
若き頃は、自分の生きる道、己のあるべき姿を思い描きながら、その目標を見失わないために格言、諺(ことわざ)、偉人たちが残した名言などを心に抱き、日々の生活を送っていたように思います。そうして半世紀以上を経て、己の人生を振り返った時、かつて思い描いてい姿とはかけ離れたものかもしれません。
しかし、人生折り返しと考えるならば、新たな「あるべき姿」を描き、生きることもできるようにも思います。そんな第二の人生のために、改めて座右の銘とする言葉を持つのはいかがでしょうか?
今回は、座右の銘にしたい言葉「迅速果断」(じんそくかだん) をご紹介します。
「迅速果断」の意味
「迅速果断」について、『日本国語大辞典』(小学館)では、「思い切りよく、すばやく物事を行なうこと。決断力があり敏速なこと。また、そのさま」とあります。「迅速」は物事の進み方が非常に速い様子、「果断」は決断力があり迷わず実行するさまを意味します。これらが合わさることで、単なるせっかちではなく、必要な情報を集めて最適な選択をする力強い態度が強調されます。
似たような言葉に「即断即決」(そくだんそっけつ)がありますが、少しニュアンスが異なります。「即断即決」が「その場ですぐ決めること」に重きを置くのに対し、「迅速果断」は決断したあとの行動力までを含んでいる点がポイントです。
これまでの経験があるからこそ、直感を信じて迷わず動く。そんな熟練の技としてのスピード感を表現できる言葉なのです。
「迅速果断」の由来
「迅速果断」という四字熟語は、中国の古典に由来するものではなく、日本で「迅速」と「果断」という二つの熟語を組み合わせて作られた言葉です。明治時代以降、日本が近代化を進める中で、西洋的な合理主義やスピード感が重視されるようになり、この「迅速果断」という言葉が、理想的なリーダー像や行動規範として広く使われるようになったといわれています。
経営者や政治家の座右の銘としても人気が高く、決断力とスピード感を併せ持つ人物像を象徴する言葉として、現代でも多くの方に愛されています。

「迅速果断」を座右の銘としてスピーチするなら
「迅速果断」を座右の銘としてスピーチする際には「独りよがりな強引さ」と誤解されないように気をつけましょう。「早く決めて勝手に動く」と捉えられると、「頑固な人」「協調性がない人」と思われてしまう危険性があります。
そうではなく、「限られた人生の時間を大切に使いたいからこそ、決断を早くする」「迷う時間を、行動する楽しさに変えたい」という、ポジティブで前向きなニュアンスを込めることが大切です。以下に「迅速果断」を取り入れたスピーチの例をあげます。
素早い決断の大切さを語るスピーチ例
私の座右の銘は「迅速果断」です。この言葉を選んだのは、60歳で定年を迎えたときの経験がきっかけでした。
当時、多くの同期が再雇用を選ぶ中、私は長年温めていた趣味のカメラを仕事にしようと決めました。周囲からは「安定を捨てるのか」「今さら新しいことを始めても」という声もありましたが、迷っている時間がもったいないと感じたのです。
もちろん不安はありました。でも、あと何年元気でいられるか分からない。やりたいことがあるなら、今やらなければと思い切りました。写真教室を開き、地域の風景を撮り続けて5年。今では生徒さんも20名を超え、作品展も開催しています。
人生100年時代といわれますが、だからこそ決断のスピードが大切だと実感しています。完璧な準備を待っていたら、何もできないまま時間だけが過ぎてしまいます。もちろん慎重さも必要ですが、長年の経験があるからこそ、私たちシニアには素早く決断する力があるはずです。
「迅速果断」、この言葉を胸に、これからも新しいことにチャレンジしていきたいと思っています。
最後に
「迅速果断」という言葉は、若い世代のビジネスパーソンだけのものではありません。むしろ、多くの選択を積み重ねてきたサライ世代だからこそ、その決断には重みと深み、そしてスピードが伴うのです。
迷うことも人生の醍醐味ですが、「迷ったら、動く」「心惹かれたら、すぐ始める」。そんな軽やかなスタンスで、これからの日々を過ごしてみてはいかがでしょうか。
●執筆/武田さゆり

国家資格キャリアコンサルタント。中学高校国語科教諭、学校図書館司書教諭。現役教員の傍ら、子どもたちが自分らしく生きるためのキャリア教育推進活動を行う。趣味はテニスと読書。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com











