■インク補充は用途次第で、カートリッジかコンバーターを

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左側がカートリッジ、右側がコンバーター。 上段から、パイロット、プラチナ、セーラー。日本の場合、各社間で互換性はない。

各メーカーに取材をして興味深かったのは、異口同音に「万年筆の使い方を知らない人が増えた」ということでした。よくあるクレームが、「買ってきたばかりなのに書けない」というもの。

たしかに万年筆はボールペンのように軸を立てると、ペン先の弾力がうまく紙面に伝わらず、書きにくくなります。しかし、よくよく聞いてみると、買ったままの状態、つまりカートリッジインクを付けないまま書き始め、「なぜ、インクが出ないのか?」と問い合わせてくる場合が多いとか。購入後すぐに書けるボールペンの感覚なのでしょう。

わかりきったことですが、万年筆本体だけではインクは出てきません。カートリッジインクか、コンバーターを付けてインクを補充して、はじめて文字が書けるようになります。いまや40歳代以下は万年筆の構造を知らない世代ともいえ、使い方から説明しなければならない時代になったといいます。

逆にいえば、若い層には万年筆がたいへん新鮮な筆記具であり、ここで紹介した3タイプは大人気商品となっています。

さて、カートリッジとコンバーターですが、これは用途によって使い分けます。

カートリッジは差し込むだけですから便利で手間もかかりません。万年筆を持ち歩く場合にも、予備の小さなカートリッジ1本だけ持てばいいので安心です。コンバーターは万年筆本体に差し込んでから、インク瓶にペン先全体をつけて吸入します。一見、面倒に思えますが、コンバーターならば、カートリッジにはない様々な色インクを使える楽しみも味わえます。それに、コンバーターでペン先からインクを吸入する行為は、ペン先の詰まりを防止する役目、つまり手入れをしていることにもなります。

万年筆選びは、自分との相性を探る楽しい旅に出るようなもの。そして、使い込むほどに奥深さも感じられ、またとない興趣が味わえます。その手始めとして、今回紹介した3本はいずれも優れた入門万年筆になってくれるはずです。

取材・文/塙 ちと
工芸分野を中心に取材するライター。著書に『書斎の極上品』(電子書籍)、『個人美術館を行く』(いずれも小学館)、『男のきもの雑学ノート』『男のきもの達人ノート』(いずれもダイヤモンド社)など。

撮影/五十嵐美弥(小学館)

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