数年前から「脳トレ」や「脳年齢」という言葉が広まり、多くの人が自分の脳の力について意識するようになりました。それと同時に、自らの脳を積極的に鍛え、何歳になっても心身ともにハツラツとしていたいと考える高齢者が増えてきています。
いまや認知症は、恐れたり、問題として扱ったりするものではなく、それぞれが日常的に、かつ楽しく予防しようとするようなものへ変化してきているのです。同年代の仲間との会話や、楽しく気軽にできる運動を通して、認知症への不安を明るく解消していきましょう。
この記事では、日常生活にも取り入れることができる認知症予防トレーニングを、アクティブシニアのライフサポートを行う株式会社ユメコム代表の橋本珠美がご紹介します。
目次
認知症とは
認知症予防トレーニング
生活に取り入れる認知法予防法
運動習慣
食事に気をつける
社会的な活動に参加する
まとめ
認知症とは
認知症は、物忘れや認知機能の低下が起こり、日常生活に支障をきたしている状態のことをいいます。物忘れや認知機能の低下は、いろいろな原因で細胞が死んでしまったり、働きが悪くなることで様々な障害が起こります。
認知症予防トレーニング
元気なうちからできる、認知症予防トレーニングをご紹介していきましょう。
健康体操で認知症予防
まずは、椅子と壁があればどこでもできる認知症予防体操。今日から気軽に始められる動きばかりです。広くて安全な場所で、ゆっくりとチャレンジしてみてください。
(1)グーパー頭の体操
左右の手でグーパーを作り、胸の前に突き出したまま交互に入れかえます。簡単そうに見えて意外と難しい動きです。
(2)体に優しい歩き方
日常生活で歩く機会は多いもの。体に優しい歩き方を心掛けましょう。足は伸ばしきらずに、軽く足を曲げた状態で着地するのがおすすめです。歩く際に下記のポイントを意識してみてください。
・余裕のある歩幅で
・足に骨盤・背骨・頭をのせるイメージをして歩く
・踵から足裏へ柔らかく着地する
・つま先と膝を進行方向へ向ける
・肩を下げて胸を開く
(3)ウォーキングの前後に足のマッサージ
歩いた後には、足のマッサージを行います。足首の曲げ伸ばしと土踏まずの指圧をします。リラックスした気持ちで行いましょう。
(4)筋力トレーニングとストレッチ
ご自身の体力に合わせて、筋力トレーニングとストレッチも行っていきましょう。目安は、各10~20回を2、3セット、これを週1~3回行います。
つま先立ちをすることで、ふくらはぎが鍛えられます。
壁に手をつき、ふくらはぎを伸ばします。
椅子に座り、脚を体の方に引きつけます。
両手を上へ、ピンと背筋を伸ばしながら行うのがポイントです。(10~20秒)
スクワット。最初は無理のない回数でスタート。
椅子に座り、太ももの前を伸ばします。(10~20秒)
(5)スキマ時間にできる簡単な体操
指を使った体操をご紹介します。場所を選ばないので、ちょっとしたスキマ時間にできる体操です。
・左手の親指は曲げた状態で、右手は5本とも指を伸ばした状態でスタートします
・ 1~10までカウントしながら、左右の手の指を1 本ずつ順番に曲げていってください。親指から小指まで曲げたら、次は開いていきながら10までカウントします。
10までカウントしたときに、右手と左手は、最初の状態(左手の親指を曲げ、右手は5 本とも指を伸ばした状態)にきちんと戻っていますか? 意外と難しいのですが、できなくても落ち込まないでください。簡単にできてしまうものよりも、できないことをやろうとする方が、脳の血流が活発になり、脳とってはむしろ良いのです。
生活に取り入れる認知症予防法
認知症予防として、日常生活の中でいくつかポイントがあるといわれています。認知症予防をうまく生活に取り入れると、万が一認知症になっても、症状の進行が緩やかになり、生活の質を保つといわれています。
日常生活で取り入れる予防法を、運動・食事・社会的活動面から詳しくご紹介していきます。
運動習慣
認知症予防のために、運動をする習慣をつけましょう。週に2回~3回以上、30分以上の運動がおすすめです。前述の健康体操も良いですね。
≪ポイント≫
●頻度 ▶週に2回~3回以上、30 分以上の運動
●おすすめの運動 ▶ウォーキング
歩くことが難しい場合は、椅子に座ったままできる運動や、ベッドに寝ながらでもできる運動もあります。
≪運動と認知トレーニングを組み合わせた「コグニサイズ」とは≫
