取材・文/沢木文

【最後の恋】~その1~妻との死別と“後妻業の女”の罠……愛妻家が選んだ最後の恋の相手は?

仕事、そして男としての引退を意識する“アラウンド還暦”の男性。本連載では、『不倫女子のリアル』(小学館新書)などの著書がある沢木文が、妻も子供もいる彼らの、秘めた恋を紹介する。

今回、お話を伺ったのは松木航太さん(仮名・63歳)。東京都世田谷区で生まれ育ち、都内の中堅私立大学経済学部に進学。卒業後は、中堅商社に勤務し、食品関連の業務に携わってきた。組織で働くことが向いていないと知っていたので、松木さんは40代半ばから、飲食店のコンサル会社を妻とともに起業。会社は60歳で定年退職したものの、自分の会社は続けていた。

2年前に妻は乳がんで命を落としてしまった

「起業してから約15年間、妻は管理栄養士の資格を持っていたので、平日は妻が、土日は夫婦で仕事を二人三脚で回してきました。でも無理がたたったのでしょうね。2年前に妻は乳がんで命を落としてしまったのです」

発見したときは、全身に転移していて、もうダメだと言われた。あの時の絶望感は、今でも忘れられない。

「理想的な夫婦だったんですよ。都立高校在学時から付き合い始めて、そのままずっと一緒でした。一時期別れたこともあったのですが、25歳で結婚。なかなか子供ができなかったことが苦労と言えば苦労でした。ともに支え合い、けんかをすることもなく、一緒にいると心から安心できる。浮気なんてしたこともないし、考えたこともなかった。妻と結婚できたことは、私の人生最大の喜びだと思っています」

しかし、妻はたった61歳であの世へ旅立ってしまう。

「私が妻にべったりだったから、妻はストレスを溜めていたのかな……とも思います。亡くなる4年前に、一度、妻が友達のフラダンスの発表会に行くというので『俺も一緒に……』と言いかけたら、『あなた、私の事情もあるのよ』とやんわりと断られたことがありました。そういうことが重なって、病気になっちゃったのかな。私が定年になったから、ずっと行きたかったスペインやロシアを旅行しようと言っていたのに……」

妻が亡くなってから数日間の記憶がないという。

【家の中のすべてが、彼女が、この世にいないことを伝えている。次ページに続きます】

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