実母の心配をするのは悪い嫁なのか
旦那さまが渚さんのことを「鬼嫁」と言っていたのは社内だけではありませんでした。
「義母から、『嫁として夫を支える立場でしょう!』と怒られました。そのことをもちろん夫に言いましたが『鬼嫁は冗談』と笑うだけで真剣に取り合ってはくれなくて」
鬼嫁と影で呼ばれることが嫌で旦那さまに頼みごとをできなくなったそう。そんな中、渚さんの父親が病気で亡くなってしまいます。母親の落ち込みは酷く、渚さんはしばらくの間実家に帰りたいと旦那さまに訴えたと言います。
「当時、弟は海外で暮らしていて、母親を一人にしないほうがいいと思ったので帰省したかったんです。私の家と実家は電車で1時間ぐらいの距離なので何かあればすぐに今の家に戻れると思っていましたし。夫はいい顔はしませんでしたが、許してくれました。
でも、義母は『結婚したんだからこれまでの家のことは忘れて、この家の人間として生まれ変わりなさい』と反対してきたんです。父親が亡くなった状況でよくもそんなことが言えるなって思いました。私はどうしても母親のことが心配だったので、折れることなく実家に帰省しました」
そこから義両親とは冷戦状態が今も続いているとのこと。旦那さまは「一度謝れば母の気がすむから」と渚さんが折れることを望んでいるそうですが。
「なぜ謝らないといけないのかわからないので、そのままです。もう10年も。あれから一度も顔を合わせていないんですよ。お正月も私たち夫婦は別々の家に帰省して、子どもは年末からお正月にかけては義実家、その後は私の実家で過ごしています。子どもが物心がつく前からずっとその状態なので、子どもはそこまで違和感は持っていないみたいですね。
私は…、もうこのままでもいいと思っています。今は夫もこの関係に慣れて諦めてくれたみたいですし、私が望んでいたみたいに夫の家と私たち家族という完全に2つに分かれることができたんですから」
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。