国立長寿医療研究センターは、認知症ではないが正常ともいえない状態の段階で、運動と認知トレーニングを組み合わせた「コグニサイズ」の実施が、認知機能の低下を抑制することを明らかにしています。
「コグニサイズ」では、「4 の倍数で手をたたく」「しりとりをしながら運動する」など頭と体を同時に使うトレーニングが取り入れられています。国立長寿医療研究センターが開発した運動と認知課題(計算、しりとりなど)のトレーニングを組み合わせた「コグニサイズ」のパンフレット(PDF)はホームページから入手できます。
食事に気をつける
日頃の食生活を見直すことで、認知症予防も期待できます。生活習慣病(高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満など)の改善と食事からの老化予防をすることにより、認知症予防になりますよ。
生活習慣病予防のための食事が認知症予防にも
食生活において、下記のポイントを心掛けてみてください。
・バランスの良い食事
・摂取カロリーを守る
・塩分を控える
・間食、糖分を控える
認知症予防に効果があるといわれる食べ物
認知症予防に良いといわれる成分と、その成分が含まれる食物や料理をみていきましょう。
〇魚
青魚:サンマ、アジ、イワシ、サバなど
※オメガ3脂肪酸のDHA やEPA が多く含まれている
〇緑黄色野菜・豆類・果実類
野菜:ほうれん草、小松菜、菜の花
豆類:納豆、枝豆、空豆
果実:いちご、キウイ、オレンジ
※葉酸(ようさん)が多く含まれている
〇カレー
※ウコンが多く含まれている
〇コーヒー
※クロロゲン酸が多く含まれている
〇緑茶
※テアニンが多く含まれている
〇赤ワイン
※ポリフェノールが多く含まれている
自分で調理することが認知症予防に
自分で調理することも認知症予防としてオススメです。やる気や自信を呼び覚まし、生活の質(QOL)の向上に繋がります。
調理は何を作るか、材料はどうやって切るか、などの複数の作業を同時に行うので、特に頭を使います。認知症予防にも効果が期待されていますよ。
社会的な活動に参加する
日本全国の高齢者を対象とした調査研究によると、ボランティア団体や町内会・自治会などへの活動割合が高い地域ほど、認知症リスク者が低いといった結果が出ていることをご存知ですか?
社会参加と介護予防には、強い相関関係があることが証明されつつあります。健康を維持・増進するために重要なこととして「社会参加」に注目が集まっているのです。
ボランティア参加事例
今、生活の中で身近になったポイント制度。ボランティア活動にポイント付与を取り入れている自治体をご紹介します。
〇神奈川県横浜市の場合
高齢者が自らの介護予防のためにボランティア活動を行った際にポイントが得られ、現金に還元できる仕組み。一般的には年間5,000 円程度を上限として付与(商品で還元される場合も)。
〇千葉県松戸市の場合
要介護(支援)認定を受けた人も参加者として募集。市内の特別養護老人ホームなどで活動。実績に応じてポイントが付与される。
*厚生労働省「介護ボランティア活動への地域支援事業交付金の活用について」に基づく事業
高齢者の集い・高齢者サロン
高齢者サロンは高齢者であれば誰でも参加でき、様々な活動をすることができます。老後に新たな趣味を見つけるきっかけになるかもしれません。
≪高齢者サロンの活動内容≫
茶話会、体操、工芸品などの技術の伝承、作品作りなどの手作業、レクリエーションやゲーム、将棋や囲碁、園芸、会食、料理、ボランティア講師による各種教室、カラオケ、野外活動等
まとめ
認知症予防のためのトレーニングをはじめ、日常生活に取り入れられる認知症予防法をご紹介しました。少しずつ取り入れることで、自分自身の自信にも繋がっていきます。まずは、取り組みやすいものから始めてみてはいかがでしょうか。
●構成・編集/内藤 知夏(京都メディアライン・http://kyotomedialine.com)
●取材協力/橋本 珠美(はしもと たまみ)
2001年4月、株式会社ユメコムを起ち上げ、介護・福祉の法人マーケットを中心に、誰もが高齢社会を安心して過ごすためのコンサルティングを始める。
また「高齢者と高齢者を抱える現役世代」のための相談窓口「シニアサポートデスク」「ワーク&ケアヘルプライン」を運営し、高齢者やそのご家族の幅広いお悩み(介護・相続・すまいなど)にお応えしている。
相談窓口の事例と自身の経験(ダブルケア)を取り入れたセミナー活動は好評を得ている。
株式会社ユメコム(https://www.yumecom.com)