文・石川真禧照(自動車生活探険家)

車の「乗り心地」はいいに越したことはない。しかし、車にも“お国柄”がある。車が生まれ育った国の道路事情が色濃く反映されるのだ。今回の素敵なフランス車は、日本のお国柄にも見事に対応している。

山型のシトロエンマークを生かした“顔”。ライトの形状も上下に並べ、特徴がある。ナンバー下の黒い四角にはレーダーが入る。

仕事柄、車に関しての質問や相談を受けることがある。なかでも多いのは、購入に関してのこと。どのような車に乗ったらよいのか、この車はどうなのか、などだ。そのときに答えるのは、車を所有するということはその車と生活すること。例えばフランス車に乗るということはフランス人が家に来て、同居することと同じだと考えてほしい。当然、気になることや考え方の違いもある。それと、どうつき合っていくかが大切だ、と。

シトロエンの新型車「C4」に乗り、久し振りに素敵なフランス車に出会った気がした。フランス車が以前から特徴としていた乗り心地の良さという個性が充分に感じられる。乗り心地に関しては作り手だけでなく、お国柄の特徴もある。それは車が生まれ育った国の道路事情によるところが大きい。

フランス車の凹凸対応力

全高は1530mmで立体駐車場にも対応している。最低地上高も170mm確保されている。

例えばドイツ車は、アウトバーンという無料の高速道路のほかに一般の国道でも時速100kmでも走ることができる環境が揃っている。路面の舗装状態もよい。だから日本のように舗装路でも継ぎ目が多く、修復跡の多い道では細かい振動が伝わってくる。

ハンドルは丸型ではなく、運転者の乗り降りのことを配慮し、下のほうが変形している。
最新のAT用シフトレバー(中央)は、“ツマミ”のように小さな形状のものが多い。

フランス車の乗り心地の良さは道路の環境が主な要因だ。最近は少なくなったが郊外の道は両側に並木が続いている。これが大木になると根が路面を突き上げる。当然、路面はうねってくる。そこを走る車は硬いサスペンションではハネてしまい、乗り心地が悪くなるし、直進するのもむずかしくなる。だからフランス車は路面の凹凸に対してしなやかに対応し、そのような状況でも直進性に秀でる工夫がされている。

前席はクッションが体を包むようで、長距離の運転でも疲れが少ない。
後席は足元も広く、クッションも快適。背もたれは可倒式。
床面の板は上下2段に変えられる。写真は上段の状態。後席の背もたれは6対4で分割可倒でき、肘かけのみでも倒せる。

高級車をも凌ぐ操縦安定性。衝撃吸収装置が見事な働き

屋根から車体後部までゆるやかに流れる曲面は、’70年代のシトロエンの名車から受け継がれている形状。後方の視界も良い。

シトロエンは1919年の創業以来、常に革新的な車づくりで人々を楽しませてきた。日本での歴史も古く、1954年(昭和29)には輸入済みの記録が残っている。以来、熱心なファンに支えられてきた。

最近のシトロエンは電動化の波に見事にのり、次々と高性能な小型の電気自動車を日本にも上陸させている。ディーゼル車やガソリン車も車種を増やしている。それどころか全長5mクラスの大型高級車も発売するなど、長年のファンを喜ばせている。

C4も、今回紹介するのはディーゼル車だが、ガソリン車や電気自動車も用意。電気自動車も試してみたが満充電での航続距離も400km以上と充分。そして、乗り心地の良さと操縦安定性の高さは上のクラスの高級車をも凌ぐ。シトロエンが独自に開発した衝撃吸収装置の働きが見事なのだ。

室内にはiPad(ア イパッド)を据え置く台などユニークな装備もいくつかある。最初は戸惑うこともあるかもしれない。でもそこは、はじめてフランス人と暮らし、ABC(ア・ベ・セ)を覚える気持ちで接すると、楽しい車生活がはじまると思う。

助手席の前には引き出し型のテーブルやiPad(ア イパッド)が置ける台があるが、日本の製品に合わない。
C4はディーゼル車のほかに、130PS、23.5kg-mのガソリン車と、50kWh、136PS、26..5kg-mの電気自動車が選べる。

シトロエン/C4 SHINE Blue HDi
全長×全幅×全高:4375×1800×1530mm
ホイールベース:2665mm
車両重量:1380kg
エンジン:直列4気筒DOHC ディーゼルターボ
最高出力:130PS/3750rpm
最大トルク:30.6kg-m/1750rpm
駆動方式:前輪駆動
燃料消費率:22.6㎞/L(WLTCモード)
使用燃料:軽油 50L
ミッション形式:8速自動変速
サスペンション:前・ストラット式 後・トーションビーム式
ブレーキ形式:前・ベンチレーテッドディスク 後・ディスク
乗車定員:5名
車両価格:356万4000円(6月1日より)
問い合わせ先:シトロエンコール 電話:0120・55・4106

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦

※この記事は『サライ』本誌2022年6月号より転載しました。

 

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