文・石川真禧照(自動車生活探険家)

EVの実用化がかなり進んだ欧州では、日本でも人気の各自動車メーカーがEVに特化した車づくりに舵を切っている。最古参のメルセデスのEVも、あらゆる面でガソリン車に負けず劣らずの実力になってきた。

撮影のため房総半島の山間部を往復したが充電量は56%残、214km走行可能だった。車体正面のグリルは全面パネル張りがEVの特徴。

温暖化ガスの大幅な削減は今や待ったなしの状況だ。現在、世界中で使われている自動車はガソリンエンジンで走行するものが多く、CO2(二酸化炭素)を排出することから早期に代替案が必要になっている。現時点で有望視されているのが、電気+モーターで走行するEV(電気自動車)だ。少なくとも走行中にCO2を排出しないことから世界中の自動車メーカーだけでなく他業種からもEVは注目されている。

日本でも自動車メーカーに加え、SONYのような他業種から新しいEVが次々と発表されている。一方、CO2削減に熱心な欧州ではEVの実用化はかなり進んでいる。中にはアウディ、ジャガー、ボルボのようにEVしか生産しない自動車メーカーも出てきている。そして、最古のガソリン自動車メーカーであるメルセデス・ベンツも、2030年には発売する新車をすべてEVにすると発表した。

室内の計器類の配置は既存のメルセデスの乗用車と同じ。着座位置も高めで視界は良い。
「前席の着座位置はやや高めで視界は良く、死角は少ない。
後席は低めの着座で身長170㎝までOK。脚も伸ばせる。
後席の背もたれは分割して前倒しも可。荷室右側の袋は充電用器具。

2Lターボ並みの馬力

国産の小型SUVとほぼ同じ大きさで扱いやすい。最低地上高も210mmを確保している。

EQAは同社が発売するEVで2番目に登場した車。車体寸法、価格など国産車にも近いEVの実力と使い勝手を確かめてみた。

EQAはいま流行のSUV(多目的スポーツ車)の形をしている。その車体は全長、全幅、全高ともにトヨタが昨年9月に発売した「カローラクロス」とほぼ同じ。EQAはエンジンの代わりにモーターを搭載し、ガソリンタンクの代わりにリチウムイオン電池を床下に敷きつめるように並べている。モーターの馬力は190PS、トルクは37.7kg-mなので2Lガソリンターボ並みの馬力と2.5Lガソリンエンジンのトルクを発生している。

航続可能距離は400km超に。回生ブレーキで減速中の充電も

当然だがバンパー下に排気管はない。左右のライトがつながるデザインは世界的流行。充電口は右後方の側面と背面に2か所ある。

EQAと数日間、過ごしてみた。走行距離はすでに7000kmを超える撮影兼試乗車だ。電池の充電量は100%、航続可能距離は408kmと表示されている。カタログ上の同距離(一充電走行距離)は410km(WLTCモード)なので、ほぼカタログ値の性能を保っている。ハンドル付近の変速レバーをDレンジに選択する。スタートは音もなく、加速するのがEVの特徴のひとつ。エアコンをかける。その瞬間に計器内に表示されている航続可能距離が20km短く表示された。走行以外でも電気を使うと同距離は短くなる。

ハンドルの奥にあるシルバーの「パドルレバー」は変速シフトではなく回生モードの調節用。
センターコンソール上に「タッチパッド」が配置され、カーナビなどの操作が可能。
車両の充電状態は常に、運転者の前にある液晶画面に表示される。

ハンドルに付いている「パドルレバー」は走行中に充電する量を調節するのに使う。5段階のシフトでもっとも充電できるレベルにすると、アクセルペダルを離した状態で回生ブレーキが作動し、停止寸前まで減速。同時に充電も行なう。充電に関しては1年間無料のカードが付いているので出先での急速充電も可能だが、先客が充電していると最低30分は待たなければならない。EVは充電設備の充実が課題。車両は既存の自動車メーカーの製品なら先進安全装備も品質もガソリン車と同じなので安心して乗ることができる。

車体前部にはモーターのほかに充電用の機器などが収められている。

メルセデス・ベンツ/EQA250
全長×全幅×全高:4465×1850×1625㎜
ホイールベース:2730㎜
車両重量:2030kg
モーター:交流誘導電動機1基
最高出力:190PS/3600〜10300rpm
最大トルク:37.7kg-m/1020rpm
駆動方式:前輪駆動
一充電走行距離:410km/L(WLTCモード)
動力用主電池:リチウムイオンバッテリー/66.5kWh
ミッション形式:電気式無段
サスペンション:前:ストラット式 後:マルチリンク式
ブレーキ形式前:ベンチレーテッドディスク 後:ディスク
乗車定員:5名
車両本体価格:640万円
問い合わせ先メルセデスコール 0120・656・256

文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦

※この記事は『サライ』本誌2022年4月号より転載しました。

 

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