手軽に始められます。

また、例えば「TOPIX(東証株価指数)連動型」のインデックスファンドを購入したならば、2000社を超える東証一部上場企業のすべての株式を保有する効果が得られるので、少額でも分散投資が可能です。ただし、注意すべきは手数料です。投資信託は「購入時」「保有時」「解約時」の主に三つの場面で手数料がかかります。

  • 購入時:買付手数料

高いものは3.3%であり、100万円購入すると3万3000円が最初に引かれて96万7000円からの運用スタートになります。証券会社や銀行の窓口では手数料がかかるものを勧められる場合が多いのに対し、ネット証券では無料(0%)が主流となっています。

  • 保有時:信託報酬

保有している間ずっと負担が続くので、長期投資をするうえではとてもインパクトの強い手数料です。最も注意を払うべきものになります。高いものは2%を超えるものもありますが、運用成果が5%得られたとしても2%の手数料を引かれたら手取りは3%になってしまいます。

  • 解約時:信託財産留保額

解約や売却する時にかかるものですが、無料(0%)のものが多く、かかっても1%未満のレベルです。念のために確認しましょう。

退職金運用プラン

 退職金が預金口座に入金されると、預け先の銀行などの金融機関から電話がかかってくるケースが多くあります。銀行等は、まとまった金額になるので預金にしておくのはもったいないからと、有利な「キャンペーン商品」をお勧めする目的で連絡をするのです。このときに注意したいのは、利益にばかり目を向けて判断しないことです。

よくある「退職金運用プラン」は、例えば半分を定期預金に預け、残りの半分を投資信託に預けるパッケージ商品です。キャンペーン商品ですので、定期預金の金利を3%という破格の設定にしていたりします。ただし、よく見るとその優遇金利は3か月間でそのあとは通常の金利(現在0.002%が一般的)に戻ります。

一方で、投資信託は商品ラインナップの中から自由に選べるのですが、よく見ると「買付手数料」や「信託報酬」が2%とか3%かかるものが中心になっていたりします。

2000万円でこのキャンペーン商品を購入すると、3か月間の「優遇金利」でもらえる利息が1000万円の3%の12か月分の3か月で7万5000円ですが、残りの1000万円の投資信託の買付手数料が2%かかるのであれば20万円引かれてしまうので、そもそも支払う手数料の方が多くなってしまいます。

もちろん、その後投資信託が調子よく増えていけば問題ないのですが、それはリスクを伴うものなので結果はわかりません。このように商品の中味をよく理解した上で判断する必要があるのです。

まとめ

退職金はリタイアメント生活を楽しく豊かに暮らすための大切な資金になります。一時に多額のお金が手元に入りますので、いろいろな提案が持ちかけられると思います。自分自身にとってベストな選択をするためにもしっかりとライフプランを作って、それに合う商品選びをしたいものです。商品販売をしない中立的なファイナンシャルプランナーは相談者の立場に立って最適なリタイアメントプラン作りをお手伝いします。 

●取材協力/藤原未来(ふじわらみき)

株式会社SMILELIFE project 代表取締役、1級ファイナンシャルプランニング技能士。2017年9月株式会社SMILELIFE projectを設立。100歳社会の到来を前提とした個人向けトータルライフプランニングサービス「LIFEBOOK®サービス」をスタート。米国モデルをベースとした最先端のFPノウハウとアドバイザートレーニングプログラムを用い、金融・保険商品を販売しないコンサルティングフィーに特化した独立フランチャイズアドバイザー制度を確立することにより、「日本人の新しい働き方、新しい生き方」をプロデュースすることを事業の目的とする。
問い合わせ先:03-6403-5390(株式会社SMILELIFE project)

株式会社SMILELIFE project(https://www.smilelife-project.com

●編集/京都メディアライン(HP:https://kyotomedialine.com FB

 

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