取材・文/沢木文
仕事、そして男としての引退を意識する“アラウンド還暦”の男性。本連載では、『不倫女子のリアル』(小学館新書)などの著書がある沢木文が、妻も子供もいる彼らの、秘めた恋を紹介する。
「女子大生と恋がしたかった」大手家電メーカーの元社員
今回、お話を伺ったのは小野健一さん(仮名・71歳)。名門私立大学法学部卒業後、大手の家電メーカーに勤務し、60歳で定年退職した。それから友人と一緒に不動産関係のコンサルティングを行う会社を立ち上げ、同世代の遺産相続問題や事業継承問題のサポートをしている。
中肉中背、がっしりした体型、柔和な顔立ち、人当たりはいいのだが、鋭い発言と眼光が印象に残る。いつもサイズが合ったブルー系のシャツにジャケットを着ており、清潔なハンカチを持っている。小野さんの奥さんは、どこか少女の面影が残るほがらかな美人だ。きっと彼女が身の回りの世話をしているから、小野さんは好感度が高いルックスを維持できているのだろう。
「俺は遊んでいる方だと思うよ。30歳で結婚し、80歳で死ぬまでの50年間、女房1人だけってことはありえないだろう。これはどこかの俳優も言っていたよね」
そこそこ自由になるお金があり、女性の話を聞くのが上手な小野さんはモテる。その理由は、この世代の男性にしては、女性を見下している発言をしないからだろう。団塊の世代が育った時代の風潮を言葉にすると「女子供なんて」「俺達が社会を作ってきた」「黙って俺についてこい」などだろう。
小野さんは相手の話を最後まで聞き、相手の意見を肯定する。筆者はワインパーティーで小野さんと知り合ったのだが、会場のエレベーターで、相手を先に乗せ自分は最後に降りたところに非常に驚いた。それも相手にそのことを悟らせていないのだ。その理由を聞くと「姉が3人いて、女性を尊重しないと怒られていたからだろうね」と笑顔で語っていた。
【人生の折り返しで足を踏み入れてしまった禁断の道。次ページに続きます】