文・絵/牧野良幸

今回でこの連載も最終回となった。そこで最後は将来のオーディオ小僧のアナログ生活について予想をしてみることにした。

とはいっても遠い未来の非現実的なものを予想しても面白くない。ここは東京オリンピックが開かれる2020年にオーディオ小僧がどんなアナログ生活をしているかを“ひとりシンクタンク”で考えてみる。今から2年後なら当たる確率も高いだろう。

まずアナログ・レコード。

この連載開始時には「狼が来たぞ」の話にたとえて、アナログ・ブームが本当に定着するか半信半疑であったが、今や完全に定着したものと確信した。2年後にはアナログ・レコードのリリースはさらに増えていると思われる。

その中でもオーディオ小僧の予想では45回転のLPレコードがタイトル数を増やすのではないかと予想する。昔の33回転のアルバムを45回転でカッティング。収録時間が短くなるから4面2枚組となるが、回転数が上がり、カッティングに余裕ができるので、同じ音源でも33回転盤よりも音質がいい。それがウケて45回転LPはリリースが増えているのだ。オーディオ小僧も今欲しくてたまらないから、2年後は間違いなく買っていることだろう。

ハード面では超高級ターンテーブルを使っているかもしれない。復活したTechnicsが今年「SL-1000R」という160万円もするアナログ・プレーヤーを発売したが、世界中から注文が殺到し、受注生産が追いつかないほど人気なのだそうだ。

オーディオ小僧もこれまでなら「160万円? ムリムリ」と一笑に伏して終わりであったが、今は「欲しい、買えないけど……」と“欲しい”という感情が先に立つ。もちろん現実に買うことはまずありえない。しかし宝くじに当たったり、新規公開株を手に入れて思わぬ大金を手にしないとも限らない。そうなったら買ってしまうことだろう。それを期待して2020年の予想に入れておきたい。

アナログ・レコードはこれくらいにして、他のアナログ機器についても予想しよう。今やアナログ・ブームはアナログ・レコードだけではないのだ。

その代表格がカセットだろう。カセットが最近また人気だという。世代によってはラジカセに思い出がある人も多いだろうが、オーディオ小僧の場合はカセット・デッキだ。それも80年代のコンポ・スタイルのデッキではなく70年代のもの。デザインがレトロでオシャレなのである。

カセットの音質はアナログ・レコードに比べると、かなりレベルが落ちると分かっているが、「それを使いこなしたい」とあえて思うのである。デジタルの能率一辺倒の生活から脱出するにはピッタリと言える。オーディオ小僧がこの2年のうちにネットオークションで競り落としている可能性は高い(いまも機種を絞ってチェックはしている)。

音質でカセット以上にアナログ度が高いのがオープンリール・デッキである。オーディオ小僧の世代以上の方ならご存知のテープレコーダー。70年代のカセットの爆発的な普及で姿を消したものの「アナログ・レコード以上に音がいい」と言うマニアも多い。

実は2年後を予想するまでもなく、現在オーディオ小僧はオープンリール・デッキを所有している。聴くのは昔のミュージック・テープであるが、「アナログ・レコード以上に音がいい」と言う評価は本当で“アナログ汁120%”の濃厚なアナログ音を体験できる。

オーディオ・マニアに限るなら、オープンリール・デッキはカセット以上に加熱化していて、現在ブームの真っ最中と言ってもいい。オーディオ小僧も今やアナログ・レコードより聴く機会が多いので、2020年には2代目のデッキを所持しているかもしれない(これもオークションでチェックしてます)

もうおわかりだろう。未来予想と言っても自分の“今の願望”を考えれば2年後の予想は大方つくのである。だからアナログのラジオ(SONYの「スカイセンサー」)。これも2年後にはオーディオ小僧の部屋に置いてあるだろう。

どうやら2020年のオーディオ小僧は今よりもっと楽しいアナログ生活を送っていそうである。その様子をまたお知らせできることを願いつつ、この連載を終えることにする。1年4ヶ月の間ご愛読ありがとうございました。皆さんもよきアナログ・ライフを!

文・絵/牧野良幸
1958年 愛知県岡崎市生まれ。イラストレーター、版画家。音楽や映画のイラストエッセイも手がける。近著に『オーディオ小僧の食いのこし 総天然色版』(音楽出版社)がある。公式ホームページ http://mackie.jp

オーディオ小僧の食いのこし 総天然色版
(牧野良幸著、定価 1,852円+税、音楽出版社)

 

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