夫は息子にかまうと「過保護だ」と不機嫌になった
綾子さんは東海地方に生まれ育ち、名門女子短大を出てから大手企業に事務職として勤務した。そこで3歳年上の夫と知り合い、25歳で結婚する。
「“デキちゃった婚”だったから恥ずかしかったですよ。結婚前に妊娠するという恥を夫は私になすりつけた。“私が悪いから、こんなことになった”って。水に流したつもりだったけど、いろいろ思い出してきますね。そういうスタートだから、息子は私のものだと思う意識は強くなりますよね」
実家が裕福だったために、実家の援助を受けながら息子を手塩にかけて育てた。
「ピアノ、水泳、英会話……母は夫の実家が大嫌いだったので、私が実家に帰って結婚生活の不満をこぼすと、5万円、10万円とくれたんです。だから幼い時の息子には、銀座や神戸の子供服専門店から、当時誰も着ていなかった海外の子供服を取り寄せて着せていましたよ。革靴にブレザーでお出かけしたりね。顔もかわいいから、みんな振り返っていた。あの時は、親の援助を“あたりまえ”だと思っていたけれど、自分が大人になった子供を養う立場になると、ありがたみが沁みます」
息子にかまいっきりになる綾子さんを見ては、夫は「過保護だ」と不機嫌を隠さなかった。
「夫は何か言うとすぐに否定する。“疲れた”と“くだらない”しか言わない。しかも元部下の女性とずっと浮気をしていたんですよ。こっちも黙ってられないから、“いいわね、あなたにはいい人がいて”など口に出てしまう。そのたびにテーブルをドンと叩いたり、ドアをバンと閉めたりする。息子が12歳のときに、夫は初めて私に暴力を振るった。そのときに、息子は怖かったはずなのに“お父さん! お母さんを叩かないで!”と泣きながら止めに入ってくれたんです」
【夫は浮気相手のアパートに入りびたり、3年間家族と口を利かなかった……後編に続きます】
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』 『不倫女子のリアル』(ともに小学館新書)がある。連載に、 教育雑誌『みんなの教育技術』(小学館)、Webサイト『現代ビジネス』(講談社)、『Domani.jp』(小学館)などがある。『女性セブン』(小学館)、『週刊朝日』(朝日新聞出版)などに寄稿している。