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取材・文/坂口鈴香

親の終の棲家をどう選ぶ?|「自分を生かすために、一人ひとりふさわしい道がある」老人ホームの施設長はシスター【2】

yuzitanさんによる写真ACからの写真

親の終の棲家のひとつ、「養護老人ホーム」で施設長を務める鶴田康代さん(仮名・57)は、ある修道会に所属するシスターでもある。この修道会は地域に密着した奉仕活動を行っており、鶴田さんの勤める養護老人ホームも修道会が運営を委託されている。

【1】はこちら】

■助けてもらいながら「施設長になっていく」

シスターとなって25年という鶴田さん、老人ホーム以外の仕事もしてきたのだろうか。

「私は修道会に入ったあと、福祉の仕事をするようになりました。修道会の運営する事業所のどこに配属されるかは、最終的には会の決定によります。私の場合、入会当時は何の資格も持っていませんでしたが、保育所よりはお年寄り相手の方が合っていると思い、上長に希望を伝え、ずっと老人ホームで働いてきました。

その間、介護福祉士などの資格を取り、3か所目となる現在のホームで働いてもう20年近くになります。最初は介護の現場に入り、生活相談員、事務職員を経て、前施設長のあとを任されました。すべての施設長は修道会から任命されます。

私自身の任命については、ふさわしいから選ばれたとはさらさら思っていません。足りないところはほかの人に助けてもらいながら日々を過ごすなかで『施設長になっていく』のだと思います。ちょっとかっこいい言い方でしたね。

人には自分を生かすために、一人ひとりふさわしい道があるのだと思います。私にとっては、それがこの道だったと――。今は管理職となり、職責による苦労もありますが、それも含めて受け入れていきたいと思っています」

■働くことによって神に仕え、人に仕える

鶴田さんは老人ホームでの仕事を「純粋な奉仕活動というわけにはいかない」とはいうものの、私たちが考える“労働”の概念ともまた違うようだ。

「私たちにとって働く場は『宣教の場』でもあります。私たちの活動を通じて、ご利用者やそのご家族、職場で働く一般の職員のみなさん、また日々何らかの形で出会う人たちに、何かを感じ取っていただければと思っています。

『宣教の場』とはどういうことか? たとえばカトリック信者ではなかった入所者さんが、改宗してカトリックの洗礼を受けることになれば、それはうれしいことですが、そういう意味での宣教ではなく、修道者である私たちの存在が、まわりの人たちにとって何かヒントを与えるものであればいいなと思っています」

鶴田さんは、「仕事」ではなく、「奉仕」という言葉を使う。

「そうですね。私たちは『仕事』ではなく『奉仕』すると言いますね。お金を稼ぐために仕事をするのではなく、働くことによって神に仕える。それは同時に人に仕えることでもあります。どんな人でも、この私と同じように神さまによってつくられ、神さまから愛されている存在なのだと受け入れることができれば心は平和でしょう。現実にはそううまくいきませんが。

それに目の前の困っている人たちのために、無償で『奉仕』していた先輩たちの時代とは大きく違ってきています。

どのような会社も、決算の時期は大変なのだろうと思います。ご存じかどうかわかりませんが、2年前に社会福祉法人制度改革というのがありました。法人の財務状況などをネットで公表するための作業が加わり、そういうことに疎いものにとってはより大変になりました。

また一般の職員を雇っている以上、それなりに利益を出すことも必要です。仕事の内容は、シスターも普通の職員と変わりありません。私などは、立場上労務管理的なことをしなければならないのは、正直なところ苦になります」

■祈りを活動の源泉にする

“仕事”である宣教や奉仕の場と、宗教活動とはどのようなバランスで行っているのだろうか。

「修道院の生活ですが、朝と晩は共同体のシスターたちと一緒にお祈りします。ほぼ毎朝ミサに行くので、5時前には起きています。昼間はおのおの仕事があり、帰ってからは夕食、お祈りと続くのであまり時間はありませんね。テレビも少しは見ますよ。

修道会にもいろいろあって、基本的に修道院の敷地内だけで生活、つまり祈りと労働をするところもあれば、私たちのように世の中で活動する会もあります。共通しているのは、祈りを活動の源泉にするということです」

 

取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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