新型コロナウイルス感染症拡大により、医療現場で奮闘している医師たちはどのように思っているのでしょうか? 「Dr.転職なび」「Dr.アルなび」を運営する株式会社エムステージが、医療機関の現状と最前線で働く医師の本音についてアンケート調査を実施しました。
医師たちが発する現場の声をお伝えします。

■新型コロナウイルス感染症拡大前後で医療現場に変化はありましたか?

マスク不足の回答が最も多く、149名でした。その他アルコール消毒液や防護服など、治療に欠かせない物資の不足などに困っているという声が多数あがっています。また新型コロナウイルス感染を恐れることで、受診が必要な慢性疾患の患者さんや、軽症で自宅療養可能な患者さんの通院も減少したとの声も。

▽コメント抜粋
“アルコールが手に入らず超音波での骨密度検査ができなくなった”(乳腺外科)
“コロナを心配してか、患者数が減りました”(整形外科)
“風邪症状の初診患者さんが増加した”(内科、泌尿器科)
“マスクは3日に1枚になりました”(小児科)

■オンライン診療に関して、お勤め先で導入・ご自身で利用はされていますか?

「はい」は7%、「いいえ(利用を検討している)」は32%、「いいえ(利用予定はない)」は55%、「その他」は6%でした。感染症予防や通院しづらい患者さんにメリットがあるとする中で、診療科によっては視診だけでなく、触診・聴診・検査などが必要であること、導入コストの問題などから、利用予定はないという回答が多くみられました。

▽コメント抜粋
はい(すでに導入・利用している)
“定期受診患者のみ電話診察。”(呼吸器内科)
“遠隔地の患者診療に不可欠”(呼吸器)
“安定している患者様については有用”(循環器内科)

いいえ(検討している)
“感染予防、受診率向上、移動手段のない高齢者に適する”(内科)
“検討はしているが、現時点で十分なオンライン環境が当院に無い”(一般内科)
“診療の中で、遠隔で可能なもの、むいているものを検討しています”(耳鼻科)
“感染拡大により感染リスクが高まっているため”(精神科)

いいえ(利用を検討していない)
“初診は診断目的があるため、神経内科は身体診察が絶対に重要”(神経内科、総合内科)
“コロナの対応で手いっぱいであり、システムが追い付かないので”(糖尿病内科)
“患者さんの診察は視診、触診、聴診が基本であるためです”(消化器内科)
“訪問診療を行っており電話での対応や必要な際の往診で対応可能と判断”(内科)
“コストがかかる。機器が使えない高齢患者が多い”(腎臓内科)

■初診からオンライン診療が可能になった点について、お答えください。

賛成が50%(90名)、反対が19%(34名)、どちらでもないが31%(56名)でした。新型コロナウイルス感染症拡大の状況下で、ウイルス感染のリスクを低下させることに期待している声が多数でした。一方で、誤診のリスクやなりすましのリスクに不安があるとの声も。

▽コメント抜粋
賛成
“いずれ普及するのであれば、今が整備するチャンス”(内科)
“この状況下ではメリットがデメリットを上回る”(病理診断科)
“医療者・患者の両者とも負担が減る。電話相談で済む内容がほとんどなので、遠隔でも医師が対応してくれているという安心感のプラセボ効果は非常に大きいと思う”(産業医学)
“確実に患者同士・患者医療者間の接触を減らせますし、スクリーニングとしても有用だと考えます”(ウイルス学)

反対
“なりすましや誤診に関するリスク対策がなされていないから”(感染症)
“患者さん自身に、オンライン診療に向く年代と向かない年代があると思います”(神経内科)
“重症度がオンラインだけでは評価できない”(呼吸器内科)
“初診時は身体所見、人間関係構築に対面が必要”(脳神経外科、救急)

どちらでもない
“まだ手探りの状態での見切り発車だから。今後問題がでる可能性が高い”(神経内科、総合内科)
“基本的に初診は対面。しかし、今回のような感染症に関しては仕方ない部分もある”(内科)
“今回の状況に限りは賛成”(耳鼻咽喉科)

■オンライン診療が初診でも可能となったメリットは?

180名のうち74名が「ウイルス感染を防ぐことができる」といった回答でした。その他、患者さんにとって通院のしやすさや、医療従事者の負担軽減もあがりました。

▽コメント抜粋
“安易なコンビニ受診や不必要な付き添い者の感染リスクが減る”(内科)
“来院しなくてよいという、時間的物理的ハードルが下がる”(総合診療科、消化器外科)
“本来受診が必要だが多忙で受診できない人にメリット”(内科)
“医療従事者の負担軽減と院内感染の予防”(一般内科)

■オンライン診療が初診でも可能となったデメリットは?

身体に直接触れられないことなどによる病気の見落としや、誤診、正確性がないのではという回答が最も多く、44名の回答でした。また患者さんには高齢者が多いこともあり、環境を整えることの難しさや、セキュリティーの問題を危惧する声もありました。

▽コメント抜粋
“打診聴診、触診ができないため、疾患によっては見落とす可能性もある”(リウマチ内科、膠原病内科)
“直接患者を診ないことで、情報をきちんと取りきれず、誤った判断を起こす可能性が高くなる”(麻酔科)
“Web対応できるご年齢の患者さんに限られてくる”(内科)
“睡眠薬や鎮痛薬の薬物依存者の複数の医療機関受診の抜け道にならないか”(内科)

■その他、新型コロナウイルス感染症拡大にあたり、患者さんにお願いしたいこととは?

医師に新型コロナウイルス感染症拡大にあたり、私たちにお願いしたいことを聞きました。具体的な意見をご紹介していきましょう。

▽コメント抜粋
“外出自粛。発熱しても初期は自宅安静で経過を観て欲しい(基礎疾患の無い患者は)”(整形外科)
“医療従事者への風評被害をやめて欲しい”(皮膚科)
“検査ですべて判定できるわけではない”(整形外科)
“定期薬がなくなるようであれば、必ず処方してもらうようにして、飲まないことがないようにしてほしい”(血液内科、一般内科)
“抗ウイルス薬やワクチンが実用化されるまではご自身で身を守る努力をしていただきたい”(内科)
“これを機に、免疫を助けるための生活習慣の見直しを図りましょう”(内科)
“疑わしい症状があれば、まず保健所に問い合わせをした上で、医療機関を受診して欲しい”(病理診断科)
“整形外科の立場では周囲にヒトがいない環境では運動してほしい”(整形外科)

***

医師が今、私たちに求めていることは「手洗い・うがいなど感染予防の徹底」「不要不急の外出を控え感染を予防すること」「医療従事者への根拠のない差別をしないこと」「症状が軽度の場合は自宅療養をすること」です。新型コロナウイルスの感染を拡大させないためにも、一人一人が行動を変えていかないとならないですね。

■アンケート概要
「新型コロナウイルス感染症拡大、医療現場の現状と医師の本音~オンライン診療の初診解禁について~」
集計期間:2020年4月9日(木)
有効回答数:180名
対象:「Dr.なび」会員医師
方法:インターネット調査(会員医師へのメールマガジンにより回答フォームを送信)

 

 

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