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令和の時代にあらためて『日本国憲法』を読むということ

令和の時代にあらためて読みなおす意義|『日本国憲法』

小学館から『日本国憲法』が刊行されたのは、1982年のことだった。日本国憲法の原典を、「読みやすく楽しく手に取れるように」という意図に基づいてつくられたもの。ベストセラーになったので、ご存知の方もいらっしゃることだろう。

それからずいぶん時間が経ったが、ここにきて令和版『日本国憲法』(松本弦人 編、TAC出版)がお目見えした。

特筆すべきは、「『日本国憲法』をいまの時代にあるべき姿につくりなおす試み」と位置づけられている点である。

小学館版の編集者であった島本脩二氏を編集委員に迎え、アートディレクターの松本弦人氏が、選出、構成、装丁、造本までのすべてを担当している。

令和の時代となったいま、現実化しているのは、日本国憲法を改めようという動きだ。そのことについては賛否両論あるだろうが、それ以前に考えなければならないことがある。

そもそも、「この国がどうあるべきか」を考えながら現行憲法を読んだことのある人は、どれだけいるのだろうかという問題だ。

だから島本氏も松本氏も、「憲法を読もうというメッセージを、どのように伝えるべきか」について熟考したという。そして、その結果として行き着いたのが、「芸術の力」を借りることだった。

具体的にいえば、日本の美術作品と憲法条文を組み合わせているのだ。そうすることによって、読者の想像力をかきたてようという試み。つまり読者は視覚的に楽しみながら、憲法条文を改めて、そして深く読めるような構造になっているのである。

余白を生かしたスペースのなかに、注釈を添えた大きな和文と英訳文が併記されている。印象的なグラフィックデザインからは、視覚を通じて日本国憲法への意識を広げようという意図が読み取れる。

そしてそれらを、日本を代表する芸術家たちの作品が視覚的に補足している。というよりも、どちらかが出過ぎるのではなく、両者はとてもいいバランスでそこに共存しているように見える。

第一章「天皇」のページには、写真家の杉本博司による「昭和天皇」の肖像が配され、第二章「戦争の放棄」第九条には、グラフィックデザイナー木村恒久による1968年のフォトモンタージュが登場する。

以後も建築家の安藤忠雄、美術家の荒川修作、秋山祐徳太子、写真家の篠山紀信、漫画家の赤塚不二夫や水木しげる、楳図かずお、映像作家の宇川直宏など、時代の壁を越え、数多くのクリエイターによる作品が取り上げられているのだ。

いまだかつてない、壮大かつ大胆な取り組みである。だが、あえてこうした手法を取り入れることによって、より能動的に憲法と向き合えるようになっている。

保守かリベラルか、右か左かなど、政治的な思想に偏ったものでは決してない。むしろ、思想からは意図的に距離を置き、俯瞰することに徹しているというべきだろう。

まっさらな状態から、自分自身の憲法についての考え方を確認し、「これからのこの国」について考えてみようという意図があるわけだ。

日本国憲法が施行されたのは、1947(昭和22)年5月3日のこと。以来、われわれ日本人は、「憲法」とともに暮らしてきた。そして時代は、令和へと変わった。

そんなタイミングだからこそ、本書のページをめくり、条文を読み、芸術作品群から“なにか”を感じ取りながら、10年後、20年後の暮らしを思い描いてみてはいかがだろうか?

『日本国憲法』

松本弦人 編

TAC出版

定価 1,870円(本体価格+税)

2019年11月発売

『日本国憲法』
文/印南敦史
作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』などがある。新刊は『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)。

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