55歳のとき「おれは男としてこのまま終わるんだ」と思った
酔いが回った頃、筆者が「写真を見せてくださいよ」と言うと、はにかみながらスマホの画面を差し出した。都内の有名なステーキレストランで撮影されたもので、黒髪をまとめ、目がパッチリとした色白の女性が少し驚いたような表情で映っていた。
ノースリーブの黒いレースのドレスとむっちりした二の腕、そして強調された胸の谷間がなまめかしい。頬がふっくらしており、中学校2年生の息子がいるとは思えないほど女っぽい。
「この年になると、若い女の子もかわいいんだけれど、違う生き物みたいじゃない。接待でそういうお店に行くこともあったんだけれど、男女の関係という感じにはならないよね。それに万一、向こうから来たとしても、金目当てとしか思えない。俺のゴルフ仲間の中には、出会い系アプリに手を出している人もいるけど、空しくなるんじゃないかなと思う。負け惜しみかもしれないけどね」
そんな嶋田さんも55歳のときに「おれは男としてこのまま終わるんだ」と思ったそう。
「体が言うことを利かなくなるし、サプリメントや薬などで無理するのはみっともない。振り返れば上等な人生だったと思うよ。いい女房、2人の息子がいて、お金にも困らず、都内にマンションを買い、ローンも完済した。元銀行勤務の女房が、財テクをやってくれているから老後のお金も心配していない。俺はいびきがうるさいから女房とはもう30年くらい寝室は別だけど、“パパ、今度一緒に香港行こうよ”など誘ってくれるし、不足はないと思っていた」
その時、嶋田さんに沸き上がってきたのは「誰から強烈に片思いされてみたい」という願望だった。
「18歳で初めての彼女ができて、2~3人のガールフレンドと付き合って、27歳の時に女房と結婚。それから3~4人の女の子と遊んだけれど、どの子も1~2回デートして終わり。あんなのスポーツみたいなもんだよね。結婚してから、会社と仕事関連の女の子には絶対に手を出さなかった。商社って不倫が多く、それで足を引っ張られている人を散々見ていたから。ふと過去を振り返ると、強烈に片思いされた経験がないって気が付いたんだよね。“誰でもいいから俺のことを好きになってくれ”という感じになっていたんだよね」
55歳の時に再会した女性と、年に2回程度のデートを経て……
【~その2~に続きます】
取材・文/沢木文
1976年東京都足立区生まれ。大学在学中よりファッション雑誌の編集に携わる。恋愛、結婚、出産などをテーマとした記事を担当。著書に『貧困女子のリアル』『不倫女子のリアル』(小学館新書)がある。