ミュージカルから映画へ
そしてスタンダードといえばジョージ・ガーシュウィンです。彼が作曲した「アイ・ガット・リズム」は、第44号「ガーシュウィン・セレクションvol.2」でジュデイ・ガーランドの歌唱を紹介しましたね。もともとガーシュウィン兄弟が1930年のヒット・ミュージカル『ガール・クレイジー』のために作詞・作曲した楽曲で、51年にヴィンセント・ミネリが監督したミュージカル映画『巴里のアメリカ人』に、この楽曲が再び使われたというわけです。この映画はガーシュウィン映画といってもいいもので、「ス・ワンダフル」「わが恋はここに」など、すべての楽曲がガーシュウィンの作品です。
歌うのはサラと並ぶジャズ・ヴォーカルの大物、エラ・フィッツジェラルドで、もうこれは完全にジャズ・スタンダード歌唱になっていますね。このようにして、名画の名曲はスタンダードとなっていったのです。
文/後藤雅洋(ごとう・まさひろ)
日本におけるジャズ評論の第一人者。1947年東京生まれ。慶應義塾大学在学中に東京・四谷にジャズ喫茶『い~ぐる』を開店。店主としてジャズの楽しみ方を広める一方、ジャズ評論家として講演や執筆と幅広く活躍。ジャズ・マニアのみならず多くの音楽ファンから圧倒的な支持を得ている。著者に『一生モノのジャズ名盤500』、『厳選500ジャズ喫茶の名盤』(ともに小学館)『ジャズ完全入門』(宝島社)ほか多数。
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