文・石川真禧照(自動車生活探険家)

既存の人気車種の良い面を生かしつつ、派生車種を生み出す。日産が得意とする開発、販売戦略のひとつに、また先行きが楽しみな車種が加わった。ヘッドレストに組み込まれた「贅沢な音響設備」にも注目したい。

折り目のハッキリした車体側面だが、なかでも後輪上の張り出しは特徴的。ツートーン塗り分けを含め、車体色も14パターンから選べる。

若い頃から車に興味のあった人なら日産が「ローレル・スピリット」や「ブルーバード・シルフィ」という車を販売していたことを知っているだろう。日産は以前から、既存の人気車種の名前を利用して、派生車種をつくるのが得意だった。しかもその派生車種の人気は高く、やがて独立した車種になることもあった。

「ノート・オーラ」は、まさに「ノート」を原型にした派生車種。元になったノートは日産の小型車のなかでも販売台数が多い人気車。その理由は使い勝手の良い大きさに加え、日産独自のモーターを使った車づくりの先進性技術の高さ、経済性などだ。しかし、大衆車として設計、開発された車は、確かに日常の足としては、何の気遣いもなく使えるのだが、中・大型車から乗り替えてきた人たちには物足りなさを感じるのも事実だ。

「上級車」の新たな可能性

全長は約4mと短いので、街中での取り回しもしやすい。最低地上高はノートより高い。

内装材の質感やスイッチの触感などにはじまり、中・大型車では味わえたものが少ない。取り扱いやすい小型車に乗り替える良さはあるが、上質さに欠けているのだ。

小型車イコール大衆車という図式が国産車には定着している。

そこで日産が考えたのは「小さな上級車」。高級車ほどお金をかける車づくりは、販売戦略上もむずかしい。しかし、上級車なら可能性はある。こうしてノート・オーラの開発がはじまった。基本的な骨格はノートと同じだが、走行安定性を増すために前後輪のタイヤの左右幅を広くしている。そのために車体の幅もわずかに広くした。外観の違いはあまり多くない。変更は乗る人が常に接する室内の素材や装備、走行面に関してだ。

基本的な計器類や画面の配置はノートと同じだが、内装素材などは高級になっている。
最新のATシフトレバーは、小型化し、スイッチ化している。
前席の座面の高さ調節は手動式。前方、斜め後方の視界も良い。
後席の着座位置はやや高めだが身長170cmまでなら快適に座れる。
車体後部の荷室は左右幅1m以上。ゴルフバッグも1セットは入る。床下には高さ10cmの荷室が備わる。

ヘッドレストにスピーカー。贅沢な音響設備で音に広がり

窓と屋根に一体感を持たせた色の塗り分けがおしゃれ。赤/黒のほかに青/黒、白/黒、薄紫/黒、黒/茶の組み合わせなども。

ドアを開け、運転席に座るとまず座席の座り心地がノートとは違う。ツイードと合皮を合わせた座席は座り心地がしっとりとして、体が包まれる感触。座席表皮の色も黒だけでなく、灰色、茶色が用意されている。その色に合わせて背もたれやヘッドレストはやや濃いめの黒、灰色、茶色の合皮が組み合わされ、シックな印象だ。

実は発売前に日産のテストコースでも試乗したのだが、そのとき会場で紹介されたのがヘッドレストに組み込まれたスピーカー。音の広がりというのはこういうことか、というのがこのスピーカーでわかった。車にこんなに贅沢な音響設備が装着されているとは。これも小さな上級車のための装備のひとつ。

これがヘッドレストに装着されたボーズ製のスピーカー。音の広がりも調節でき、耳に心地よい。

日産は走行用のモーターを動かす電気を車載のエンジンを動かすことで得ている。充電設備や充電時間で不便を感じている人にこのモーター充電方式は有り難い。先進技術を体感したい人の入門車といえる。

国産の中・大型車からの乗り替えだけでなく、輸入車からの乗り替えも予想以上に多いという。上級感覚の小さな新型車は一度、味わってみる価値はある。

日産が開発、実用化したe-POWERは、ガソリンエンジンが電力をバッテリーに供給し、モーターの力で走行する。

日産/ノート・オーラ G
全長×全幅×全高:4045×1735×1525mm
ホイールベース:2580mm
車両重量:1260kg
エンジン、モーター:直列3気筒DOHC 1198㏄、交流同期
最高出力:82PS/6000rpm・136PS
最大トルク:10.5kg-m/4800rpm:30.6kg-m
駆動方式:前輪駆動
燃料消費率:27.2km/L(WLTCモード)
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン 36L
ミッション形式:電気式無段
サスペンション:前・ストラット式、後・トーションビーム式
ブレーキ形式:前・ベンチレーテッドディスク、後・ドラム式
乗車定員:5名
車両価格:261万300円
問い合わせ先:お客様相談室 0120・315・232

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦

※この記事は『サライ』本誌2022年1月号より転載しました。

 

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